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月刊心臓

編集後記 (2009年)

2009年12月号

 今号のHeart Selectionは「心血管調節因子の基礎と臨床」である.診断法としてのBNPや治療薬としてのANPが現代の心臓病診療に与えたインパクトは計り知れない.
 BNPのように診断だけでなく重症度や治療効果の判定,予後予測にまでこれほど役立つbiomarkerは他の臓器でも類を見ないのではないだろうか.心臓病の診断領域に限って言えば,20世紀初頭の心臓カテーテル法の開発,20世紀後半の心臓超音波の開発にも匹敵する画期的な臨床上の発見であろう.1984年の松尾壽之博士,寒川賢治博士の発見に端を発する研究は新しい学体系である心血管内分泌代謝学へと展開し,基礎的には発生・分化や疾病の発症機転に及び,臨床的には新たな治療体系の確立へと進展しつつある.わが国で発見され,臨床応用まで育てた物質である.日本人として誠に誇らしいことである.セレンディピティという言葉がある.人が気がつかないことを発見する能力を意味する.お二人のANPファミリー発見に関する物語は,それぞれ本誌Meet the Historyで近いうちに紹介される予定である.今から楽しみである.
 特に今後を担う若い臨床医,研究者に読んでいただきたい.今後も臨床に直結する発見がわが国から発信されることを期待したい.
(磯部光章)

2009年11月号

 先日,有名な漫画家が崖で転落死したという報道があった.本人にとっては本当に不本意であったことと思う.心からご冥福を祈る.現場の映像を見るとまさに絶壁である.不謹慎かもしれないが,その映像をみて,動脈硬化に関する講演で私がよく話す崖のことを思い出した.すなわち,崖から落ちかけた人を救う医療と,崖に近づかないようにする医療の話である.われわれ病院で働く循環器科医は救急患者を見ることが多い.急性心筋梗塞や急性大動脈解離などの重篤な循環器救急疾患も大多数は救命できるようになった.私もそういった医療に生きがいを感じている.もちろん,崖から落ちかけている人を救い上げることは重要な医療である.その後の崖からできるだけ離れるようにさせることも重要な医療である.しかし,動脈硬化は一日にして成らず.崖に近づいてからでは遅いのである.生涯にわたって崖に近づかないようにすることがもっと大切である.そういった目で動脈硬化疾患の診療あるいは啓発にあたらなければならない.大げさだが,漫画家の死を無駄にしないよう,崖に近づかない予防医療の重要性をさらに強調してゆきたい.
(山科 章)

2009年10月号

 一見心臓病には関連がないように見える集団訴訟事件で気になっているものがある.原爆症訴訟と薬害肝炎訴訟である.
 原爆症とは原爆放射線に起因すると国が認定した傷病で,認定されると国から医療特別手当が支給される.これまで原爆症認定のキイは被曝線量を中心とした原爆放射線起因性の判断であったが,政府は相次ぐ裁判での敗訴を受けて,大幅に緩和した新基準により5疾患を定め,2008年4月から積極的な認定を開始した.その5疾患とは,悪性腫瘍,白血病,副甲状腺機能亢進症,放射線白内障(加齢性白内障を除く),放射線起因性が認められる心筋梗塞,である.なぜ心筋梗塞か,誰がこの心筋梗塞を診断できるのか.そのような報告は本誌「心臓」でも見たことはないし,あれば是非とも掲載したい.どうやって放射線起因性を示し,どうやって60年前の被爆との因果関係を示すことが出来るのであろうか.被爆者の心筋梗塞に対して放射線起因性心筋梗塞の診断書を拒否したら医療不信を招きかねない.全く不可解である.本来社会的問題であるべき被爆者救済の話に医学を持ち込んだことが間違いであり,医学的問題に司法や行政の判断を持ち込んだ迷惑な1例である.
 薬害肝炎訴訟は広く患者を救済する方向で話がまとまってきたが,その責任追求の点では,他の医療事故問題と同様に,retrospectiveな視点が強調され過ぎてはいまいか.ここでも被害者救済の話と責任追求の話は分けて論ずべきである.本来,新薬の承認と未知の副作用の危険性はトレードオフの関係にあり,危険性を強調し過ぎれば新薬承認の遅れ(drug lag)を助長することになりかねない.現在,薬害肝炎事件を検証し,再発防止のために医薬品行政のあり方を検討する委員会が立ち上がっており,中間報告を行ったが,適応の設定や適応外使用への取組みを強化することを勧めている.医学的問題に行政の判断が持ち込まれて,適応外使用などの点で診療現場に制限が増えることにならないか,注目する必要がある.
 医学的問題の医学的判断には,専門家集団(出来れば自立的な)の判断が尊重される日が早く来ることを願わずにはいられない.
(山口 徹)

