疾患別解説

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房室ブロック治療中に胸痛発作

55歳 女性
2005年2月10日

先月に検査入院をし、心臓カテーテル検査や心電図などをして、房室ブロックと診断され、今月にペースメーカを入れる予定を組み、先月末に退院をしたのですが、今月初めの朝、激しい動悸と息苦しさを訴え、救急車で同病院に搬送したところ、房室ブロックによる発作ではなく狭心症の疑いがあるとのこと。
それで、血管を広げるスプレーを処方するので、帰っても良いと言われたのだが、また発作がおきる不安があったので、無理を言って入院させてもらった翌日とその翌日に2度発作がおきました。
病院の先生のお話では、房室ブロックが先におきていて、後から狭心症になるというのはまれなので、まったく別の病気が2つおきたと思うとのこと。
房室ブロックと狭心症は関係がないのでしょうか。また、房室ブロックの検査で入院したときに狭心症は発見できなかったのでしょうか。

回答

あなたの質問にお答えする前に、先ずこの2つの病気(房室ブロックと狭心症)はそれぞれどんな病気なのか、よく理解しておいていただくのが必要かと思いますので、それからお話しておきたいと存じます。
房室ブロックは心臓の刺激伝導系という組織に異常がみられるもの、また狭心症は冠状動脈の狭窄や閉鎖がおこり、血流の途絶のおこる病気です。このように両者は病状や病気の仕組みが異なり、また、両者の因果関係もほとんどありません。両者とも独立の病気です。たまたま両者が重なり合って存在することはあっても、どちらがあって、他方に合併しておこってきたというものではありません。したがって、病気の診断や治療に当たってもそれぞれが同じカテーテル法という検査法を行いますが、それぞれが独自の手法をもっていたり、また違った種類のカテーテルを使ったりします。
それぞれにかなりの時間や負担がかかり、手間がかかり、両検査を同時に一遍にやることは困難かと思います。患者さんの苦痛を考えてもやはり日を変えて検査を繰り返してやられたほうがベターかと思います。
さて、心臓の重要な機能の1つとして規則正しく脈打つ作用がありますが、それは心臓拍動のペースメーカの指令が電気信号として刺激伝導系により心筋組織に伝えられ、心筋の収縮がおこるわけです。その経路の一部、例えば房室結節に異常がおこれば、そこで電気信号は断裂してしまい、筋肉の収縮活動も停止してしまうのです。断裂の程度、部位を詳しく知るには電極付のカテーテルを障害部位に近づけて電位を記録する必要があり、それによって房室ブロックの状態を詳しく検査できます。
一方、心臓がポンプとしての活動を行うのは心室筋の収縮・地緩活動によるわけですが、それには莫大なエネルギーを必要とします。このエネルギーは心臓の入口、すなわち大動脈基部にある心臓をぐるりととり巻いている冠状動脈からのエネルギー源や酸素が運ばれそれによって得られます。これらエネルギー源を心筋組織に運ぶのが冠動脈系という血管です。この管が狭窄や途絶をおこすと酸素の供給が障害され、酸素不足をおこすと患者は狭心症状を発することになります。すなわち、狭心症発作です。この発作の原因がどの部分の冠状動脈におこったか酸素不足を解消するためにどんな治療が必要か、冠動脈を例えばカテーテルに風船をつけて拡げるなどの手当てをしなければなりません。そのための適当な方法を見出さなければ危険な状態になりかねません。それらの手段を見つけ出すための冠動脈血管造影法、心室造影法という検査法もあります。
つまり病院側としては静脈を通しての電気生理的方法と冠動脈を経て冠動脈血管造影法(心臓の動きの良し悪しを調べる心室造影法)を行おうと考えておられます。これらは結局独立した検査法ですから、最良の結果を得るためにそれぞれが別々に2回に分けて実施すべきだろうと思います。
良い検査結果が得られるよう期待しております。

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