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不整脈 Question 21

左脚ブロックが新たに出現した患者さんにはどう対処すればいいですか

まず左脚ブロックがどういった状態、疾患であるかということを考えてみよう。心臓の刺激の伝わり方は洞結節で刺激が起こり、これが右心房内を伝わり、房室結節、ヒス束、脚、プルキンエ線維と伝わって、心室に至る。この脚のうち左脚が傷害された場合が左脚ブロックである。右脚ブロックとは逆に右脚が障害された状態である。

具体的な心電図はV1、V2で小さいR波と幅広く深いS波。V5、V6でQ波が欠如しており、QRS軸は陽性で、Rは幅広く分裂しており、QRS時間が0.12秒以上あるものを完全左脚ブロックといい、それ未満のものを不完全左脚ブロックという。具体的な心電図は下のに示す形となる。

三谷図.jpg左脚ブロックは器質的疾患が隠れている場合が多いとされており、心事故の発生率も高い(文献1)。具体的には虚血性心疾患、拡張型や肥大型心筋症などの心筋症、高血圧性心疾患などである。これが新規に出現したということはこれらのことが起こった、またはもともとその患者さんに病態として存在していてその病状が進行しついに左脚ブロックにいたったと考えることができる。

新たに左脚ブロックを認めた患者さんを診察した時にはまず問診を十分に行うことが重要である。それにより緊急疾患を除外することである。胸痛があって新規の左脚ブロックを認めたら、これは虚血発作である可能性を否定できず、緊急心臓カテーテル検査の適応を考慮しなければならない。

まったく症状がなく健診で発見されたものや、近医から紹介されたものは前述の疾患のチェックを行う形になる。具体的には心臓超音波検査、レントゲン、採血(BNPなど)、運動負荷心電図、ホルター心電図、心筋シンチ、冠動脈CTなどである。

□しかしいきなりすべてを行う必要はない。読者の所属する医療機関の種類(一般開業医、循環器標榜開業医、一般病院一般内科外来、一般病院循環器外来など)によっても行わなければいけない検査は異なってくる。最低限行わなければいけない検査は超音波検査くらいであろう。

左脚ブロックでは運動負荷心電図で通常のST変化の陽性基準は使用できない。間欠性のブロックを疑い、運動負荷で誘発されないかをみることが重要である。心筋シンチの場合も疑陽性が左脚ブロックでは認められるので、心筋障害を判断するためや大きな虚血がないかチェックするために使用すべきである。

また心不全症状があり、心機能低下を認めるなら心臓再同期療法を考慮すべきである。

参考文献
1.Fahy, G.J., et al., Natural history of isolated bundle branch block. Am J Cardiol, 1996. 77(14): p. 1185-90.

Only One Message

左脚ブロックが本当に新しいものかを確認しましょう。症状を詳しく問診することが重要です。急性冠症候群は決して見逃さないでください。

回答:三谷 治夫

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