2009年9月号

 先日,編集子が所属する日本心電学会と日本不整脈学会の合同学術集会が4日間にわたって京都で開催され,多くの「心臓」の読者も参加されたことと思う.通常は2日間ずつ別の時期に開催されてきたが,それぞれ設立から約四半世紀以上が経過し,80%以上の会員が両方の学会に所属していること,不整脈や心電図の研究が中心という活動内容が極めて近いことなどから,3年前に初めて合同学術集会が開催され,今回が2回目の合同集会であった.両学会の大会長およびそれぞれの教室の先生方の協同作業と綿密な準備により,よく練られた素晴らしいプログラムの合同集会で,参加者にとって大変有意義な会であった.まずは両会長ならびに関係の皆様に御礼のことばと拍手を送りたい.再来年にはまた3回目の合同学術集会が計画され,編集子も日本心電学会を担当させていただくことになっているが,今回の合同集会を大いに参考にしたいと思っている.
 ただ,理事会,評議員会,総会,編集委員会,その他の各種委員会などの会合をそれぞれの学会で別個に行う必要があった.そのため編集子を含む両学会の役員を兼ねている多くの先生方がそうであったことと思うが,これらの会合に次々と出席しなければならず,若い先生たちの一般講演やポスター展示などをほとんど聴講することができなかったことが唯一残念な点であった.
 両学会の設立の経緯や発展の歴史は多少異なるが,望むらくは合併して一つの学会になってほしいと思うのは小生ばかりではないであろう.企業同士の合併や結婚による新たな家庭の創造と同じで,1+1は2ではなく3にも4にもなるスケールメリットとシナジー効果が生まれることは間違いがない.機は熟したといってよい.相容れない面も多少はあるであろうが,お互いに譲り合いの心を持って高い次元での合併を目指したいものである.それがさらなる学問の発展をもたらすばかりでなく,学会本来の目的である社会貢献という観点からも広く受け入れられる方向性であると思う.
(加藤貴雄)

2009年8月号

 何年前になるか,PTCAを始めてやっと軌道に乗ったころのことであるが,川崎病の小児の冠動脈病変に対するPTCAを小児循環器の医師と手洗いしたことがある.当時から考えると大人のカテーテル治療も大きく進歩したが,小児のインターベンションもダイナミックに進歩している.本特集号では先天性心疾患だけでなく,不整脈に対するカテーテルアブレーションや心室同期療法まで掲載されている.
 ところで,このようなカテーテル治療の発達は米国を中心に,医師の発明工夫と企業の協力,そして政府のbackupによって作られてきた.そもそもシネアンギオのシステムはSonesがPhillips North Americaの協力のもとに開発したものだし,米国に移住した後のGrunzigのバルーンカテーテルの開発はUSCIなどのカテーテルメーカーとともにFDAの後押しが大きかったようだ.ロータブレーターを日本に導入したときは,BuckbinderとHeart Technology社の社長がやってきて,高速回転する粒ダイヤモンド付きのバーを舌に押し当てて,柔らかい組織は削れないと盛んに宣伝していったのを思い出す.この構図は今も変わらないが,わが国の医療界ではなかなかそのような産学協同,さらには官も巻き込んだ医療機器の開発が少なかった.最近では人工心臓や新しいステントなど日本発の開発が段々と進んできているようだ.しかしながら,やはり米国ほどダイナミックな産学そして官協同とはいかない.将来性のあるベンチャー企業を育てる経済の仕組みや国民性なども影響しているのだろうが,最近の米国発の経済界の激震を見ていると,リスクを抱えながらの投資社会もほどほどがいいのかなと思うのは保守的だろうか.
(代田浩之)

