日本心臓財団HOME > 日本心臓財団の活動 > 循環器最新情報 > 診療のヒント100 > 不整脈に関するQ >緊急搬送が必要な心電図所見パターンを教えてください

循環器最新情報 日本心臓財団は医療に携わる皆様に実地診療に役立つ循環器最新情報を配信しています。是非お役立てください。

診療のヒント100 メッセージはひとつだけ

不整脈 Question 19

緊急搬送が必要な心電図所見パターンを教えてください

緊急性が高い不整脈の代表は、心室頻拍・心室細動と高度の徐脈性不整脈です。ホルター心電図施行中に心停止を来した132症例を解析した報告では、73%が心室頻拍または心室細動で、27%が徐脈性不整脈でした(Watanabe E et al. Heart Rhythm 2014; 11: 1418)。

心室頻拍の心電図はQRS幅が広いのが特徴です。心室頻拍はその起源や頻拍回路により様々な波形を呈しますが(図1)、いずれもQRS幅は0.12秒以上です。QRS幅が0.12秒以上の頻拍を見た場合、まずは心室頻拍を疑って緊急搬送する必要があります。
 

図1 起源や回路により様々な波形を呈する心室頻拍
和田図1.jpg
 

波形が1心拍毎に変化していくタイプの心室頻拍を、多形性心室頻拍と言います。QT延長症候群ではtorsade de pointes(TdP)という、基線を軸にして捻れるようなQRS波を呈する心室頻拍が起こります(図2)。TdPは自然停止と再発を繰り返すことが多いのですが、持続すると心室細動に移行するため非常に危険です。TdP発症の危険因子として、女性、低カリウム血症、徐脈、QTを延長させる薬剤の併用が重要です。このような症例で0.55秒以上にQT(QTc)時間が延長し、心室性期外収縮や心室頻拍が見られた際は緊急搬送が必要です。

図2 徐脈からのQT延長に伴って発症したTdP

和田図2.jpg
 

徐脈性不整脈では、完全房室ブロックが最も危険で緊急ペーシングを要することも多いため、緊急搬送が必要です。洞不全症候群は、緊急性は低いことが多いのですが、5秒以上の心停止、覚醒時心拍数40/分未満では、失神や心不全を来す恐れがあるため、早期のペースメーカー植え込み適応の決定のため、搬送が望まれます。

QRS幅が0.12秒未満の頻拍のほとんどは上室性頻拍であるため、緊急性は低いです。しかし、150/分以上の頻拍が持続する場合は、低血圧や心不全の恐れがあるため搬送が望ましいです。特に心房粗動が心室に1:1で伝導した場合は、心拍数が200/分以上となり危険です。心房細動の場合でも頻脈が持続する場合は、専門医へ搬送してよいと思われます。
先述した報告では、ホルター心電図施行中に心室頻拍や心室細動により心停止を来した症例の多くが、発症前にST変化を呈していました。急性心筋梗塞によって突然死する原因として、致死性不整脈が多くを占めると考えられています。これまで心疾患の既往がない人に心室頻拍や心室細動、完全房室ブロックが生じた時は、心筋虚血の関与を疑う必要があります。これらの致死性不整脈を見た場合はST変化を見逃さないことが重要で、虚血が疑われた場合は躊躇なく緊急搬送すべきです。

Only One Message

QRS幅の広い頻拍と、完全房室ブロックは全例緊急搬送を考慮して下さい。判断に迷った場合は、直接、循環器内科医にコンサルトすることが有用です。

回答:和田 暢

キーワード検索

検索ボックスに調べたい言葉を入力し、検索ボタンをクリックすると検索結果が表示されます。

ご寄付のお願い