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不整脈 Question 22

危険な洞不全症候群と放置してよい徐脈はどうやって見分けますか

洞不全症候群は古くからの分類としてはRubenstein分類がある。
I型  洞徐脈。50bpm以下。
II型 洞停止または洞房ブロック 洞結節からの刺激が突然休んだり、心房筋への伝導がブロックされた病態
III型 徐脈頻脈症候群 心房細動、心房粗動、発作性上室性頻拍などの頻拍と合併したもので頻拍が停止するときに徐脈となりAdams-Stokes症候群をきたすこともある。

洞不全症候群は症状があるかないかが最も問題となる。症状がない洞不全症候群は基本的には放置してよい。その原因を明らかにしたければ十分な問診が必要であり、運動歴などがあればスポーツ心臓である可能性があり、内服薬や甲状腺疾患によるホルモン異常に原因がある可能性もある。

洞不全症候群は基本的には生命予後には影響を与えず、QOLにのみ影響を与える疾患である(文献1)。古い論文しかなく昔はVVIペースメーカと比較したデータしかないが大きな差はないと考えてよい。DAVIDトライアルなどから心室ペーシングが予後を悪くする可能性があるので、現在のMVPやSafeRなどの心室ペーシングを抑制するモードで比較すると予後が変わる可能性はあるが大きな差は少ないと思われる。

基本的には危険な洞不全症候群とは症状がある洞不全症候群である。

症状が年齢のためか徐脈のためかわからない患者ではどうすればよいだろうか?
I型の症状は脈が遅いため息切れででることが多く、II型、III型はめまい、ふらつき、意識消失などででることが多い。

I型の患者で通常の問診では症状がなければ運動負荷心電図をかけて十分なHR増加が得られるか評価することが望ましい。十分なHR増加が得られず、患者は年によるものと思っている息切れの症状があるなら、ペースメーカにより改善する可能性がある。または一度プレタールやβ刺激剤、抗コリン薬が使用できる患者ならそれらを使用して息切れの改善が認められるか評価してみればよい。これらで改善して副作用が出ないならそのまま薬物治療を続ける選択肢もある。

II型の患者では通常は洞徐脈でないことが多いので、めまいふらつきなどの症状がホルター心電図やモニター心電図と一致するか確認できれば望ましい。それが確認できないのであれば一度心臓電気生理検査をおこない、心房のオーバードライブを行って症状と洞停止が一致するか評価する方法がある。ループレコーダーにて症状と徐脈の一致を見る方法もある。しかしどちらも希望されなければ判断は難しい。

III型の患者の場合には同じような心拍数、ポーズでもペースメーカの適応はより早めにくることが多い。洞結節は外から刺激が入ると抑制される性質をもっている。この性質ゆえに心房のオーバードライブにて洞結節機能回復時間を測定することができ、洞不全を評価することができる。頻拍性不整脈があるということはこの洞結節への外からの刺激が頻拍性不整脈によって入っている形となり、症状が出やすい。ホルター心電図やモニター心電図でつかまればよいが、つかまらない時にはループレコーダーを使用したり、もしくはふらつきの症状がペースメーカにて改善しない可能性があることを十分説明してペースメーカをいれるしかない。

ガイドラインをみると日本循環器学会の不整脈の非薬物治療ガイドライン(2011年改訂版;2014年6月20日、日本循環器学会HP閲覧、最新情報はhttp://www.j-circ.or.jp/guideline/をご確認下さい)では症状のない洞不全症候群患者にペースメーカの適応はなく、ACC/AHAのガイドラインではClass IIbで持続的に起きている時の心拍数が40以下の時に考慮となっている。

参考文献
1.Shaw, D.B., R.R. Holman, and J.I. Gowers, Survival in sinoatrial disorder (sick-sinus syndrome). Br Med J, 1980. 280(6208): p. 139-41.

Only One Message

危険な洞不全症候群は症状がある徐脈です。症状が判断つかなければ検査でチェックを行ってください。

回答:三谷 治夫

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