2009年7月号

 心臓外科の修練施設の集約化がいよいよ始まることになった.
 その概要は,今年から1年間の心臓外科の手術数が25例未満の施設は,次年度その施設は修練施設として認定を受けられない.すなわち新規に心臓血管外科専門医を取得する修練医は,その25例未満の施設で手術経験を積んでも,専門医申請時に経験数として算定されないことになった.このことは修練施設の集約化ではあるが,心臓外科の施設集約化をすすめるドライビングフォースとなる.とりあえず年間25例基準からスタートしたが,数年間この影響を多面的に検討して数値基準を引き上げることを検討している.現在の専門医制度をいかに改変・運営していくかは,どの学会も直面している大きな課題である.
(四津良平)

2009年6月号

 今月号の特集「カテーテルアブレーション」は1982年のThe New England Journal of Medicineに最初に掲載された画期的な論文1)に端を発し,25年後の現在では多くの施設でより安全に行われるようになった.小児でも通常は5歳前後から施行できるようになったし,成人先天性心疾患の入院理由の約半数は難治性の術後不整脈で,過去に施行された手術の縫合線に沿って焼灼することが多い.
 このような画期的な治療法の開発の裏には常に,周到な準備Preparationと用心深い考察力Speculationに加え,ひらめきInspirationと,勇気Braveryが必要だと思う.そして周りの研究者からの許諾Permission,それに患者本人からの協力するという受け入れAcceptanceと,患者自体にも挑戦Challengeするという意識が必要である.常に発見の裏にはそれを支えた立派な患者がいると思っている.しかし,患者-医師信頼関係が成立しにくい今,新しい治療法・手術法などの研究過程でのハザードは多く,メディアからの辛口コメントにも理路整然と答えられる心構えも必要であろう.Global Standardに惑わされ,臨床の場で絶好のチャンスを失うことも多くなる.チャンスはなかなかやってこないし,ピンチをチャンスに変えられる状況にはめったに遭遇できない."チャンスは準備ができている人にやって来る"とパスツール博士も言葉に残している.
 昨秋,ノーベル物理学賞を受賞された小林 誠教授は,偶然にも小・中学校の大先輩に当たる.小林教授は名古屋市立富士中学校の卒業時の校誌に「どんな小さい毛髪でも影を投げる」というゲーテの格言を書き残されたそうである.そして受賞対象となった研究に取り組んでおられたであろう1997年の中学校50周年記念誌には「多様性を尊重しよう」と寄稿されたそうだ.もう1人の益川敏英教授も偶然に高校の大先輩であったが,「アイデアは風呂上がりに浮かんできた」とさらっと会見した.そして「科学が楽しいと若い人に知ってほしい.受賞自体は大してうれしくないが,われわれの仕事がそれに役立つならうれしい」と答えておられた.発見は日常生活中,どこに,いつ現れるかは,なかなかわからない.日常診療のどこかに隠れているのは間違いない.それに気付くのが現役の間ならまだいいが,リタイアしてからでは悲しいだろう.
 良い発見には,よき環境,よき指導医,そして十分な研究費が必要だそうである.
 若い先生方には是非,"Wildな発想"を大事にしてほしいと願う.
(佐地 勉)

