循環器病のトピックス

みなさまにお伝えしたいトピックな情報を掲載いたします。

循環器対策基本法と"SEGODON Project

2024年03月18日 不整脈心臓病の予防

第59回日本循環器病予防学会学術集会 市民公開講座
予防に勝る治療なし!"SEGODON Project(セゴどんプロジェクト)

2023年6月4日(日)かごしま県民交流センター
主催:鹿児島大学大学院医歯学総合研究科心臓血管・高血圧内科学/第59回日本循環器病予防学会学術集会
共催:公益財団法人日本心臓財団

20236月に鹿児島で開催された第59回日本循環器病予防学会学術集会最終日に、市民向けの公開講座が実施されました。学術集会会長でもある鹿児島大学心臓血管・高血圧内科教授の大石充先生の企画と総合司会により実施されました。その内容をお伝えします。

オープニング講演

循環器病対策基本法と"SEGODON Project"

大石 充(鹿児島大学心臓血管・高血圧内科学教授)

本日は、今年(2023年)より始めましたSEGODON Project(セゴどんプロジェクト)について紹介したいと思います。皆さんにこのプロジェクトを知っていただくために専門の先生方にわかりやすく解説していただきます。

最初に私から簡単に全体像をお話しします。
皆さん、循環器病対策基本法(健康寿命の延伸等を図るための脳卒中、心臓病その他の循環器病に係る対策に関する基本法)という法律ができたことをご存知でしょうか。これは、日本国民が心臓病や脳卒中にかからないようにする、またはかかったとしても適切に治療して健康寿命を延ばしましょう、という目的でできた法律で、2019年12月に施行されました。
同じような法律に「がん対策基本法」があります。2007年に施行され、これにより日本のがん治療は大きく進歩し、がんの平均余命は大きく伸びました。
心臓の病気に心不全があります。患者さんに「あなたは心不全です」といってもあまり驚かないのですが、もし「あなたはがんです」といったら、大変驚いて落ち込んでしまうと思います。しかし、実は心不全になるとがんよりも寿命が短くなるのです。ですから、皆さんの意識を変えていただく必要があります。

この循環器病対策基本法の基本理念は、まず1番目は予防です。私は今回、日本循環器病予防学会学術集会の会長をしておりますが、そのスローガンは「予防に勝る治療なし!」です。病気にかからないほうがいいのです。もしかかってしまったら、適切に対応しましょうということです。そのためには、救急搬送などの整備をして適切に治療できるようにする必要があります。そして、患者さんとご家族の生活の質を向上させて社会参加を促していくこと、あるいは私たちが研究を行い、その情報を周知させなさいということが基本法には書かれています。
この方針が国から各都道府県におりてきて、それぞれの自治体が循環器病対策推進協議会を作り、心臓や脳の病気をきちんと治療できる体制を整えるようになっています。私は鹿児島県の循環器病対策推進協議会の会長を拝命されており、鹿児島大学脳神経外科の花谷亮典教授が副会長、本日ご講演いただく松岡秀樹先生もメンバーに入っておられます。このメンバーには医師ばかりではなく、歯科医師、薬剤師、管理栄養士、看護師、地域を包括する人たち、患者さんまで入っています。
この協議会でいろいろな循環器病の予防・治療について取り組んでいくのですが、一番大きなポイントはまず予防をして、病気になってしまったら急性期の治療をきちんと行い、回復期、慢性期の治療を行って社会復帰をさせなさいということです。たとえば、脳卒中になってしまっても、寝たきりにならないよう治療し、患者さんが仕事に復帰できるよう計画し実行できる環境整備をします。

この法律では、脳梗塞、脳出血、くも膜下出血、急性冠症候群(いわゆる急性心筋梗塞)、解離性大動脈瘤、心不全と、6つの病気を主要ターゲットにしています。脳梗塞、脳出血、くも膜下出血は、いわゆる脳卒中です。そして治療についてもいろいろ記載されていますが、とにかく予防が一番、病気にならないほうがいいのです。

さて、脳卒中の中で一番大きな脳卒中、寝たきりや死に至る重症な脳梗塞が心原性脳塞栓です。具体的な例を挙げれば、長嶋茂雄さん、小渕恵三さんが心原性脳塞栓だったと言われています。小渕さんはお亡くなりになりましたし、スポーツマンの長嶋さんだからこそ歩いていますが、普通の方だったら歩けなくなっていると思います。このように非常に重篤な脳卒中が心原性脳塞栓であり、この心原性脳塞栓の原因は、心房細動という不整脈です。
心房細動になると心臓の中に血の固まり(血栓)ができやすくなり、血栓が血管の中を流れて脳まで行くと脳の血管が詰まります。難しいのは脳卒中の治療は脳血管内科の松岡先生たちのお仕事、その手前の心房細動はわれわれ循環器内科の治療になります。ですから、連携しないとうまくいきません。

そこで今回「セゴどんプロジェクト」を立ち上げました。鹿児島県民が好きで覚えやすい名前を考えて、英語をずっとにらんで、このSEGODON(System for early detection and optimal medical therapy of atrial fibrillation in Kagoshima to prevent cardiogenic embolism Project)を考えつきました。無理やり英語の語呂合わせをしていますが、鹿児島の人がとても覚えやすいネーミングになったと思います。今日はそのプロジェクトから、心原性脳塞栓について松岡先生、その予防となる心房細動について二宮雄一先生、心房細動の早期発見とセゴどんプロジェクトの広報について宮内栄治先生と柴田啓佑先生にお話しいただきます。

心房細動を早く発見する、血栓が脳に飛ばないように治療することが重要です。本日は専門の先生方のお話を伺って、どうやったら早く見つけることができるのか、どうやったら重くなる前に病院にたどり着けるのか、何より予防のためにはどういうことをしたらよいのか、ということを皆さんと一緒に考えていきたいと思っています。

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