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診療のヒント100 メッセージはひとつだけ

その他 Question 2

胸痛の原因として食道が原因となるものはありますか

胸痛の原因は多岐にわたります。胸痛を起こす主な臓器は、心臓•大血管、肺、胃食道、筋骨格系、皮膚などがあります。プライマリケアの場では、心筋梗塞、大動脈解離、肺塞栓、緊張性気胸などの致命的疾患の除外が第一となりますが、クリニックや一般診療所では、これらの緊急胸痛よりも非緊急胸痛患者の割合が多くなります。

心臓由来以外の胸痛を、まとめてNCCP(non-cardiac chest pain)と呼びますが、NCCPの中で最も頻度が高いのは、胃食道逆流症(gastro-esophageal reflex disease: GERD)や食道運動障害を含む、食道疾患です。欧米ではNCCPの4割がGERDであったとの報告があります。

胸痛の原因として食道疾患を考えるとき、上部消化管内視鏡で食道粘膜障害が確認されればGERDの診断ができます。食道粘膜障害が確認できない場合にも、非びらん性胃食道逆流症(non-erosive reflex disease: NERD)と呼ばれるタイプのGERDや、胃酸逆流の無い食道運動障害は、胸痛の原因となり得ます。このようなケースでは専門施設で食道pHモニタリングや、食道内圧測定検査を行うことが考慮されます()。

図 心臓由来以外の胸痛
金森図.jpg


内視鏡が使えない施設においては、日本消化器学会ガイドラインでは、問診からGERDを疑えば初期診断的治療としてプロトンポンプインヒビター(PPI)を投与することを可能としており、PPIが奏効する胸痛はGERDの可能性が高いとされています。

血管拡張薬のニトログリセリンが有効な胸痛は、冠動脈疾患の可能性を示唆します。しかし、食道アカラシアを含む食道運動障害の中には、ニトログリセリンによる平滑筋の弛緩で、症状が緩和してしまうことがあります。ニトログリセリンが有効な胸痛患者で、狭心症や冠攣縮狭心症が否定された患者では、食道疾患も鑑別疾患となります。

患者のQOLを損なう食道由来の慢性胸部症状に対して、早期診断と早期加療が望まれます。
 

(2014年10月公開)

Only One Message

心臓由来以外の胸痛の原因は、食道に由来するものが最多である。

回答:金森 健太

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