疾患別解説

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肥大型心筋症へのアルコール注入療法

60歳 女性
2005年3月 3日

私は今、韓国に住んでいる中国人です。母の病気についてお伺いします。
母親は60歳ですが、約10年前から心臓の調子が悪く、特に階段を上るときとか、風邪を引いたときとか、食事後とか息苦しくなります。その上、めまいや、ひどい頭痛や、背中痛などさまざまな症状も出てきました。3年前に、中国の専門病院で診査を受け、閉塞性肥大型心筋症といわれました。
そのとき医師から、カテーテルを通じて、無水アルコールを肥大した心筋部位で注射する方法(中国では介入療法と言われる)があると言われました。
突然言われたことで、心臓手術みたいなものですから、やはりいろいろ調べたほうがいいと思い、薬物治療を選択し、そのときからずっとベータブロッカーを朝、晩2回ずつ飲んでいます。
2年間経ちましたが、特に悪くなったこともないし、いいとも言えません。中国では、この2年間で、介入療法を受けた肥大型心筋症患者は3名いました。そのうちの2名は姉妹で、術後当初はとてもよく改善されたのですが、3年後に心不全になりました。もう1名も最初の3ヶ月はよかったようですが、5ヶ月目からかなり状態が悪化しているそうです。
中国では、この肥大型心筋症の介入治療はわずか10年しか経っていないが、一番評価的な治療となっています。韓国では、同じ治療方法があるけれど、臨床例は少ないようです。
日本での介入療法に対する評価を聞かせていただけますか。

回答

閉塞性肥大型心筋症は拡張型心筋症とは違って心室中隔部の肥大、心央部肥大、左室自由壁の肥大などがおこり、血流の異常が生じそれによって特徴的な症状をおこすものです。
この病気の早期症状はあまりはっきりとしないこともありますが、長期にわたると労作時の息切れ、狭心症、低心拍出症状、立ちくらみ、失神、不整脈、むくみなどがおこり、次第に心不全に移行し、日常の生活も障害されてきて、一年後には約0.5%の頻度で突然死をおこすといわれております。
肥大型心筋症で、心室筋の肥大部分が血液駆出を妨げるようなときには、介入療法としては、肥大部分の外科的切除、アルコール注入、冠動脈灌流枝からの塞栓療法の3つが考慮されます。しかし、このどれがもっともよいのかは術者が誰であるかによって、評価が異なります。誰が行っても同じ結果になるとは限らないのです。これまでの成績では、一般的には、まだ、第一に勧められる治療法とはなっていません。
今日の段階では、意識消失発作があるなどの苦痛が著しく、かつ狭窄部の圧の開きが50mmHg以上あるときに考慮される治療法となっています。アルコール注入療法は心筋を壊死状態とするので、その広がり、深さなど、壊死の程度によっては、かえって心不全を悪化させます。お母さまの場合は失神発作があるわけではなく、二年間、悪くなった様子もないということですから、このまま、経過をみられては如何でしょうか。内科的な治療法の場合ですと、現在行われているベータブロッカーを中心とする薬物併用療法が行われます。

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