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不整脈 Question 13

慢性の心房細動患者さんでは厳格に心拍数をコントロールすべきでしょうか

心房細動の患者さんでは、
①脳梗塞のリスクが高いためワーファリンまたは新規抗凝固薬による抗凝固療法を検討する 
②心房細動自体を抑制し洞調律を維持する(リズムコントール)、あるいは心房細動のまま心室応答を調整し心拍数を下げる(レートコントロール)を行う という大きな2つの治療の柱があります。

慢性心房細動では、基本的には抗凝固療法と心拍数調整(レートコントロール)を行うことが治療の骨子ですが、心拍数をどの程度調整すればよいのか、実際の現場では心拍数を100/分未満になるように管理していることが多いように思います。

しかしガイドラインなどの記述をみますと、たとえば、ACC/AHA/ESC 2006ガイドラインでは,症状抑制・合併症の回避のため心拍数60~80bpm程度に厳格に管理するようにと推奨されておりました。

どの程度の心拍数に管理すべきかを示した臨床試験があります。RACE II 研究と呼ばれるものですが(Isabelle C. Van Gelder, et al. N Engl J Med. 2010;362:1363-7)、80歳以下で罹病歴12ヵ月以上の慢性心房細動で,安静時平均心拍数>80/分,経口抗凝固薬投与例614例を対象としています。厳格なレートコントロール(目標心拍数<80/分)と緩やかなレートコントロール(目標心拍数<110/分)の二群に分け、後者の前者に対する非劣性を示すために実施された前向きランダム化比較試験です。両群とも目標心拍数への到達のためβ遮断薬,Ca拮抗薬,ジゴキシンが単独または併用投与されています(厳格的レートコントロール群の方が使用薬剤が有意に多かった)。

3年間の追跡における一次エンドポイントの発生は厳格的レートコントロール群で14.9%、緩やかなレートコントロール群で12.9%、群間差は−2.0%(90%信頼区間−7.6~3.5)となり、厳格的レートコントロールに対して、緩やかなレートコントロールが少なくとも劣らないことが示されています。

レートコントロールを行う際の薬剤の使用法についてですが、日本循環器学会ガイドラインによりますと、心機能が保たれている場合にはレートコントロールはβ遮断薬または非ジヒドロピリジン系カルシウム拮抗薬、虚血心・不全心・肥大心がある場合にはカルシウム拮抗薬は避けるべきであり、ジギタリス、少量のβ遮断薬(内服、あるいは超速効型静注薬ランジオロール)などを用いることを推奨しています。

Only One Message

患者さんの自覚症状を優先しつつ、少なくとも心拍数が110/分を超えないように心拍数を調整すると良い。

回答:今井 靖

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