心房中隔欠損症の自然閉鎖する可能性について、教えてください。
娘が心エコーで心房中隔欠損症と診断されました。穴の大きさは5ミリだそうです。現在はチアノーゼなどの症状がないため、経過観察です。5ミリの穴は、自然に塞がることはないのでしょうか。塞がる確率はどのくらいでしょうか。
回答
心房中隔という右心房と左心房を隔てている壁に孔が空いているのが、心房中隔欠損症です。肺で酸素をもらった新鮮な血液は通常、左心房から左心室に行き、左心室から動脈を通って全身に送られますが、心房中隔に孔が空いていると、左心房から右心房に一部の血液が流れてしまい、また肺に流れてしまいます。
この右心房に流れ出る血液の量が多いと、右心房・右心室から肺に流れる血液の量が多くなり、この分、心臓や肺に負担がかかります。
心房中隔欠損症では、この血液の量は小児期では少ないので、心臓や肺への負担は少なく、特に症状はないことが多いのです。したがって、小学生や中学生になってもほとんど症状がなく、部活などでハードなスポーツも普通にこなしているお子さんが、学校検診でこの病気がみつかった、ということもよく経験します。このような状況の病気ですので、子供の頃までは、日常生活について注意はまったく必要ないという方がほとんどです。
思春期から成人期になると、成長とともに孔も大きくなり、次第に流れる血液量が多くなります。ですので、成人以降に心臓や肺の後遺症を残さないように、まだ症状がほとんどない学童期ごろのうちに治療をすることが多いのです。
治療は、カテーテル治療という開胸しないでできる方法で治すことが多いのですが、孔の位置や形態などによっては、開胸手術が必要な方もいらっしゃいます。
自然に塞がることはないのか、と言うご質問が多いのですが、「心房中隔欠損症」は、通常は閉鎖することはありません。ただし、ここで注意が必要なのは、とても似た状態の「卵円孔開存症」という状態があり、これであれば、まだ1カ月ということを考えれば、自然に閉鎖する可能性も十分ある、という点です。
卵円孔とは、赤ちゃんが生まれる前、お母さんのお腹の中にいるときは、みな持っている心房中隔にある大きな孔のことで、「心房中隔欠損症」の孔とほぼ同じ場所にあります。生まれたらすぐに弁が蓋をして孔は閉鎖しますが、弁が完全に孔を覆いきれず少し隙間が残っているのが「卵円孔開存症」です。1カ月の時期ですとまだその孔が残っている可能性もあり、これだとすると、その後に自然に閉鎖する可能性があります。
1カ月の時点では、心エコー検査で、孔の場所や形から明らかに「心房中隔欠損症」とわかる場合もありますし、「卵円孔開存症」と区別がつきにくい時もあります。卵円孔開存症の可能性がどれほどあるのか、担当の小児心臓病の専門医、あるいは主治医に尋ねてみてはいかがでしょうか。
いずれにせよ、ご不明な点は、主治医の先生に気兼ねなくご質問ください。お母様の味方になって、一緒に娘さんの今後のことについて考えてくれると思います。