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不整脈 Question 10

心房細動でよく聞くAFFIRM試験とはどういう試験ですか

心房細動は日常診療の中で遭遇することが多い不整脈です。高齢者になるほどその発症頻度は高くなるので、今後高齢化が進むと患者数は2010年の約80万人から、20年後の2030年 には100万人を突破すると予想されています。

心房細動に対する治療方針には、①レートコントロール(心拍数調節)と②リズムコントロール(洞調律維持)の2つがあります。レートコントロールとは心房細動調律のままで心拍数をコントロールし、速くなりすぎないようにする治療法です。β遮断薬、Ca拮抗薬、ジキタリス製剤などが使用されます。これにより動悸感が軽減して楽になります。リズムコントロールとは心房細動を停止させてリズムそのものをコントロールする治療法です。心房細動を停止および抑制するには抗不整脈薬、カテーテルアブレーション、電気ショックを使用します。

心房細動は,発症後7日以内に洞調律に復するものを発作性心房細動(paroxysmal Af)、発症後7日を超えて心房細動が持続するものを持続性心房細動(persistent Af)、電気的あるいは薬理学的に除細動不能なものを永続性心房細動(permanent Af)の3つに分類されています。

このうち、永続性心房細動の治療については、レートコントロールおよび抗凝固薬療法を行うことがすでに確立されています。一方、発作性および持続性心房細動の治療に関しては、抗不整脈薬やカテーテルアブレーション治療が洞調律維持のためにしばしば選択されるものの洞調律維持に難渋することがあります。このため、患者背景を考慮して症例ごとに、レートコントロールかリズムコントロールかを決める必要があります。

AFFIRM(Atrial Fibrillation Follow-up Investigation of Rhythm Management)試験(Wyse DG, et al. N Engl J Med 2002;347:1825-33)とは、6時間以上持続する心房細動患者(4000例)を「レートコントロール」と「リズムコントロール」の2群に分けて経過をみた大規模臨床試験です。結果は、この2群間で総死亡や心血管イベントの発生に有意差がありませんでした。

つまり、副作用が多い抗不整脈薬を用いて洞調律維持を目指すよりも,むしろ心拍数調節と抗凝固薬療法で経過を観察することで十分であることを示唆するものでした。さらに,本邦で行われた発作性心房細動患者823例を対象としたJ-RHYTHM試験においても同様の結果でした。

心房細動調律よりも洞調律の方が本来の生理的な調律であり、より望ましい調律であることは誰も否定しないはずです。このため、これらの試験結果が出るまでは多くの先生が心房細動に対して積極的に抗不整脈薬を処方して洞調律を維持しようとしていました。しかし、これらの結果を踏まえて、心房細動の治療は塞栓リスクに応じた抗凝固薬療法を行うことが一番大切であると認識されるようになりました。

では、なぜレートコントロールとリズムコントロールの間で生命予後に差がなかったのでしょうか。次のような理由が挙げられています。
①洞調律を維持すること自体が難しい。
②心房細動が完全に抑制できているかどうかを評価することが難しい(無症候性心房細動が存在する)。このため、主治医が症状のない心房細動の存在を見落として抗凝固薬療法を中断してしまう危険性がある。
③抗不整脈薬による副作用が起こりやすい。

これまでの心房細動に対する治療概念を根本から変えるきっかけとなったAFFIRM試験は、循環器領域における数ある大規模臨床試験の中でも、世の中に最もインパクトを与えた試験であったと言えます。

Only One Message

心房細動は、塞栓リスクに準じた抗凝固薬療法を適切に行っていれば、無理に洞調律維持をする必要はない。

回答:篠原 徹二

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