高齢者の心不全

社会の高齢化に伴い、高齢者の心不全が増えています。
息切れや動悸などの症状があっても「年のせい」と思い込んで、そのままにしていませんか?

心筋炎・心筋症による心不全

心筋炎や心筋症は、心臓の筋肉(心筋)が障害されることで、心臓のポンプとしての機能が低下する病気の総称です。加齢が原因ではないといわれていますが、心不全の原因となるため、注意が必要です。

心筋に、何らかの原因によって炎症が起こる病気を「心筋炎」といいます。その結果、心臓の機能が低下したり(心不全)、危険な不整脈が起こって、突然死などの原因になることがあります。原因の多くは感染性で、風邪などと同じウイルスによるものです。最初は発熱、頭痛、全身倦怠感といった風邪症状がみられ、数日後に胸痛、動悸、呼吸困難などの心不全症状が起こります。風邪だと思い込んで放置し、対処が遅れてしまうことも多いため、風邪症状に加えて胸痛や動悸があれば、心筋炎の可能性を疑って早めに検査を受けることをお勧めします。心筋炎は血液検査、心電図検査や心エコー検査で見つけることができます。

心筋症は心臓の筋肉の慢性的な異常による病気で、その中の「拡張型心筋症」では心筋の収縮力が低下し、心臓が大きくなる病気です。心筋炎の患者さんの一部は、炎症が長引き、心臓が異常に大きくなって「拡張型心筋症」に移行することもあります。重症の拡張型心筋症では予後が悪いくなります。

一方、左心室の筋肉が分厚くなる(肥大する)病気に、「肥大型心筋症」があります(図13)。高齢者に多い「収縮機能は保たれている心不全」(HFpEF)の原因のひとつでもあります。心筋症の原因は不明とされていますが、肥大型心筋症は同じ家系内に発症することもあり、心筋のタンパク質の遺伝子の異常によるものが何割かはあると考えられています。 

図13:肥大型心筋症
図13 肥大型心筋症

心筋の細胞は、ほかの臓器と違って再生しません。従ってできるだけ残った心筋細胞の負担をとって長持ちするようにすることが肝要で、塩分摂取や過度の運動を制限したり、さらには、さまざまな薬を服用することによって、これ以上、心機能を低下させないよう、治療を続けることになります。

ほかにも、心臓の筋肉が障害され、心不全の原因となる病気として、次のようなものがあります。「心アミロイドーシス」は、異常なタンパク質が心筋の組織に付着してゴワゴワになり、心室の壁が厚くなるために、心機能が低下します。 また、α-ガラクトシダーゼという酵素の欠損によって起こる「ファブリー病」は、心筋に糖脂質が溜まって硬くなる病気で、「特定心筋症」という特殊な心筋症に分類されています。

なかでも、日本人に多い「サルコイドーシス」は、原因不明の難病で、心臓などの臓器に、特殊な病巣(肉芽腫)ができ、心筋が炎症を起こして、収縮力が弱くなり拡張型心筋症と同じような状態に至ります。

このように、全身の病気が原因で機能障害が起こるものを「二次性心筋症」といいます。全体的に患者数は少なく、高齢者に特に多いというわけでもありませんが、こうした稀な病気も見逃さないようにする必要があります。

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