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広範な冠動脈病変に対するPCIとバイパス術の選択

40歳 男性
2006年1月24日

先月、急性心筋梗塞を発症。緊急心臓カテーテル手術(検査も含む)を受け、右冠動脈の中間の閉塞部をカテーテルを用いてバルーン施術とステント留置にて治療。
この時の手術・検査にて、40歳という年齢では考えられないくらいに心臓の血管が細くなっているとのことでした。左冠動脈でも、前下行枝で広範囲に狭くなっており、回旋枝でも狭くなっている部分があり、左冠動脈の主幹部が一部細くなっているそうです。

主治医からは、左冠動脈部の手術の必要性を説明されました。放っておくと5年後に50%程しか生きられていない可能性があり、予後のためにも手術等の治療を行った方がよいとのことでした。
手術内容は、再度のPCI治療(カテーテル手術;左冠動脈の主幹部の狭い部分と前下行枝と回旋枝の入口部分の3箇所にステント留置する)か心臓バイパス手術かを勧められており、どちらを選ぶかは自分の意思次第と言われています。

そこで、心臓カテーテル手術(ステント留置)のメリット・デメリット、心臓バイパス手術のメリット・デメリットを教えてください。
また、ステント留置の場合、再狭窄が起こった場合に治療が難しいそうですが、どのような部分が難しくなるのでしょうか。ある一定期間を過ぎたら起こらなくなるのでしょうか。

回答

40歳で3枝病変(左冠動脈前下降枝および回旋枝、右冠動脈)に加えて左冠動脈主幹部にも病変があるということですが、若くて広範な冠動脈病変がある場合には動脈硬化を進展させる重要な要因があることが多いので、それを調べることが非常に重要です。例えば、糖尿病、高脂血症、喫煙、高血圧、ホモシステイン血症その他です。危険因子があればそれを治療することが、長期予後を改善するために最も重要です。

貴方のように、広範な病変があり、左冠動脈主幹部にも狭窄がある場合には、原則的にはバイパス手術を行います。その理由は、一度に3本の冠動脈の完全な血流再建ができるからです。狭窄部のみならず、心筋梗塞を起こす可能性のある病変部をすべてバイパスする血管を作成するわけですから、バイパス手術により、予後が改善し、また狭心症などの症状も消失することが期待できます。手術に伴う危険性は非常に改善されてきています。貴方のような病態の方では、得られるメリットが手術の危険性を大きく上回ると思います。最近左冠動脈主観部病変にもカテーテルで拡げる手技(PCIと言います)を行う施設が増えてきています。数年前までは殆ど実施されていませんでしたが、技術の進歩と器具の改良で可能になってきました。しかし、もし手技中に血栓などが生じて血管が閉塞すれば大変危険なことになります。従って、一般的に言えば、まだ試験中の手技と言わざるをえません。また、仮に主幹部病変をPCIで拡げることが成功したとしても、まだ末梢部の3本の冠動脈に病変が残りますので次々にPCIをしていかねばなりません。しかも、狭窄が強い所はPCIで拡げるとしても、狭窄はないが心筋梗塞を起こしうる動脈硬化病変は残ってしまいますので、完全な血行再建はできません。
多くの臨床試験で、貴方のような広範な動脈硬化病変が存在するケースでは、長期予後の改善にも、狭心症の治療にも、バイパス手術がPCIに比して優れているという結果が得られています。

ステント留置で再狭窄が生じた場合、ステント内にさらにステントを挿入することによって狭窄を拡げることは困難ではありませんが、その後再び再狭窄が生じる危険性がより大きくなります。これはステントという身体にとっての異物を血管に入れるため、血管が強く反応することによります。再狭窄は最初の6ヶ月以内に生じることが多いのですが、そのあとでも起こりえます。

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