心室中隔欠損症の自然閉鎖する可能性と手術時期について、教えてください。
生後の検査にて心室中隔欠損症が見つかり、4~6ミリの中程度の穴があるとの診断を受けました。自然閉塞の可能性もあるため様子見ということで、現在は利尿薬を服薬しております。自然閉塞する可能性は低いのでしょうか。手術時期はいつ頃になりますでしょうか。
回答
1)心室中隔欠損症とは
心室中隔欠損症とは、動脈の血液を全身に押し出すポンプである左心室と、静脈の血液を肺へ押し出す右心室の間を隔てている壁「心室中隔」というところに穴(欠損孔)がある病気です。このため、左室ー心室中隔欠損ー右室ー肺動脈ー肺ー肺静脈ー左房ー左室の順に血液が流れ、肺に流れ込む血液量(肺血流量)は増加し、その分全身への血流(体血流量)は減少する病気です。
肺血流が増加すると、呼吸数が増え呼吸が苦しくなると陥没呼吸や哺乳不良などを起こします。またその分体血流が減少すると、体重増加は不良となり手足の循環が悪くなって皮膚の色が青白くなり末梢冷感を起こすようになります。
穴を通って流れる血液の量は、穴の大きさが大きければそれだけ多く流れるという傾向がありますが、厳密には肺血管と体血管の血管の硬さ、血管抵抗によって穴を流れる方向とその量が決まります。穴が大きな心室中隔欠損は、肺動脈圧が高い肺高血圧を合併することが多く、乳児早期の手術(穴を塞ぐ手術)を必要とすることが多くなります。穴が小さい場合は、肺高血圧を合併することは少ない傾向となります。ただし、肺血流量や肺高血圧の程度は穴の大きさだけで決まるものではないため、経過を見ながら心臓にかかる負担の程度をしっかり見てもらうことが重要になります。
2)自然閉鎖について
一般に心室中隔欠損で自然閉鎖が期待できるのは、
(1)穴の位置が筋性部と呼ばれる心室中隔の部分にあるもので、
(2)直径が4ミリ以下のもの、
(3)かつ右室圧および肺動脈圧が正常で肺高血圧がないもの、
(4)左房・左室の拡大がないものといわれています。
心室中隔欠損の穴のサイズが大動脈弁の直径の1/3以上ですと、穴のサイズとしては中等度以上の心室中隔欠損という診断になります。
お子さんの場合には、穴の位置、肺高血圧の有無、左房・左室の拡大の有無がわからないので、自然閉鎖するかどうかは、文面だけでは判断はできません。
ただ、直径が6ミリで利尿薬を飲んでおられることから、おそらくは心室中隔欠損の自然閉鎖の可能性は低く、心室中隔欠損閉鎖術(外科手術)の適応になると思われます。また穴が4ミリ程度でも心室中隔欠損の穴の位置が肺動脈弁に近く、大動脈弁の変形や大動脈弁逆流を生じている場合は手術適応となります。
3)手術時期について
手術の時期ですが、施設により手術時期の考え方が異なりますので、受診されている施設の主治医の先生とよく相談し、その施設の手術成績をよく聞かれた上で決定されることをお勧めします。
肺高血圧の程度にもよりますが、陥没呼吸や体重増加不良、哺乳不良、四肢の冷感などがある場合は手術をお勧めしています。大動脈弁の変形や大動脈弁逆流が進行している場合も手術適応となります。
一般には、体重増加が成長曲線を外れ始めたら手術の時期であるとする施設が多いようです。また無輸血といって輸血をせずに心臓手術ができる年齢および体重になるまで待って手術をする場合もあります。乳児早期よりは乳児後期の方が人工心肺などの合併症のリスクは減少しますが、心室中隔欠損による症状や血液の流れの異常、心臓への負担の程度により最適な時期の設定を主治医の先生と相談されたほうがよいと考えます。