2009年5月号

 今回の5月号では,HEART's Selectionとして動脈瘤がテーマに取り上げられ,いろいろな切り口により検討された,非常に意義深い企画となった.また,Open HEARTではquality contorolという医療機関に必須のテーマについて木原教授にご寄稿いただいた.さらに,臨床研究では画像診断とデバイスの論文を掲載することができた.
 さて,それに加えて今回も8件の症例報告記事を掲載することができた.「心臓」では症例報告を積極的に掲載しているが,一方で昨今,英文のジャーナルでは症例報告を掲載しない方向を打ち出しているものが多い.現在の医学では大規模臨床試験の結果が重視され,それらのエビデンスに基づいた診療が強くすすめられている.すべての症例においてエビンデンスに基づいた診療ができればことは簡単であるが,そうはゆかないのが臨床である.例えば,たとえcommon
diseaseであっても複雑な合併症を有している場合も多く,必ずしもガイドラインに沿った治療はできない場合が多い.また,非常に稀な疾患では診療に関するエビデンスすら存在しない場合も多い.このような場合に最適の診療が行えるかどうかには,まず個々の医師の経験がものをいうが,1人の医師の経験にも限りがあり,その点を補ってくれるのが症例報告であると思う.自分がかつてこのような症例を経験したという記憶と同じように,誰かが地方会でこのような症例を発表していたなあという記憶が残っていることは結構ある.それをたどってゆくことによって,あるいはインターネットで文献検索等を行うことによって,今自分が悩んでいる症例と類似のケースに先人がどのように対応したかを学ぶことができる.
 学会の地方会は若い医師にとっては自身の発表の場であり,また専門医の点数を獲得するためにも必要である.自分の発表や教育講演のみしか居合わせないということも多いと思う.しかし,たまには朝から夕方まで地方会に出席してみてはどうだろうか? 同様に,本誌「心臓」に掲載される貴重な症例報告にも,ぜひじっくりと目をとおしてみてほしい.
(百村伸一)

2009年4月号

 新年度がスタートしました.病院には新しい研修医やスタッフが加わり,あるいはご自身が異動したり,多くの先生方が新鮮な気持ちで診療に取り組んでいることと思います.
 2007年のわが国の出生率は1.3人で,アメリカ(2.1人),フランス(2.0人),スウェーデン(1.9人)と比較しても先進国中最低でした.出生数は1990年に比べ2006年には約9%減りましたが,産婦人科医数は22%減少しました.今月号のHEART's Selectionは「心臓病をもった女性の妊娠と分娩」の特集です.わが国の妊産婦死亡率は出生10万あたり5人と世界最低水準ですが,心臓病を合併したハイリスクの分娩を引き受ける施設は,ごく限られているのが現状と思います.
 大野病院の医療訴訟は,全国の注目を集めたのでご存知の先生方が多いと思いますが,大野病院がどこにあるかを正確に知っている方は少ないのではないでしょうか.福島県立大野病院は福島県の浜通り(太平洋側)双葉郡大熊町にあります.大熊町はいわき市から北へ約50km,浜通りの中央に位置し,太平洋と阿武隈山系に囲まれた自然豊かな田園風景に恵まれた町です.東京電力の原子力発電所があります.裁判後,K先生は福島県内の他の病院で産婦人科医として勤務されていると聞きました.K先生の支援に尽力された福島県立医科大学医学部産科婦人科学講座S教授は,判決を見届け,3月で退官されました.4月から福島県立医科大学の産婦人科には,将来の県内の産科医療を担う4名の後期研修医が入局し,研修を開始しました.小児科には7名が入局しました.県立大野病院には内科の常勤医が赴任され,1名増となりました.今年度が地域医療再生の元年となることを願っています.
(竹石恭知)

2009年3月号

 当然のことながら学問の進歩にあわせて疾患概念は変わっていく.「心筋症」は本誌にも投稿される機会が多い疾患である.これだけ概念が大きく変わり続けている疾患も珍しいのではないか.筆者が初学者であったころは,うっ血型心筋症と肥大型心筋症が分類され,ほかに特殊な疾患として特発性肥大型大動脈弁下狭窄症があり,まとめて「特発性心筋症」とされていた.その後1996年のWHO/ISFC分類でHCM,DCM,RCM,ARVC,2次性心筋症という概念が提唱され,現在定着している.ところが,その後遺伝子学的な解析が進み,分類が一変してしまった.2006年のAHAの新分類では「特発性」という概念がなくなった.心筋症の原因はほぼ解明され,遺伝性,後天性,その混合で分類されるということである.不整脈疾患であるBrugada症候群やQT延長症候群も心筋症に包含された.心筋症の概念に対する大きなチャレンジである.同じ分子の異常がHCMにもDCMにもなり得る発見は目から鱗であった.
 一方,昨年のESCの分類は臨床に基づいて作られたとのただし書きのもと,「2次性心筋症」の概念をなくしている.従来の機能・形態学的分類が元になっているので受け入れやすいが,心アミロイドーシスがHCMとRCMの両方に分類されていたり,心Fabry病がHCMと同じジャンルに入っているなど混乱を招く要素が多い.本号でも症例報告されている左室緻密化障害は家族性で分類不能,たこつぼ心筋症は非家族性で分類不能となっている.批判をするのは簡単であるが,本邦でも早く整理をして見直さないと混乱は必至であろう.極めて複雑な領域であることと,病因解明の進歩がもたらす混乱でやむを得ざるところである.
 本誌には珍しい心筋症の症例報告が多いが,論文執筆に際しては新しい定義,分類も勘案して考察していただきたい.臨床医として,また研究者としてはこれだけの大きな変化や進歩を目の当たりに経験できることは喜ばしいことである.今後も眼を離すことができない.
(磯部光章)

