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心不全 Question 13

低ナトリウム血症を認めたとき、まず考えるべきことはなんですか

低ナトリウム血症(低Na血症)とは、血清ナトリウム濃度が135mEq/L未満の状態と定義されています。このような血液検査結果に遭遇した際にまず考えるべきこと(≒早急に対応すべきこと)は、症状の有無および体重の増減をはじめとする身体所見の異常を探すことではないでしょうか。

症状がある場合は、早めの水分調節とNa補正が必要となってきます。低Na血症の症状は、その発症速度とNa低下の程度にもよりますが、一般的には血清Na濃度が120-130mEq/Lで軽度の疲労感がみられ、120mEq/L以下では頭痛や嘔吐、食欲不振、精神症状が加わり、110mEq/Lまで低下すると昏睡や痙攣等が起きてきます。

精神症状や痙攣がみられるような重篤な低Na血症では急速なNaの補正が必要となりますが、その治療方法については関連の治療マニュアルなどをご確認下さい。なお、急速なNaの補正の際は中心橋脱髄症を引き起こす恐れがあるため注意を要します(クリニックの外来で症状のある低Na血症の患者さんをみたら救急・ICU設備のある病院との病診連携を活用しましょう)。

一方、無症状で軽症であれば、その多くは早急な治療を必要としないため、まずはその病態を確認することが大切です。高脂血症や高タンパク血症の時(偽性低Na血症)、あるいは高血糖時以外はほとんどの低Na血症は低浸透圧血症(細胞内液増加)を意味しています。

一般的に、低Na血症は水の過剰かNaの喪失によるものであり、細胞外液の量と尿中Na濃度をみれば病態の判別がしやすくなります。細胞外液量により増加、正常、減少の3つに分けられますが、その判断は容易ではありません(かかりつけの患者さんであれば体重の変化で細胞外液量の増減が推定できるかもしれません)。

細胞外液量が増加しているタイプは、体内総Na量の増加より体内総水分量の増加のほうが上回っている状態で心不全、肝硬変、ネフローゼ症候群、腎不全などの浮腫をきたす疾患でみられます。治療はNaと水分の摂取を制限し利尿薬を使用します。

細胞外液量が正常なタイプとしては、抗利尿ホルモン分泌異常症候群(SIADH) が最も多い原因です。抗不整脈薬であるアミオダロンの副作用としても知られています。治療の原則は水分制限です。

細胞外液量が減少しているタイプは、腎性または腎外性にNaが喪失した場合にみられ、尿中Na濃度により腎外性(<10mEq/L)、腎性(>20mEq/L)に鑑別できます。腎外性Na喪失は嘔吐や下痢の時に、腎性Na喪失は利尿薬使用時にみられます。


参考資料
・ワシントン マニュアル第9版(メディカル・サイエンス・インターナショナル)
・内科学(文光堂)

Only One Message

普段、循環器外来の多くは高齢者で、そういう患者さんは循環器系薬をはじめ、骨粗しょう症薬、抗うつ薬、制酸薬等々内服薬の種類も豊富でかつ基礎疾患の病態も多彩であり『低Na血症』も意識の彼方に埋没する毎日です。

回答:有川 拓男

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