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一般向けメールマガジン 第98号

HEART WEB NEWS No.98

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【日本心臓財団 HEART WEB NEWS 第98号】2013年10月1日発行(月刊)
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【目次】

TOPICS「第22回川崎病全国調査成績発表」
イベント情報
 特別寄稿「伊賀塾 ―無限なるものの誕生によせて―」小柳 仁
 ご寄附のお願い
 
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【TOPICS】第22回川崎病全国調査成績発表

 1970年以来、2年に1回行われる川崎病全国調査成績の結果が先日、NPO法人日本川崎病研究センターより発表されました。
 2011年と2012年のわが国の川崎病患者数は、それぞれ12,774人、13,917人となり、近年の増加傾向は急勾配で加速しています。少子化傾向にもかかわらず、罹患する患児数が増加していることになり、2011年の0-4歳人口10万人対の罹患率は264.8と、過去最高の数値となりました。

 治療の進歩により、致命率は0.01%と少なくなりましたが、罹患児の約3%、毎年約400人が冠動脈瘤などの心後遺症を合併しています。
 川崎病が大流行した1980年代から30年以上が経過し、川崎病既往歴のある成人の数が約12万人と推定されている現在、ドロップアウトする患者の増加が問題になっています。
 つまり、自覚症状のないため、薬を飲まなくなったり、定期的な受診を中断する患者が多くなり、知らずに冠動脈病変が進行してしまう例が増加しているのです。

 1961年に川崎富作医師により発見されたこの疾患は、日本心臓財団をはじめ多くの研究者、研究機関が原因の究明を追求してきましたが、いまだに解明されていません。
 川崎病に罹患し、心後遺症のある方は、主治医の指示に従った定期的な受診を継続していただくことが大切です。
 
 
 第22回川崎病全国調査報告書
 http://www.jichi.ac.jp/dph/kawasakibyou/20130909/mcls22report.pdf

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【イベント情報】

 □■第36回日本高血圧学会総会
   市民公開講座1「血圧を下げて元気で長生き」

 日 時:2013年10月24日(木)16時30分~18時30分
 会 場:大阪国際会議場12階 特別会議場
     (大阪市北区中之島5-3-51)
 プログラム:
   講演1「高血圧の予防と管理」  
        荻原俊男(大阪大学名誉教授)
   講演2「脳卒中は防げる、治せる」
        山口武典(国立循環器病研究センター名誉総長)
   講演3「心臓病の予防と治療」  
        今泉 勉(国際医療福祉大学教授)
   講演4「慢性腎臓病(CKD)にならない工夫、なった時の心得」
        渡辺 毅(福島県立医科大学教授)
 共 催:第36回日本高血圧学会総会、バイエル薬品株式会社
 後 援:日本心臓財団ほか
 詳細・申込みは下記HP参照
 http://www.congre.co.jp/36jsh2013/simin.html


  市民公開講座2「よい生活習慣と健康長寿:減塩サミット」

 日 時:2013年10月26日(土)16時20分~18時50分
 会 場:大阪国際会議場12階 特別会議場
     (大阪市北区中之島5-3-51)
 プログラム:
   講演1「減塩でいきいき健康長寿」  
        土橋卓也(国立病院機構九州医療センター高血圧内科医長)
   講演2「食事の工夫と美味しい減塩食」
        高木洋子(宇多野病院)
   講演3「食べ方上手で健康寿命をのばす:世界調査で分った秘訣」
        家森幸男(武庫川女子大学教授)
   講演4「健康長寿と高齢者の介護」
        西川ヘレン(タレント)
 共 催:第36回日本高血圧学会総会、MSD株式会社
 後 援:日本心臓財団ほか
 詳細・申込みは下記HP参照
 http://www.congre.co.jp/36jsh2013/simin.html


 □■東京医科歯科大学循環制御内科・歯周病科
   第1回市民公開講座『歯周病を予防して全身を守る』

 日 時:2013年11月9日(土) 14時~16時15分
 会 場:東京医科歯科大学 M&D タワー2 階 鈴木章夫記念講堂
    (東京都文京区湯島1-5-45)
 プログラム:
   講演1「正しく理解!歯周病のすべて」和泉雄一
   講演2「だから怖い!歯と心臓の意外な関係」磯部光章
   講演3「知りたい!歯周病と糖尿病」小川佳宏
   講演4「元気に長生き!口腔ケア」荒川真一
   パネルディスカッション
 主 催:東京医科歯科大学 循環制御内科/歯周病科
 後 援:日本心臓財団ほか
     http://www.tmd.ac.jp/outline/open-lecture/sonota/

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【特別寄稿】

  伊賀塾 ―無限なるものの誕生によせて―

               塾長 小柳 仁(東京女子医科大学名誉教授)

 医療は国家社会を構成する基本的な要素の一つであり、スモールガバメントを目指していても欠くことはできません。よい医療を実現するためには、一定レベルの医学、その医学を医療として実践する医師や看護師をはじめとするすべての医療職、薬剤や医療機器を研究開発し提供する研究者と医療産業、そしてこれらの医療資源を病めるものの病床に届けるための効率のよい医療行政と医療費の確保維持の政策などが必須であります。

