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動脈硬化を防ぐ「葉酸」の働き

2014年05月15日 心臓病の予防栄養(食事)
動脈硬化を防ぐ「葉酸」の働き 

女子栄養大学副学長 香川靖雄

 葉酸(注1)はビタミンの一種で、動脈硬化を促進するホモステインというアミノ酸を無害にする働きをします。
人はビタミンを体内で合成できませんので食物などから摂取する必要があります。

 多くの国が高齢社会を迎え、循環器疾患の予防に有効な穀類の強制的葉酸添加(Compulsory folate fortification of cereals)が世界76ヶ国で行われるようになっております(図1)。葉酸 図1.png

日本でも大規模コホート研究の3つの全てで葉酸の動脈硬化予防は確認されています。日本平均の葉酸摂取量は約280μgですが、日本人の中でも米国平均と同等の約500μgと多く摂取している男女の虚血性心疾患と心不全が有意に半減しています(Chui R et al. Stroke 41, 1285-1289, 2010)。

日本では2000年に厚生労働省が神経管閉鎖障害予防通達で妊婦に葉酸摂取を奨励しましたが成果は十分に評価されておりません。

米国で400μg以上と決められているのは、遺伝子多型や高齢者などの利用障害を想定したものです。日本の葉酸推奨量240μgは、血清ホモシステイン(注2)14μg/dl以下になることを目標として、厚生労働省が策定したものです。
脳梗塞は血清ホモシステインが5μg/dl から2倍の10μg/dlに増加すると、約5倍にも増加します。
特に日本人の15%にみられる葉酸を活性化する酵素を合成する遺伝子(注3)がTT多型ではホモシステインの血中濃度が増加し、脳梗塞の発症が3.5倍も高くなっています(Morita H. et al.: Arterioscler Thromb Vasc Biol., 18, 1465-1469, 1998)(図2)。
葉酸図2.pngそこで、100名に葉酸負荷試験を受けてもらったところ日本の葉酸推奨量では不足であり、400μgに増量するとTT型の人であっても他の遺伝子型(CC,CT)と同様な血清葉酸濃度に上がり、ホモシステイン濃度を下げることが確認されました(Hiraoka M et al. : Biochem Biophys Res Commun, 316, 1210-1216,2004)。さらに、食物中の葉酸は補酵素としての蛋白質と結合しており、消化能低下で葉酸欠乏となりやすく、特に高齢者では約7割にピロリ菌感染が認められるので、萎縮性胃炎となりやすく、ペプシノーゲンI/II比が平均3.6±2.1と低くなっています。消化吸収率は4割といわれており、食物だけで摂取することを難しくしております。

したがって、たとえ栄養士が1日240μgの推奨量を給食したとしても、葉酸不足で動脈硬化が進行するのです。

坂戸市葉酸プロジェクト.png日本人の介入実績では「さかど市・葉酸プロジェクト」で遺伝子・栄養調査と「葉酸強化米」等の摂取を含む栄養・運動指導で、血清葉酸、血清ホモシステインが、高齢や遺伝子多型にかかわらず改善し、心筋梗塞、脳梗塞を予防し、病気による介護も減少し医療費の削減に成功しました(香川靖雄,臨床栄養, 120 (4) 398-399, 2012)。(図3,4,5)



 

2014.5.15掲載

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