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一般向けメールマガジン 第116号

HEART WEB NEWS No.116

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【日本心臓財団 HEART WEB NEWS 第116号】2015年4月3日発行(月刊)
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【目次】
 TOPICS :健康寿命を延ばすために
 イベント情報
 特別寄稿:藤原久義(兵庫県立尼崎病院・塚口病院 院長)
  医療事故「警察への届け出義務」は何とかならないものであろうか?
 ご寄附のお願い

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【TOPICS】

健康寿命を延ばすために

 医学の発達によって、脳卒中や心筋梗塞の患者さんの多くが救われるようになりました。しかし、それはいわば死に直面した崖っぷちの患者さんをすくい上げたに過ぎません。もっと手前、すなわち予防こそが重要です。
 医師法の第1条にも、「医師は、医療及び保健指導を掌ることによって公衆衛生の向上及び増進に寄与し、もって国民の健康な生活を確保するものとする」と書かれています。医師の仕事として病気の治療も大切ですが、むしろ予防啓発なのです。
 日本国民の平均血圧をたった1mmHg下げるだけで3.2%、日本全体で毎年約4500人の脳卒中による死亡が減少し、約1万人の発症を防ぐことができるといわれています。

 日本人の平均寿命は、男性79.55歳、女性86.30歳、健康寿命は男性70.42歳、女性73.62歳です(2010年)。その差は男性9.13年、女性12.68年で徐々に広がる傾向にあります。
 また、厚生労働省の統計で死亡率をみると、心疾患、脳血管疾患の死亡率、有病率は減少していますが、これは年齢調整死亡率であり、高齢者が増加していますから絶対数は増加しているのです。とくに心不全は増えています。
 健康寿命を長く延ばし、多くの国民が健康的な生活をできるだけ長く送るためには、今までのような「発症してからの治療、発見して治す医療」から「疾病発症を予測し、予防する医療」へとシフトしていく必要があります。

 健康寿命を阻害する要介護の原因の約30%は心血管病です。心血管病の予防はまず第一に動脈硬化の危険因子を減らすことです。予防できる危険因子は高血圧、糖尿病、脂質異常、喫煙、肥満であり、生活習慣の改善では、禁煙は当然として、とくに運動、栄養(食事内容)、睡眠が大切です。運動は心血管病の予防だけでなく寝たきりの原因にもなる骨折の予防にもなります。また24時間活動する現代社会においては、健全な睡眠をとることも大変重要です。
 
 しかし、これらの危険因子がなくとも動脈硬化が進展している方もいます。そういった動脈硬化の状態(血管の硬さや詰まり具合)を測る検査にPWV(脈波速度)/ABI(足関節上腕血圧比)があります。PWVは一般にはいわゆる「血管年齢」が分かる検査として知られていますが、実際は動脈の硬さをみる検査です。「血管年齢」は動脈硬化の指標としてわかりやすい言葉ですが、比較的短時間に変動するので、それだけで一喜一憂するものではありません。この検査でたくさんの人を調べた結果、高血圧、糖尿病、C型肝炎、骨粗鬆症や肺気腫などがあると血管が硬くなりやすいことが分かっています。 この検査でたくさんの人を調べた結果、高血圧、糖尿病、C型肝炎、骨粗鬆症や肺気腫があると血管が硬くなりやすいことが分かっています。ABIは足に行く動脈に詰まりがあるかを診る検査です。ABIに異常があると脳卒中や心筋梗塞になる確率が高く、乳がんより死亡率が高いことも分かっています。 こうした検査による早期発見や生活習慣の改善により心血管病の発症を予防し、健康寿命を延ばしましょう。防火に勝る消火はありません。

(2015年3月17日 第18回日本心臓財団メディアワークショップ 山科章先生ご講演より)

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【血管健康くらぶ】

 日本心臓財団と動脈硬化予防(研究・行動)啓発センターの共同制作による動脈硬化予防啓発サイトです。生活サイクルや性格に合わせた簡単な動脈硬化予防法を身につけましょう。

 血管健康くらぶ
 http://www.doumyaku-c2.jp/

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【イベント情報】

 □■PUSHコース講習会(AED心肺蘇生講習会)

 東京・愛宕救急医療研究会による一般市民の方々、患者さんご家族、お父さんお母さんお子さんを対象とした、心肺蘇生講習会です。どなたでもお気軽にご参加ください。

 日 時:2015年4月11日(土)午後1時~2時
 場 所:慈恵大学病院 高木会館1階ロビー
     東京都港区西新橋3丁目25番8号
 受講料:無料
 *詳細・お申し込みはこちら
 http://www.atagoqq.org/event_category/show/11


