メディアワークショップ

一般市民の皆さんに対する心臓病を制圧するため情報発信、啓発活動を目的に、
情報発信能力の高い、メディアの方々を対象にしたワークショップを開催しております。

第25回 高血圧ゼロを目指す、循環器疾患予防の最新トレンド!―家庭と地域での取り組み―

わが国においては、いまだ平均寿命と健康寿命に約10年の差があり、その差をなくすためには高血圧対策が最も重要と考えられている。血圧値に関しては、家庭での血圧測定が再現性も高く治療効果の把握に有用であり、さらにはキオスク血圧やデジタル技術の活用も進みつつある。「家庭でできる循環器予防」をテーマに、地域や個人単位で期待される血圧管理を中心に、浅山敬氏にご講演いただいた。

健康寿命の延伸と一次予防の重要性

日本では、平均寿命と健康寿命の差が、男性で約10年、女性では約12年もある。この期間は、なんらかの障害を抱えての生存期間と考えられる(図1)。浅山氏は、まずこれを縮めるためには、生活習慣病の予防、特に高血圧対策が不可欠であると述べた。高血圧は循環器疾患の主要なリスク因子であり、早期からの介入が健康寿命の延伸に直結する。2005年の研究では、血圧を15mmHg下げることで心血管イベントの発生率が有意に低下することが示されており、降圧治療の意義は明確である。しかしながら、日本においては未だ成人の約半数が高血圧であり、さらにそのうちの半分近くが未治療、また治療中であってもその半数が管理不良という「Hypertension Paradox(治療できるのに十分な治療に至っていない例が多い)」が存在する。この現状を打破するためには、診察室外での血圧測定、特に家庭血圧の普及が鍵となる。

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図1. 日本人の平均寿命と健康寿命

家庭血圧の有効性と測定の基本

家庭血圧は、診察室血圧に比べて再現性が高く、薬効評価や長期的な変動の把握に優れている。白衣高血圧の影響を受けず、朝晩の決まった時間に測定することで、より正確な管理が可能となる。日本高血圧学会のガイドラインでも、2014年以降、診断基準として家庭血圧を優先する方針が採られている。家庭での血圧測定時には、静かな室内で、心臓の高さに腕を保ち、朝は起床後1時間以内、トイレ後、食事や服薬前に行うことが推奨される。1回の測定で2回記録し、その平均値を用いるのが理想だが、継続が困難な場合は1回でもよい。季節変動も把握するために、長期的な測定が望ましい。浅山氏らが岩手県花巻市で実施している家庭血圧に基づく治療では、9割以上の患者が良好な血圧管理を達成しており、家庭血圧の有効性が実証されている(図2)。

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図2. 家庭血圧に基づいた厳格降圧─大迫研究─

キオスク血圧と自己測定の拡張

「Kiosk(キオスク)」とは、街角の小さな店などの場所・端末を指し、「キオスク血圧」とは、そのような場所(端末)で行われる測定(キオスク血圧測定)、そのための血圧計(キオスク血圧計)を意味するものである。そうした家庭以外の場所で行う「キオスク血圧測定」は、自己測定の機会を広げる有効な手段と考えられている。薬局、温泉施設や自治体施設などに設置された自動血圧計を用いて医療従事者の介入なしに測定することで、高血圧のスクリーニングが広く行えるようになる(図3)。
しかしながら、キオスク血圧は測定条件が統一されていないため、診断には用いず、まずは参考値として活用することが望ましい。測定時刻、服薬状況、場所などの記録を残し、専門家の判断を仰ぐことが推奨される。設置者には、測定手順やマニュアルの整備が求められる。薬局での測定では、薬剤師によるフィードバックが可能であり、医療機関との連携も期待される。こうした取り組みは、地域全体での血圧管理体制の構築につながる。

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図3. キオスク血圧測定: 定義の拡大

デジタル技術と未来の血圧管理療

デジタル技術と未来の血圧管理 近年、スマートウォッチやカフレス血圧計など、生体情報の取得も可能な新技術が登場しているが、現時点ではまだ精度や信頼性に課題がある。測定値のズレや校正の必要性など、臨床現場での実用には至っていない。浅山氏は「デジタルハイパーテンション」という、様々な先端技術を高血圧の管理・治療に統合する試みを紹介(図4)、また、アプリを活用した生活指導やリモート管理にも言及した。こうした取り組みは、患者と医師のコミュニケーションを促進し、目標血圧の共有を通じて治療効果を高めることができる。特に独居高齢者への見守り支援としての家庭血圧の活用は、早期からの医療介入を行うことで、住民の安全管理、健康増進および医療費削減も目指せると述べた。

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図4. デジタルハイパーテンション

朝活キャンペーンと国民啓発

最後に浅山氏は、日本高血圧学会が血圧管理の啓発活動として行っている「朝活キャンペーン」を紹介。診察室血圧と家庭血圧の違いを踏まえつつ、わかりやすい目標値として「130mmHg以上」を設定し、朝の血圧測定を促す取り組みである(図5)。測定方法に関わらず、130mmHg以上であれば、生活習慣の見直しや医療機関への相談を推奨する。
この取り組みは、国民全体の血圧管理意識を高めることを目的としており、メディアを通じた啓発の重要性が強調された。 浅山氏は「正しい測定と継続的な管理が、循環器病予防の第一歩である」と、講演を締めくくった。

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図5. まずは測ろう、あなたのリスク!

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