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解離性大動脈瘤の人工血管置換手術に踏み切るべきか

62歳 男性
2006年8月 2日

父親の病気について相談します。
11年前に解離性大動脈瘤(下行大動脈型)が発症してから今まで小康状態が続いていましたが、最近、急に片目が見えなくなったり、立ちくらみを起こしたりしています。診察の結果、一過性黒内症と診断されましたが、入院も手術もせず、現状維持するとのことです。
主治医の話では、血管は足まで解離しており、最大直径は現在55mmだそうです。60mmになったら人工血管置換手術の予定で、それまでは内科的治療を継続するとのこと。
会社経営で心労を重ねていることもあり、人工血管置換手術に踏み切ったほうがいいのでは、とも思うのですが、やはり60mmになるのを待つべきでしょうか。
本によれば、降圧治療中の死亡率も手術中の死亡率も約20%とあります。

回答

解離性大動脈瘤の手術成績は近年かなり向上し、日本全国の手術成績でも慢性期のものは、お書きになっている手術死亡率20%よりは良くなっています。しかし、これはあくまでも全体の平均値で、病型によってかなりの差があります。

お父様の場合、足の血管まで解離しているということですので、腹部の重要臓器への血管が分枝している部分も解離しており、そうなれば手術の危険はかなり高くなります。また、書いてはおられませんが、解離が逆行性に進行して大動脈弓部まで及んでいるとすれば、手術に際しては大動脈を全部取り替えなくてはならないことになり、かなり侵襲も大きく、危険も増すと思います。

そのようなことを前提にしていつ手術をすべきかということを考えますと、発症されてから11年の間に瘤の拡大がどのように進行したか、つまり11年間徐々に一定のスピードで大きくなってきたのか、あるいは最近になって急に大きくなってきたのかによって違ってくると思います。60mmにならなければ手術をしないというのは必ずしもすべての患者さんに当てはまるわけではありません。しかし、お父様の状況を一番よくご存知の担当の先生がそのように言っておられるのは手術のリスクも高く、60mmまで大きくなるまでまだ若干の期間があると考えておられるからではないでしょうか。

お申し出て頂きました情報だけではこれ以上のことを申し上げかねます。もし本当にどちらかとお迷いであれば、すべてのデータを現在の担当の先生からお借りになって大動脈瘤の手術を沢山やっている他の施設で今一度ご相談になっても良いと思います。昔はそのようなことをするのは大変嫌われたものですが、今日では本当の意味でのセカンドオピニオンを頂くということでそのようにされる方も稀ではありません。遠慮なさらずに担当医にご相談になってみても良いと思います。

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