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大動脈弁閉鎖不全の手術における手術時間と弁選択

34歳 女性
2014年4月24日
重度の大動脈弁閉鎖不全症と診断されました。この手術の時間は、何時間ぐらいでしょうか?人工弁の手術を希望します。

回答

 大動脈弁閉鎖不全症の手術は胸痛や息苦しいなどの症状があればもちろん勧められますが、無症状でも心臓が大きくなっていれば早く手術を受けた方が心臓の機能回復がよいためやはり手術が勧められます。
 手術はご自分の大動脈弁を加工して治す形成術と弁を取り除いて人工の弁に変える弁置換術があります。
大動脈弁の形成術は近年よく行われるようになりましたが、未だ術後の成績が安定せず特別な場合を除き一般的には弁置換術が選択されます。
 弁置換術は確立された手技です。手術時間は大動脈弁だけを人工弁に置き変えるのであれば3-4時間程度です。
 弁置換術で問題なのは人工弁の選択です。人工弁にはチタンやカーボンでできている機械弁と生体組織であるブタの弁や牛の心臓を包んでいる膜を加工して作ってある生体弁があります。両方ともに一長一短があります。
 人の血液は異物に触れると固まります。機械弁は異物ですので、この中を血液が通って行くので血液の塊(血栓)を作る可能性があります。この血栓は血液の流れにのって脳の血管につまって脳梗塞を発症したり、また弁自体の動きを悪くして心不全をおこすことがあります。そのため機械弁を選択した場合、ワーファリンという血液を固まりにくくするお薬を毎日一生涯飲まなければいけません。この薬の効果がは個人差があるので血液検査を定期的に受けていただき服用する量を調節します。この薬は効きすぎれば出血しやすくなり反対に効かなければ血栓を生じる危険性があります。また、納豆と健康食品のクロレラを食べてしまうと効果が無くなってしまうため、これらのものは食べられなくなります。少し面倒くさいお薬のワーファリンを飲まなければいけないというのが機械弁のデメリットですが、機械弁のメリットは耐久性が半永久的ということです。つまり再手術をする必要性が極めて少ないということになります。
 生体弁は生体の組織でできているため血栓を作る可能性はほとんどありません。術後3カ月程度は安全のためワーファリンを服用していただきますがその後の服用は不要です。しかし、生体弁の耐久性は大動脈弁に入れた場合10から20年程度です。年月が経ち少しずつ弁が堅く劣化してきたときには再手術が必
要になります。
 基本的にはお若い患者様は、ワーファリンを服用していただき半永久的に長持ちする機械弁をお勧めすることが多く、ご高齢の患者様は激しいスポーツをすることなどなく活動量も少なくなっていることから弁の劣化もゆっくりになる可能性があることとワーファリンを服用しなくてもいいことから生体弁をお勧めしています。ただし、女性の患者様で妊娠希望の場合は、ワーファリンが胎児に影響を及ぼすことがあるので生体弁が勧められます。出産が終わって、年月がたって弁が劣化してきたところで再手術をお受けになっていただきます。
一昔前より再手術のリスクはだいぶ減ってきています。再手術に関してもう少し説明すると、機械弁でも弁の周りに血栓が出来て弁の動きが悪くなった場合は再手術が必要になります。またいずれの人工弁でも血液中に侵入した細菌が人工弁につくと再手術になることもあります。
 以上、一般的な大動脈弁の手術に関する説明です。大切なことはご自分のお仕事やご家族、ライフスタイルなどをよく考えて担当の医師から納得いくまで説明を聞いて頂くことです。そのうえで手術をお受けになっていただきたいと思います。

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