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月刊心臓

編集後記

2018年11月号

 「心臓」創刊50周年記念のHEART's Selection特集も終わりに近づいた。今回は画像診断をテーマとした。循環器イメージングのFuture Topicsとして、5名の新進気鋭の先生方にご寄稿をお願いした。循環器診療における画像診断の重要性は高く、我々は多くのモダリティを日常診療に利用している。近年の画像診断の進歩は著しく、より高解像度で鮮明に、より非侵襲的に、そしてstructural heart diseaseをはじめとする新しい治療法に必須のものとなっている。
 FFRガイドPCIの有効性が大規模臨床試験で示され、虚血を機能的に証明することの重要性が再認識された。FFRの測定は冠動脈内にガイドワイヤーを挿入する侵襲的なものであるが、現在ではCTで近似する値を求めることができる。冠動脈プラークの性状は冠動脈内にIVUSを挿入して評価するが、MRIで非侵襲的に判定できるようになった。心筋性状は生検標本に替わり、まだ克服すべき課題はあるものの、MRIでファブリー病、アミロイドなど評価可能である。TAVIの実施施設は増加し、急速に普及しているが、術前CTは必須の検査となっている。また、MRに対するカテーテル治療が開始されたが、術中のTEEでのモニタは欠かせない。
 一方で、我が国の人口あたりのCT、MRI装置の台数は世界一である。医療費、被ばく、被験者の身体的・精神的な負担を考慮し、最適な治療を行うために、最適なイメージングの選択が、我々に求められていることを改めて認識したい。
                               (竹石恭知)

2018年10月号

 今回のHEART's Selectionのテーマは循環器救急のFuture topicsで4編の寄稿があった。3編は心不全に関するもので、残る1編は心筋梗塞の発症予防に関するものではあるが、急性期ならびに慢性期の心不全予防にもつながるものと考える。今、まさにこの心不全パンデミックにどのように対応するかが大きな課題である。
 急性心不全では病態に応じた治療が望まれるが、その病像スペクトラムは広く、また救急現場で患者が呼吸困難を訴え血行動態も不安定である状況では、対処療法が優先されてしまうことが少なくない。本誌に掲載された「急性心不全に対する初期対応から急性期対応のフローチャート」は包括的な内容を有するフローチャートであるが、これだけ多くの基礎心疾患を鑑別するには、豊富な知識と経験、そして日々のトレーニングが必要と思われる。
 近年、Structural heart diseaseにおけるインターベンション治療が広く行われるようになった。本邦ではASに対するTAVIが広く行われているが、 MRに対するTMVR等もあり、今後、技術やデバイスのさらなる発展によりインターベンション治療の安全性・確実性が向上していくことが期待される。当施設ではASに対するTAVIの適応は、原則として80歳以上で、ASに起因する症状を有し、手術ができない高リスク例に限定している。このため、合併症で入院期間が長引くこともありこの治療法のメリットが活かされない例もある。私見ではあるが、TAVIは低侵襲であることが最大の長所であり、今後は従来、手術適応と考えられたより若年層への適応拡大が望まれ、そのためには耐久性を考慮した新たなデバイスの開発が必要と考える。
 当施設で、20歳~30歳代の劇症型心筋炎の患者で2週間前後ECMOを装着したにもかかわらず、経過中QRS波形が消失し、救命できなかった数例を経験した。10数年前ではあるが、劇症型心筋炎の患者でECMO離脱後に心不全が改善せず、心臓移植待機中に感染症を契機に全身状態が悪化し亡くなられた例も経験している。このような例にDestination therapyが行えていればと思う。これらは近い将来にさらなる発展が期待される分野である。新しいデバイスにより治療法が変わり、重症患者の予後も改善されることは、非常に魅力的で大きな期待を寄せるところである。しかし、その一方で、新しいデバイスの普及には医療経済の観点も考慮する必要があると考える。
 急性心筋梗塞症で発症前の前兆を感じた時点で受診するよう勧める試みは、たしかに「言うは易く行うは難し」ではある。しかし、医療費の大きな負担は少なく、早期により確実な医療が受けられる可能性がある。そして結果的には医療費の軽減、健康寿命を延ばすことにつながる。医療が発展し、新たな薬剤やデバイスが開発され、その恩恵を受ける一方で、今一度"予防の重要性"を認識し直し、原点に立ち戻り、発症予防への積極的な取り組みも考えていくことが肝要である。
                               (木村一雄)

2018年9月号

 現在に繋がる心臓血管外科手術は、1944年のBlalockによる体肺短絡手術、1953年のGibbonによる人工心肺を用いた心房中隔欠損症閉鎖術を緒にして発展してきた。その後、1955年におけるDeBakeyによる解離性大動脈瘤に対する手術、1961年のStarrによる人工弁置換、1964年のKolesovによる内胸動脈‐左前下行枝バイパス術が行われ、順次、先天性心疾患、虚血性心疾患、弁膜症および胸部大動脈疾患という心臓血管外科の主要疾患の術式が確立されていった。わが国では欧米より大きく後れをとったが、1951年に動脈管結紮術、Brock手術、ファロー四徴症に対する体肺動脈短絡術、1952年に僧帽弁狭窄症に対する用指交連切開術が開始された。1956年に人工心肺を用いた開心術が複数施設で立て続けに成功して、世界の仲間入りを果たした。しかし、複雑な心内修復を行うことは極めて困難であった。雑誌「心臓」が1969年に創刊されて間もない1970年代には心筋保護液の研究が急速に進み、Hearse, Braimbridgeによってcold cardioplegiaの確立が行われた。わが国でも1980年代前半にはcardioplegiaが導入され、無血視野で確実な心内修復や置換手術を行うことが可能となったのである。
 その後、手術技術の進歩とともに人工心肺装置、心筋保護法、人工弁、人工血管、術後管理法が改良され、現在のように複雑な病態においても安定した優れた成績で治療が行えるようになった。心臓血管外科は常に循環器診療の新しい時代を切り拓いてきた。今や標準治療となっている冠動脈インターベンション、ペースメーカー装着、心房細動をはじめとした不整脈のカテーテル治療はいずれも心臓血管外科医の並々ならぬ努力の中から開発された術式に端を発している。ここ数年で急速な拡がりを見せつつあるTAVIやMitraClipも弁置換手術、Alfieri stitch法から生まれてきた。
 これからの心臓血管外科はどこに向かっていくのであろうか?50年後はどうなっているであろうか?想像することはこの上もなく楽しいが、おそらくわれわれの想像をはるかに超えた技術レベルに到達していることは間違いない。今号の心臓血管外科のFuture-topicとして4テーマを選んだが、その理由は明確である。虚血性心疾患、弁膜症、大動脈疾患、重症心不全治療のそれぞれの"近"未来像をここに集約したいとの思いから生まれた。各稿とも心臓血管外科の現在のみならず、無限大の近未来を感じさせてくれる優れた内容である。
 雑誌「心臓」は半世紀を経て、新たな時代に入った。心臓血管外科はかつての循環器内科との反目の時代からハートチームの時代へと確実に歩みを進めている。すでに新たな時代が到来する前兆であろう。
                           (小野 稔)

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