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高齢者のウォーキングとその効用のエビデンスを教えてください

65歳 男性
2017年4月27日

 高齢者の場合、ウォーキングのしかたを教えてください。また、実際にどのような効用があるのか、エビデンスも併せて、お示しください。

回答

 高齢者の場合、ウォーキングは一日30分、週5日間、つまり一週間に150分行うことが多く、お勧めです。これはアメリカでの身体活動ガイドライン(2008 Physical activity guidelines for Americans)や、WHOの健康のための身体活動に関する国際勧告(Global recommendations on physical activity for health, 2010)などによって推奨されています。

 エビデンスとなる資料には、Wen CP et al. Minimum amount of physical activity for reduced mortality and extended life expectancy: a prospective cohort study. Lancet 2011 Oct. 1;378(9798):1244-53があります。416,175人を8年間、追跡した成績です。一日15分の運動を続けた人では全死因による死亡率が14%低下し、運動時間をさらに15分延長すると死亡率はさらに5%低下したということです。全死亡率ばかりでなく、心疾患による死亡率、糖尿病による死亡率のすべてが、運動量に応じて低下していたと報告されています。

 心臓病があるときには、運動処方箋が必要です。この場合には、正確には心肺運動負荷試験を行い、運動の強さは有酸素運動の上限(嫌気性代謝域値)を超えないようにします。嫌気性代謝閾値については心臓リハビリテーションの解説をご参照ください。「息切れ」が目安になると書きましたが、自覚的には「ややつらい」と「まだ楽である」の中間点の程度の運動まで、が望ましいといえます。心臓リハビリテーションの場合には、最初は一日30分、週3回で始めて、慣れてきたら、運動量を増やします。

 嫌気性代謝閾値とは心臓に無理のかからない運動量の強さを意味する数値ですが、心臓リハビリの目的は嫌気性代謝閾値を超えない程度の運動をつづけて、この閾値を次第に高くすることである、とご理解ください。自覚症状の上での嫌気性代謝閾値以内の強度の運動は「ややつらい」と「楽である」の中間点です。運動強度メッツを参考に処方する場合もあります。2メッツはゆっくりした歩行、3メッツは普通の歩行(4キロメートル/時)、4メッツは早歩き(6キロメートル/時)ですが、高齢者の大部分では2~3メッツ(ゆっくりした歩行ないし普通の歩行)くらいの処方になります。歩行が基本となりますが、筋力が低下したものでは、筋力トレーニングなどを追加することがあります。

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