2009年2月号

 2008年がもうすぐ終わろうとしている.本誌が出版されるのは2009年だが,2008年末versionとして書かせていただく.2008年はいくつかのテレビ番組をよく観た.大河ドラマ「篤姫」は年間を通じてだが,1月中旬から毎週土曜日の夜に6回連続で放映された「フルスイング」もすべてを観た.最近のテレビの予約録画機能は便利である.気に入った連続ものを見逃すことがない.「フルスイング」は伝説の打撃コーチ高畠導宏の生涯を描いたノンフィクション,門田隆将著「甲子園への遺言─伝説の打撃コーチ高畠導宏の生涯」をNHKがドラマ化したものである.ドラマも良かったが,小説「甲子園への遺言」も良かった.野球好きには一読を勧める.その中でスピーチによく使わせていただいた部分があるので,ここで紹介したい.高畠導宏はイチローをはじめ多くの一流選手を育てているが,一流選手の共通点は,「1.素直であること.2.好奇心旺盛であること.3.忍耐力があり,あきらめないこと.4.準備を怠らないこと.5.几帳面であること.6.気配りができること.7.夢をもち,目標を高く設定することができること.」の7つであるという.医学の道においても全く同じと思う.2009年は初心にもどり,この7つを思い浮かべながら,精進したいと思う.
(山科 章)

2009年1月号

 雑誌「心臓」がサイズも表紙も大きく変えて,新しい装いで登場して丸4年が経過した.今月号には8編が掲載され,ようやく投稿誌「心臓」の再生を実感できるようになってきた.昨年を振り返ってみると,基礎研究3編,臨床研究18編,症例報告65編を数え,月平均7.2編を掲載することができた.目標とする1号10編を今年中に達成したいものである.全面的なご支援を得ている日本循環器学会ならびに各地方会には深く感謝し,Advisory Board,Editorial Boardの先生方にも心より感謝申し上げたい.また演題推薦を頂いている研究会やSupplementとしてご利用いただいている研究会にも深く感謝申し上げる.
 著者がかかわっている,内科学会など38学会の支援で実施されている「診療行為に関連した死亡の調査分析モデル事業」も今年3月で4年が経過する.都立広尾病院事件に端を発した死因究明のための中立的専門機関構想は,5年計画のモデル事業の成果を踏まえて制度化を考えるスキームであったが,福島の大野病院事件で制度化が速まり,「医療安全調査委員会設置法案」が議論されるまでになった.大野病院の無罪判決に安心するだけでなく,これをバネに医療事故を刑事事件化させない制度作りを進めたいものだ.
 医師不足が取り上げられて久しいが,循環器内科医は減少していない.外科系医師,特に産婦人科医,外科医の減少は著しく,その原因には刑事訴追への恐れがあるといわれている.循環器領域も生死にかかわることが多く医療事故も少なくないが,循環器内科医は増加している.何故であろうか.循環器の魅力は何であろうか.昔に比べると診断,治療ともに格段に進歩し,ワクワクするような未知の領域は少なくなったと思うのだが.......そう思う私が歳をとったということであろうか.いずれにせよ,若い医師が安心して医療に専念できる環境を整えるよう努力しなければと思う年初めである.
(山口 徹)

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