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若い女性に多い原因不明の胸痛(胸痛症候群)

16歳 女性

16歳の女性。いつごろからか、よく覚えていません。急に胸が痛くなります。喉がつまり、胸が締め付けられ、針で刺すような痛みです。早く治ることもあれば、しばらく続くこともあります。大きく呼吸をすると痛みが増します。

関連するご相談その1.14歳の女性。胸痛症候群といわれたが、どうしたらよいのでしょうか。運動すると痛むのですが、保健の先生には異常はないといわれました。病気ではないのですか。
とくに部活のテニスのボール出しのとき、圧迫されるような痛みがあります。ボール出しをやめると3分くらいで治ります。ボールをうっているときはズキンズキンという感じがします。笑ったり動くと痛かったり、すぐに息切れしたり、ひどいときは何もしていなくても痛くなります。気持ちの問題なのでしょうか。

関連するご相談その2.15歳の女性。3年前から原因不明の胸痛があり、痛みがでるとうずくまるほどです。病院で心電図、レントゲン、血液検査、ホルター検査などしましたが、異常ありませんでした。痛みで授業が受けられないほどです。

関連するご相談その3.16歳、女性。いつごろからか、たまに急に痛くなります。締め付けられるような痛みで、息をすると一層、痛みます。早く治まるときもあれば、長くつづくこともあります。

関連するご相談その4.17歳、女性。半年前くらいから、胸痛がほぼ、毎日つづいています。プレコーデイアル・キャッチ・シンドロームといわれました。MRI、CT、エコー、食道内圧検査、胃カメラ、すべて異常はありませんでした。医師からは精神的なもので感受性が高まり、強い痛みと感じているのではないか、といわれています。いろいろな痛み止めを服用していますが、効いていないように思います。

関連するご相談その5.20歳、女性。3か月前ころから、動いた時や横になるときに、胸の真ん中あたりが締め付けられるように痛みます。数秒間、痛みます。

関連するご相談その6.19歳、女性。4か月前ころから、安静時に胸が締め付けられる感じがします。心電図では異常はありませんでした。循環器内科を受診しましたが、精神的なものといわれました。

関連するご相談その7.44歳、男性。10年ほどまえから、胸の痛みがあります。痛みは安静時、深夜や早朝に多いです。先日は2時間ほどつづいて非常に不安になりました。検査ではいつも異常がなく、医師に「痛みは心臓性ではない」といわれました。

回答

このひと月ほどの間に寄せられたご相談の一部をまとめました。きわめて似たご相談が多いことがお判りでしょう。しかも、8件のうち、7件までは14歳から20歳までの女性です。
回答者はこれらのご相談の殆どは胸痛症候群とよばれている胸痛に該当すると思っています。最後の44歳の男性はすこし異なるようですが、10年もつづいているので、その中の一つである心因性の痛みかも知れません。ただし、胸痛症候群とは「原因不明の胸痛をいう。胸痛の原因になる疾患のすべてが否定された状態を仮に一括していっておく場合に用いられる」と定義されており、実は仮に診断しておく原因不明の胸痛のことなのです。原因がわかれば、ここから除外されていきます。ちなみに、ある総合内科クリニックの統計(内科2018;122:485-488)では、初診時、胸痛を主訴としていた方の最終診断は狭心症8%、その他の心疾患5%、 肺・気管支疾患20%、消化器疾患10%であり、筋・骨格疾患20%、肋間神経痛 8%、心因性など17%、その他・不明11%であったということです。つまり、筋・骨格疾患、心因性、その他の計52%が胸痛症候群であったといってよいのでありましょう。
胸痛症候群の痛みは、ここで紹介したご相談のようにチクチク、ピリピリ、刺すような痛みが多いようです。14歳から20歳までの若い女性にしばしば訴えられます。指で指し示すことができる範囲の痛みであることが多く、ピンポイントの痛みといわれたりします。痛みは身体を伸ばしたり、体位を変えたりすると消失したり、逆に出現したりします。成長期、思春期のこの年代によくみられて、日が経つと自然に軽快していく、というのが特徴であり、多くの場合は筋・骨格系の成長とかかわる胸痛なのであろうと考えられています。胸の筋肉の一部を摘まむと痛むことがあるのも筋肉痛とみる根拠となっています。
同じような症状でありながら、後日に診断が明確になる特殊な場合があります。痛む箇所に発赤がみられ、やがて水泡ができて、ヘルペスであったとわかる場合、肋骨の下縁に沿った痛みであることから肋間神経痛と診断されるという場合、などがあります。肋骨の肋軟骨との接合部が局所的に腫脹していて、おさえると痛むのはテイーチェ症候群とよばれる肋軟骨関節炎です。このような局所の炎症は、みぞおちの剣状突起、鎖骨と胸骨をつなぐ胸鎖関節にみられることがあります。また、注意を要するものに気がつかないでいた肋骨骨折という場合があります。
海外でも注目されていて、Precordial Catch Syndrome、プレコーディアル・キャッチ症候群、とよばれるものがあります。これらの文献では患者さん本人あるいはそのご両親に悩み事がある場合があるとされ、痛みの場所は心臓ではなく胸の筋肉部分(胸壁)であることをよく理解させた上で、戸外の運動を勧めることが提案されたりしています。
 若い人の胸痛は、狭心症など命にかかわるような心臓病が原因で起こることはほとんどなく、病院の検査で異常がなければ、こうした胸の外側の痛みである場合が多いといえます。

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