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高血圧 Question 5

高血圧と心房細動の関係について教えてください

心房細動は日常診療において最も遭遇する機会が多い不整脈の一つで、本邦で100万人以上の方が罹患しています。原因が特にない孤発性も少なくありませんが、虚血性心疾患、心不全、非リウマチ性弁膜症、高血圧などの基礎疾患を認める症例も多くいます。その有病率は加齢とともに増加することが知られ、日本では80歳代では2~3%と報告されていています。

高血圧は慢性的な左心室への圧負荷を生じ左室充満圧の増大から、心房の拡大・圧負荷を生じます。その結果、心房筋のリモデリングが進むとともに、心房細動のトリガーとなる期外収縮などの出現頻度も増加します。

高血圧は心房細動の新規発症の危険因子といわれており、その相対危険度は1.4~2.1程度に相当します。これは心不全(6.1~17.5)、弁膜症(2.2~8.3)における相対危険度と比較すると値が低いものの、高血圧は日本人で3000~4000万人に認められる極めて高頻度な疾患であることから、高血圧患者において心房細動の可能性を想定し、自動血圧計の数字だけでなく、脈の乱れの有無の評価、心電図検査などで不整脈の検出を行う必要性があります。

表  Framingham 研究 1994年 (Benjamin EJ, Levy D et al. JAMA 1994;271:840-844.)
 

 心房細動発症の危険因子 多変量解析におけるオッズ比
男性 女性
 年齢 10歳毎 2.1 2.2
 喫煙 1.1 1.4
 糖尿病 1.4 1.6
 左室肥大(心電図にて) 1.4 1.3
 高血圧 1.5 1.4
 心筋梗塞 1.4 1.2
 うっ血性心不全 4.5 5.9

逆に心房細動の患者さんでどの程度、保有しているかという点ですが、欧米で過去に実施された主な心房細動に関する臨床試験においては、およそ半数は高血圧を保有しているとされており、心房細動をもつ患者さんでは多くの場合、血圧管理をあわせて行う必要性があります。

レニン・アンギオテンシン系拮抗薬(ACE阻害薬、アンギオテンシン受容体拮抗薬)投与による新規の心房細動抑制効果は証明されていませんが、降圧および心保護の観点からは積極的に投与されてよいと考えます。そのほか、カルシウム拮抗薬、β遮断薬、利尿薬など患者さんの状態にあわせて適宜調整し血圧および心房細動を管理することが肝要です。

最後に、心房細動がある場合、年間約5%の確率で脳梗塞(脳塞栓)を来しますが、心房細動における脳梗塞のリスクとしてよく用いられるのがCHADS2 スコアです。心不全、高血圧、年齢、糖尿病、脳梗塞の既往(これのみ2点)で2点以上では原則的に抗凝固、1点の場合には、ダビガトランまたはアビピサバンが推奨、ワーファリンまたはリバーロキサバンは考慮とされています。したがって高血圧がある心房細動症例では原則的に抗凝固が適応あるいは考慮されることとなり、抗凝固薬投与という観点からも注意が必要かと思います。

図 血栓塞栓症の発症に対するCHADS2の各要素の影響Olesen JB, BMJ 2011;342:d124
今井図.jpg

(2014年10月公開)

Only One Message

高血圧は心房細動発症自体および心房細動に関連する脳塞栓症のリスク因子である。 心房細動の患者において高血圧を合併している場合、十分な降圧管理、血栓対策を行うことが肝要である。

回答:今井 靖

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