疾患別解説

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大動脈弁狭窄の弁置換と妊娠・出産

37歳 女性
2006年7月 7日

大動脈弁狭窄と大動脈瘤があり、弁が固くなり始めているとのことで、手術を考えたほうがよいと主治医に言われました。機械弁か生体弁かで迷っています。
将来出産を希望しています。主治医の話では機械弁にするとワーファリンを飲み続けなければいけないので出産は無理と言われましたが、病院にある小雑誌を読むと、妊娠初期と末期は投薬を中止して、ペパリンなどに切り替えると書いてありました。出産はしたいのですが、再手術はなるべく避けたいので、機械弁にしても妊娠が可能ならそちらのほうがいいような気がするのですが、いかがでしょうか。
また、手術跡が残るのが嫌なので、手術の際、形成外科の先生をつけて欲しいと考えていますが、可能でしょうか。

回答

大動脈弁狭窄と大動脈瘤をお持ちの患者さんにお答えいたします。
機械弁にしてワーファリンを服用していても、ヘパリンなどに切り替えて出産ができないことはないという記述ですが、理屈ではそうですが実際にはほとんど不可能であると言ってよいと思います。ワーファリンを服用しながらの出産はやはりあまり実際的ではありません。どうしもそれをやりたいと言われるならば何ヶ月にもわたって入院を続ける必要があり、機械弁を移植した場合にはまず出産は困難と考えられるほうがよいでしょう。ただし、これは現在の機械弁についてですので、将来ワァーファリンの量を非常に少なくできるような弁が開発される可能性はありますが、近い将来であるとは言えないでしょう。

一方、現在の医学レベルから言いますと、やはり生体弁を使用して、ヘパリン使用の必要がないようにし、その間に妊娠、出産をして、その後再手術をして機械弁に入れ替えるということになると思います。と言いますのは、37歳というのはまだまだお若く、生体弁が破壊されてゆくスピードは年が若いほど速いからです。
ただし、これは大動脈疾患単独の場合に言えることで、もしも書いておられる大動脈瘤が非常に進行したものであって、手術に際して上行大動脈も一緒に取り替えなければならないことになりますと、再手術はかなり困難な状況となります。つまり、この場合は再手術にかなりリスクを伴いますので、やはり当初から機械弁に置換した上で上行大動脈も置換することになり、この場合には出産は残念ながら無理と言わざるを得ません。

なお、ケロイドにつきましては、心臓外科の手術の際に時間をかけてケロイドが起こらないような皮膚縫合をすることは実際的にはどの病院でもお断りすると思います。心臓手術自体が生命の危険を伴うものですから、手術の時間はできるだけ短くして、術後は早く集中治療室に収容したいからです。したがって、ケロイドについては一旦心臓手術をお受けになり、その後完全に体調が戻られた後、もしケロイドがひどければ改めて形成手術をお受けになるのがよいと思います。

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