□■第79回日本循環器学会学術集会「市民公開講座」
知っておきたい心臓病の知識

 日 時:2015年4月26日(日) 開場13時、開演14時
 会 場:フェスティバルホール
    〒530-0005 大阪市北区中之島2-3-18
 参加費:無料(定員2500名)
 プログラム(予定)
  司 会:小川 久雄(第79回日本循環器学会学術集会会長)
  ゲスト:角  淳一(元毎日放送アナウンサー)
   講演1 日本人の心臓病は今どうなっているか
        安田  聡(国立循環器病研究センター)
   講演2 高齢者の心臓病はどんな特徴があるか
        泰江 弘文(熊本加齢医学研究所・熊本機能病院)
   講演3 心不全とはどんな病気か
        坂田 泰史(大阪大学循環器内科 教授)
  「笑って楽しく生きていく」
        角  淳一 (元毎日放送アナウンサー)
   講演4 心臓病の内科治療
        掃本 誠治(熊本大学循環器内科)
   講演5 心臓病の外科治療
        藤田 知之(国立循環器病研究センター)

 参加申込み方法は下記をご参照ください。
 http://www.jhf.or.jp/heart_news/2015/003852/

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【特別寄稿】

 医療事故「警察への届け出義務」は何とかならないものであろうか?

         兵庫県立尼崎病院・塚口病院 院長  藤原 久義

 医療事故の中で、外傷等で故意・犯罪の可能性がある場合は警察に届け出て捜査をお願いすることは当然である。これは医療の問題ではない。しかし故意・犯罪を想定し得ない医療事故で患者が亡くなった場合、過失致死として自ら警察に届け出ることは妥当なことであろうか?
 よく知られているように、アメリカでは医療過誤を含む医療事故は、死亡例であろうとなかろうと、故意・犯罪を想定し得ないなら警察への届け出義務は原則的になく、民事裁判の賠償対象になるだけである。刑事事件化することは医療事故の積極的自己申告・原因分析・公開・再発予防をかえって阻害すると考えられているためである。我が国でも一刻も早くそうすべきではないかということを述べたい。

 人間の命を預かり、人間の体にさまざまな侵襲を直接加えて診断・治療する我々医療者は日常的にさまざまな医療事故と隣合わせである。医療行為は患者と医療者側との信頼に基づく診療契約が結ばれ、患者・家族の納得の上で行われる。このような職業は他にない。
 しかし人間は完璧ではなく、時には間違ってしまう動物であり、どんなに努力しても、間違いは減っても無くなることはない。医療事故は一見単独の個人の責任と思えるものでも、詳しく調べれば、複数の人間のチェック機構を運悪くすり抜けて生ずるものが大部分である。個人の責任追及よりは、事故原因の解明・再発予防策を公開し、互いに情報の共有を行い、今後このようなことを減らすためのシステム構築こそが重要である。そのため隠すことなく、積極的に自らあるいは互いに報告するシステムが医療事故対策委員会等の名前で各病院に設置されている。
 私の病院でも実際に事故までに至らなかった事例も含めて毎年2,500件以上の報告(ヒヤリハット)がある。当然、報告内容に対しては免責で、免責がなければ正直かつ積極的情報提供はあり得ない。この点で、自分に不利になることを言わなくてもよい黙秘権等が認められている刑事事件の分野と根本的に異なっている。

 一方、わが国には明治時代以来、医師法21条「医師は、死体又は妊娠四月以上の死産児を検案して異状があると認めたときは、二十四時間以内に所轄警察署に届け出なければならない。」がある。
 1994年法医学会の拡大解釈により混乱が生じたが、紆余曲折し、2004年の最高裁での「自分が診察していた患者かどうかは関係なく、死体の外表を検査して、異状を認めた場合には警察署に届け出ることが必要である」という判例が出された。この見解は、外表に異状がなければ届け出る必要はないことになる。
 しかし依然として各病院で対応が異なるのが現状である。例えば2015年3月、日本病院会のホームページに記載されている安全確保推進委員会の調査によれば、医師法 21条による警察への届け出に関し、現状の対応としては、「医師法 21条の解釈で「外観上異状を認めない死体」であれば届け出ない」が 37.0%、「事故と判断した事例は全て届け出る」が 30.2%、「外観上の異状があれば念のため届け出る」が 13.0%と様々な対応がなされていた。また、基本的な考え方としては、「故意・隠蔽等が明らかな場合 は届け出る必要がある」が 74.4%、「院内調査が進む過程で必要があれば後日届け出る必要がある」 が 51.3%であったのに対して、「医療事故は全て警察へ届け出る必要はない」が 25.7%であった。

 平成26年6月18日に成立した医療法の改正に盛り込まれた新しい医療事故調査制度(制度施行は平成27年10月1日)は死亡する医療事故に対し、医療機関で院内調査を行い、その調査報告を民間の第三者機関(医療事故調査・支援センター)が収集・分析することで再発防止をする仕組みである。
 しかし我々が期待したことは、この機関に届ければ医師法21条の警察への届け出義務が回避され、刑事事件化しないことであった。しかし残念ながら両者は別々のことになってしまった。
 我が国の医療安全がさらに進歩し、患者の安全・安心をさらに向上させるためにも第三者機関に届け出れば原則的に警察への届け出は必要ないという方向性について、国、医療者並びに一般の方にもご理解いただけないかと思う次第である。

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