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不整脈 Question 17

流出路起源の心室期外収縮はどういうものですか

流出路起源心室期外収縮・心室頻拍は、日常臨床で最も遭遇する機会の多い不整脈の一つと思われます。のように下方軸を示し、カテーテルアブレーションを施行した症例での検討から、その起源は右室、左室、およびそれぞれの房室弁輪部や肺動脈内、大動脈冠尖などに存在することが知られています。

図 右室流出路起源特発性心室頻拍の一例
加藤律図.jpg


 流出路に心室期外収縮が多い理由は大血管と心筋との移行部であり構造上心収縮の影響を受けやすく、また発生学的に流出路は他の部位の心室筋とは異なることなどが原因と推測されています(不整脈学;井上博、村川裕二編, 南江堂 P322~325)。

予後に関しては、様々な論文が報告されていますが、61人の右室流出路起源心室期外収縮を有する患者の平均15年のフォローアップを行った研究(J Am Coll Cardiol 2001;38:364-70)によると、6 人で死亡例がみられたものの心臓突然死はなく、一般的には予後良好な疾患と考えられます。しかし8/11人(73%)で、MRIに異常を認めたとされ、不整脈源性右室心筋症(ARVC)など基礎心疾患を有する症例での不整脈との鑑別が重要になります。

またカテーテルアブレーションを施行した症例では、しばしばアブレーション後に左室駆出率が改善することがあり、このメカニズムに関しては頻脈誘発性心筋症などと同様のリモデリングの改善にあると考えられています。

治療方針としては、まず基礎疾患のチェックが重要と考えられますが、基礎疾患が無い場合、前述のように一般的には予後良好と考えられていますので、単発のみで自覚症状がなく心機能の低下を伴わないような例ではフォローアップのみで可能と考えられます。

 しかし1日総数は2万発を超えている場合は有意に心機能低下が認められることが報告(Heart 2009;95:1230–1237.)され、症状とともに心機能も経過観察が必要と思われます。有症候例では薬物療法を考慮します。

この不整脈の多くはカテコラミン依存性であることからβ遮断作用を有する薬剤が有効でβ遮断薬とプロパフェノンが第一選択とされています。また、本不整脈は遅延後脱分極(DAD)が関与するトリガードアクティビティを機序とすることが多いためCa電流を抑制する目的でCa拮抗剤も選択されます。

これらの薬剤で抑制できない場合はslowまたはintermediate kineticsのNaチャンネル遮断薬が推奨されています。なお、流出路起源心室期外収縮を伴う基礎心疾患として前述のARVCのほかにBrugada症候群があげられますので、特にNaチャンネル遮断薬を処方する前にはBrugada症候群を除外する必要があります。また治療成績が良好なことから、薬物抵抗例や根治の希望がある場合はカテーテルアブレーションのよい適応になると考えられます。

Only One Message

流出路起源心室期外収縮は一般的に予後良好ですが、1日総数2万発を超えている場合は心機能低下に注意が必要

回答:加藤 律史

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