 今日重大かつ危機的であるのは、この国において、これらの要素のほとんどが崩壊寸前か、あるいは完全に崩壊してしまっていることです。そして残念ながら、最も崩壊しているものは医学教育であります。癌や心臓などの生命に直結する外科の分野で、医学生の外科志望が減少し、このままでは2020年代半ばには新人医師の外科への参入は理論値ではゼロになるという非常に厳しい状況にあります。

 半世紀、今から50年前、開心術がほとんど救命できない時代に、私は心臓血管外科の新人医師となりました。大学生活40年間のうち、21年間は女子医学教育機関において教授職を務め、全国の男性新人医師の初心を刺激し扇動しながら300人の新しい外科医を誕生させました。家族と過ごすよりも長い時間、若い外科医たちと過ごし、医師の全人的生涯教育を行ってきました。医療人の「人のために働く」という動機作りと、生涯教育にはいかに多大なエネルギーと叡智を必要とするものであるかを良く知っているつもりです。

 偶然のことで、伊賀市立上野総合市民病院の三木病院長、伊賀市の担当者の方々とお会いし、この地の医療の活性化にかける夢と理想をうかがいました。
 夢と希望を実現するためには「教育」でしょう。この地の活性化のためには、瞬間的にこれは「スクール」を作ることだと考えました。
 スクールは本来語源的に「群集」を意味しています。決して教師と生徒で成立するのではありません。この地に医師、看護師を始めとする医療職、行政人、中、高、大学生、患者さんとそのご家族、全ての人が集い(つまり群集)、「人のために働く」、「病を治す」ということは一体どういうことなのかを再確認するスクールを開きたいと思いました。このスクールでは教師が講義をし、生徒がノートをとるような「知識の伝授」を目的としていません。世の中には、学校も学会もセミナーもシンポジウムも溢れています。

 明治維新前後の日本において全人的教育の成功例が二つあります。
 吉田松陰の「松下村塾」の塾生は、特に選抜されたわけではない萩藩近郊の下級武士の子弟や農民の子弟です。明治政府には松下村塾で学んだ人材が多く参加し、政府の中枢で働きました。単なる確率論からすれば非常に高い数字です。
 北海道大学の前身である札幌農学校の最初の入学生はわずか9名、そして初代校長ウィリアム・クラークの在職はわずか9ヶ月です。9名の中から内村鑑三、新渡戸稲造など明治時代を支えた知識人が高い確率で輩出されたのは一体何故なのか。
 おそらくこの二つのスクールは単なる「知識の伝達」を行ったのではなく、彼らの心の中に生涯燃え続ける「火種」のようなものが植え付けられたのではないでしょうか。そしてそれは、明治前後にあった「藩校」や「塾」のような、教師と生徒の距離が、限りなく近く親密なスクールにおいて成立、実現するのであると思います。

 伊賀の地はかつて収奪に手を染めたことのない名藩が収めていた気高い土地であります。仏教伝導のため苦難を重ねついには失明した高僧鑑真和上を偲んで「若葉して御眼の雫拭はばや」という例えようもなくやさしさに満ちた名句を残した俳聖松尾芭蕉の聖地でもあります。
 気高く、暖かさに満ちたこの地の名をいただきスクールの名を「伊賀塾」といたします。

 言語化、数量化、定量化できない人間の知恵があり、その知恵を「暗黙知」と呼びます。音楽家、バレーダンサー、スポーツ選手、そして医療の上での技能、技術(例えば外科手技)などはこれに属します。
 驚くべきことに「はやぶさ」と言う探査機が小惑星「イトカワ」から微粒子を2000個を積載し7年後に地球上に帰還しました。近代科学の勝利と賞賛されていますが、しかし担当した科学者たちはこれによって「暗黙知」が膨大に増加し、次の世代にどのように伝えるか苦慮しているということです。

 人と人との関係はもちろん、医療の世界にも言語化、マニュアル化できない大切なものが多く存在し、その伝播が現在急速に失われ、それが医療の崩壊の一因となっています。現代の社会の危機は実はこの大切な「知」が伝えられていないことも一因かもしれないと危惧しています。

 人から人へ。このことが「伊賀塾」の目標です。そこには教師と塾生の差別や上下、垣根もありません。平等に発言し生徒から教師も学ぶでしょう。開塾を担う教師はそのことをよく理解してくださっている方々ばかりです。

 開塾の、テーマは「医療再生」です。やがて進化した塾は「本気塾」となり「精神塾」となり昇華を遂げてゆくでしょう。私も未来像については想像はつきません。かつての塾生が医療人となったり、本塾の教師となる日が来るかもしれません。開塾時の教師は作家、経済人、基礎医学者、看護大学学長、院長、塾長の二人の臨床医です。

 3年6期の予定で、第1回、第2回を執り行いました。3年後あなたはどのように変わるのでしょうか。あなたが変わり成長してゆかなくてはこの国はよくなりません。第3回「伊賀塾」でお会いしましょう。

 第3回 平成25年11月3日(日)、4日(月、祝)
 http://www.cgh-iga.jp/?p=1716
                
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