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経過観察中の心室中隔欠損症で、別の医師に手術をすすめられた

20歳 女性
2006年11月 9日

先天性の心室中隔欠損症があり、8歳の時に心内膜炎による肺動脈弁閉鎖不全がありますが、現在まで手術はしていません。
今までの内科医は、欠損は4ミリと小さいため運動などの制限もなく経過観察でよいとのことでした。心内膜炎の菌はもうきれいになくなっているが、弁に傷が残り逆流が起こっているとのことです。
今までは手術する必要はなく、妊娠出産も問題はないと言われていました。しかし、今回先生を変えたところ、2週間の入院ですむし、将来のために手術してみたらどうかとすすめられました。そこで質問です。
1)手術はできれば受けたくはありません。どうしても今しないといけないでしょうか。
2)このままでは妊娠出産は危険なのでしょうか。
3)心室中隔欠損と肺動脈弁閉鎖不全の、両方の手術の難易度(危険性)はどのくらいなのでしょうか。
4)手術の傷跡はどのくらいの大きさで、すごく目立つものなのでしょうか。

回答

ご質問に対する回答を先にいたします。
1)手術はどうしても今しなければならないというものではありません。しかし、将来しなければいけなくなる可能性はあります。
2)このままでも妊娠出産に特別な危険はありません。
3)心室中隔欠損は毎年我が国で1,500例ほど手術が行なわれていますが、その手術死亡率は大体0.5%程度です。肺動脈弁閉鎖不全は単独では統計がありませんが、これが追加されてもそれほど手術の危険性は高くならないと思います。
4)手術の傷は大体15cm位の長さの傷が胸の正面に付きます。襟の広くあいた服を着ると、見えるところです。目立つかどうかは瘢痕がどのような形になるかで、これは体質にもよりますので一概に言えません。

これらのことに少し情報を提供いたしますと、あなたの心室中隔欠損が将来手術をしなければならなくなるかどうかは、一つにはあなたの心室中隔欠損がどの部分にある欠損孔であるかによります。
肺動脈弁から離れた一番ポピュラーな形の欠損であれば、4mm程度であれば今後とも手術を必要としない可能性は大です。
ただ、これが肺動脈弁直下の欠損である場合には、解剖学的な関係から肺動脈弁の閉鎖不全が進行していく可能性があります。もうすでに20歳ですので、これからさらにこれが進行するかは、はっきりとは申しあげられませんが、これが進行してくるとやはり手術を必要とする可能性があります。

翻って、心内膜炎のために肺動脈弁閉鎖不全になられたということですが、本当にその時に発熱があったりして、はっきり心内膜炎という証拠が残っているでしょうか。10年以上前のことですので、おわかりにならないかもしれませんが、もしも発熱も何もなしにある時からだんだん閉鎖不全が起こってきたのであれば、これは心室中隔欠損の場所が肺動脈弁直下にあるために肺動脈弁が次第にその孔の中に落ち込んでいって閉鎖不全になった可能性が十分あります。このような経過をとることは決して珍しくありません。
したがってそのような場合には、心室中隔欠損が小さくてもそれを閉じて肺動脈弁に支えを作れば、肺動脈弁閉鎖不全も一緒に治ってしまうこともあり、このような形の心室中隔欠損では比較的欠損孔が小さくても手術がすすめられています。
しかしこれは小児の場合であって、あなたのようにすでに成人になられている場合には今少しそのまま経過を見られるのもよいと思います。
ただし、心室中隔に欠損孔がある場合には心内膜炎を併発する可能性はこれがない正常の場合に比べてはるかに大きいので、歯科治療を行う場合や、そのほか血中に細菌が流出する可能性のある場合には、感染防御に十分注意していただかなければなりません。

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