疾患別解説

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シャント手術後、サチュレーションが上がらない

2ヵ月 男性
2006年6月 7日

生後1ヶ月でシャント手術を行い、3.5ミリの人工血管を右鎖骨下動脈と右肺動脈へつなぎました。
その一ヵ月後、呼吸が苦しそうになったため、受診したところ、サチュレーションが手術後には概ね80程度だったのが、60台に下がっており、緊急入院となりました。
術後から服用していたラシックス・アルダクトンを中止し、点滴により体内の水分を増やし、サチュレーションが戻るかどうか経過観察。貧血を起こしていることも分かったため、鉄剤を追加で服用開始。サチュレーションは、安静時75程度まで上がるものの、泣くと50台にまで下がってしまいます。
今後、まずカテーテル検査をし、必要があればそのままバルーン治療を行うとのこと。また、その後サチュレーションが改善しなければ、左鎖骨下動脈と左肺動脈に2本目のシャント手術を行うとのことです。
主治医の話では、 最初のシャント手術の際、3.5ミリの人工血管をつなぎ、動脈管を閉じようたところ、肺への血液が足らず、動脈管は開存したまま残したとのこと。その後必要ならば再度シャント手術を行うとのことでした。

1)最初の手術を行ったときに、動脈管は閉じることを前提でシャント手術を行っているはずでしたが、手術を1度で済ませるためにも、3.5ミリ以上の血管をつなぐことはできなかったのでしょうか。

2)現在サチュレーションが上がらないことに対し、手術以外には何か治療方法は考えられるのでしょうか。

3)2度目のシャント手術を行わなくてはいけない場合、根治手術に向けて、何ミリの血管をつなぐことが適切と考えられるでしょうか?

4)体重増加など成長の過程で3度目のシャント手術を受けなくてはならない可能性はあるのでしょうか。

回答

1)今回のお問い合わせのように、元来、肺血流量の少ないチアノーゼ型疾患では、生まれてすぐに、チアノーゼを認めます。年齢が小さい内は、肺血管の発育が悪く、手術危険率が高いため修復手術ができません。そこで、肺血流を保つためと肺動脈の発育を促すため、初回手術として、シャント手術を行います。シャント手術で、太い血管をつなげば、肺血流は多くなることが期待できますが、一方、肺血流が急に増加しすぎると、肺出血、心不全を起こします(修正大血管転位は、右室が、全身の血液を担いますので、やや心不全を伴いやすくなります)。また、この疾患の新生児は、肺動脈が細いことが多く、つなぐシャント血管のサイズに限度があります。これらを考慮して、一般的には、生まれてすぐの場合は、4mm前後の血管をつなぐことが多いと思います。

2)サチュレーションが上がらない理由は、シャント血管が細くなっている場合、シャント血管が体の発育に見合わず、相対的に細い場合、肺血管がもともと細く、血管抵抗が高いため予想したほど流れない場合、等が、考えられます。また、呼吸状態が悪い場合は、肺の問題の場合もあります。シャント血管が細くなっている場合は、何らかの処置をしないといけないので、特に、問題です。シャント血管が部分的に狭くなっている場合は、バルーンで広げることができる場合があります。シャント血管の狭窄部がなく、サイズが子どもの発育に見合わず細い場合は、左鎖骨下動脈と左肺動脈に2本目のシャント手術を行うことが一般的だと思います。

3)すでに、1本シャント血管がありますので、それが十分流れている場合は、5mmのシャント血管では、肺動脈に流れる血液量が多くなりすぎる(心不全が長引く)可能性が、高いので、4mm程度が普通ではないかと思います。ただ、子どもの体重、肺動脈のサイズ、心室機能、三尖弁逆流の程度などに依存します。

4)修復手術を行うことが可能な程度の年齢(3歳、10kg以上の体重が望ましいと思われますが、施設により違いはあります)になるまでの、チアノーゼの程度、肺血管の発育程度、三尖弁逆流の程度などによりことなりますが、3度目のシャント手術になることは少ないと考えられます。

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