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心不全 Question 1

外来で利尿薬は使い道があるでしょうか。そんなに重症の心不全の患者さんは診ないのですが

利尿薬には、以前より用いられているナトリウム排泄型と最近用いられるようになったいわゆる水利尿薬といわれるバソプレシン受容体拮抗薬があります。ナトリウム排泄型利尿薬は、作用機序の違いから、サイアザイド系利尿薬、ループ利尿薬、カリウム保持性利尿薬に分類されます。本稿では、慢性心不全薬物療法で最も頻用されているループ利尿薬の外来での使い方について概説します。

ループ利尿薬はヘンレ係蹄上行脚のNa+-K+-2Cl-共輸送体を阻害することによりNa+の再吸収を抑制します。サイアザイド系利尿薬と比較して、利尿効果は強いですが、降圧効果は弱いです。したがって、ループ利尿薬は腎機能障害のためサイアザイド系利尿薬が使えない時に降圧剤として使用されることもありますが、外来では主として慢性心不全に対して用いられます。

日本循環器学会の慢性心不全治療ガイドライン(2010年改訂版)1)では、うっ血症状がある時の利尿薬の使用がClass Iとされています。持続的に体液量が増加している状況下では、消化管うっ血を来たして、経口心不全治療薬の吸収を阻害し、治療効果を減弱させます。さらに、腎うっ血により腎機能のさらなる増悪を来たします。したがって、うっ血症状がある時は十分量の利尿薬を用いて体液量をコントロールする必要があります。ループ利尿薬のみで十分な利尿が得られない時は、サイアザイド系利尿薬の併用を試みてもよいとされています。

しかし近年、ループ利尿薬の使用が慢性心不全の予後悪化因子であるとする報告があります2)。さらに、ループ利尿薬の使用量が多いほど予後が悪いことも示されています3)

ループ利尿薬使用が予後を悪化させる機序として、ループ利尿薬使用によるレニン-アンジオテンシン-アルドステロン系(RAAS)の活性化、交感神経系の活性化、腎機能の悪化などが考えられています。したがって、慢性心不全患者に薬物治療を行う場合には、可能な限りRAAS系抑制薬やβ遮断薬を用い、それでもなおうっ血症状をコントロールできない時にループ利尿薬を用いるべきとされています。

さらに、ループ利尿薬の中でも、短時間作用型のフロセミドより、長時間作用型でレニン分泌刺激の弱いアゾセミドやトラセミドのほうが、神経体液性因子や交感神経系の活性化抑制の観点から、慢性心不全の安定期の使用には望ましいとされています。

ループ利尿薬の副作用として、低Na血症、低K血症、低Cl血症などの電解質異常があります。特に低K血症を来すと、ジギタリス中毒を誘発しやすいばかりでなく、重症心室性不整脈を誘発することもあり、重大な問題となります。したがって、利尿薬使用中は常に電解質の異常に注意する必要があります。

また、利尿薬の使用により過剰な体液量の減少を来すと脱水となります。すると心拍出量は減少して組織低灌流状態となり、低血圧、腎機能増悪などを認めます。特に高齢者では夏期など容易に脱水に陥る傾向があるため、利尿薬の投与を安易に漫然と続けることがないよう、常に体液量のコントロール状態に注意して利尿薬の用量調節を行う必要があります。

参考文献
1) 日本循環器学会:慢性心不全治療ガイドライン(2010年改訂版)(http://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2010_matsuzaki_m.pdf)
2) Ahmed A, Husain A, Love TE, et al: Heart failure, chronic diuretic use, and increase in mortality and hospitalization: an observational study using propensity score methods. Eur Heart J 27: 1431-1439, 2006
3) Eshaghian S, Horwich TB, Fonarow GC: Relation of loop diuretic dose to mortality in advanced heart failure. Am J Cardiol 97: 1759-1764, 2006

Only One Message

慢性心不全に対してループ利尿薬を使用する時は、可能な限りRAAS系抑制薬やβ遮断薬を用いた上で、体液量のコントロール状態に注意して用量調節を行います。

回答:高橋 智弘

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