疾患別解説

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心室中隔欠損症の手術について

0歳2週 男性
2004年6月 6日

息子は、生後2日目に心雑音がみられ、検査の結果、漏斗部に7mmの穴がある心室中隔欠損症と診断されました。
筋肉ではなく膜の部分の穴であり、自然閉鎖することはないため手術が必要といわれました。手術のリスクを下げるために1歳くらいまで時期を延ばしたいが、経過観察の上、大動脈弁に逆流が見られ出したら手術をするとの事です。

1)漏斗部に7mmの穴の場合、自然閉鎖の見込みはないのでしょうか?
2)大動脈弁に逆流が見られ出したら手術するというのは、時期として妥当なのでしょうか?逆に欠陥の肥大が進み後遺症が残ることはないのでしょうか?
3)現在の病院では、手術時は外部から先生にきていただいて執刀することになるそうなので、手術は他の病院でお願いすることも検討しております。
そこで、手術をお願いする病院を選べばよいのかご教示ください。執刀数が多い病院など情報は開示されているのでしょうか。
4)手術の場合、体重により輸血が必要と伺いましたが、輸血自体のリスクが心配です。できれば輸血なしで手術したいと思っておりますが、低体重でも無輸血で手術できる医療機関はあるのでしょうか?

回答

心室中隔欠損の子供は、手術が必要な場合もありますが、手術の危険率は非常に低いものです。また、小欠損孔の子供或いは適当な時期に手術で修復した子供は、学校での生活もほとんどふつうの子供と同じです。大人になっても、一般の人たちと同じ仕事でがんばることもできます。寿命も、違いは無いと考えられています。ですから、今の時期を大切に考えて、よく面倒をみてあげれば、成長したときは、ふつうの子供と同じと考えて良いと思います。

1)漏斗部の欠損で、特に大きい場合は、自然閉鎖の可能性は非常に少ないと考えられます。新生児で7mmの穴というのは、大きいと考えて良いと思います。

2)漏斗部欠損の場合の手術適応は
○欠損孔が大きく肺の血流量が多く、心不全が強い場合
○大動脈弁が欠損孔にはまりこんで、変形が非常に強い場合
○大動脈弁が欠損孔にはまりこんで、変形があり、大動脈弁に逆流が見られる場合です。大動脈弁が欠損孔にはまりこんでいるだけの場合は、経過を見ていることが多いです。
そして、6ヶ月ごと程度で、心エコー検査を行い、大動脈弁にわずかでも逆流が認められれば手術とします。大動脈弁の逆流を放置して、その程度が中等度から高度とならなければ、手術は欠損孔をふさぐだけで、十分です。大動脈弁の逆流が進みすぎると、大動脈弁の取り替えなどが必要になってしまいます。ですから、定期的に医師にかかることが非常に大切です。一般的には、以上の点と、患者さんの体重、年齢などを勘案して手術時期を決めます。

3)病院の選択は、手術成功率、手術経験数、執刀外科医の手術経験数、小児循環器科医の経験数、その他のスタッフ、通院の便利さなどで決めますが、子供の心臓病の手術を比較的多く手がけている施設であれば、この病気の手術の場合は、外科医の優劣の差は大きくありません。自分の地域の病院のホームページをみてもある程度の情報は得られますが、手術数、成績などを公開している病院は少ないのが現状です。一番良い方法は、今みてくれている医者に、遠慮せず、手術成績などを尋ねてみることです。また、他の病院でやりたいが、推薦できる病院はどこかを尋ねることも大切です。それで、いやな顔をする医師は少ないと思います。そして、紹介された病院で、担当医に話を聞いてみることです。或いは、一般的に子供の手術で有名とされている病院を受診して、適当な病院を紹介してもらうことも良い方法と思います。

4)心臓の手術は安全とはいっても、100%救命できる訳ではありません。ですから、医師団は細心の注意を払い、危険は避けながら、手術を行います。輸血を行わないと、血圧を維持できなかったり、術後の経過が悪かったりすることがあります。ですから、無輸血にあまりこだわると患者さんを危険な状態に追い込むことがあり得ます。
そこで、いろいろな工夫はありますが、安全性を考慮して、無輸血を行える最低の体重をもうけている病院が多いわけです。低体重でも無条件に無輸血で行う病院はありません。現在、輸血する場合は、輸血前に血液の安全性を十分確かめてから、輸血を行います。無輸血で行えるに超したことはありませんが、輸血がどうしても必要となった場合でも、ほとんどの場合は、患者さんの将来にも大きな影響を与えません。
輸血手術では、術後経過がより安定していること、輸血の副作用の非常に低いことなどのため、日本と異なり、欧米では、輸血にこだわらない施設が少なくありません。

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