日本心臓財団HOME > メディアワークショップ > 第2回 「心筋梗塞は予知できるか」 > 「臨床症状からみる急性心筋梗塞の予知/不安定狭心症からの対策」 高山 守正 氏

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第2回 「心筋梗塞は予知できるか」

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高山氏は、心筋梗塞の成因や主な症状について概説し、「前兆を特定するのは難しいが、危険と判断できる人が明らかにいる。症状に気づいたら、近所の目を気にせずに、早急に救急車を呼んでほしい」と早期治療の重要性を訴えた。また、心筋梗塞による死亡のうち、約3分の1が病院搬送前であることを示し、「病院外での死亡をいかに減らすかが今後の課題であり、そのためには社会全体の意識を高めることが重要である」と市民啓発の必要性を指摘した。
 

心筋梗塞の成因と前兆

急性心筋梗塞は、日本では年間約10万人がを発症し、うち、3~4万人が死亡している。代表的な症状は、胸が痛い、胸が締めつけられる、重苦しいなどの胸痛であるが、こうした症状が少しでも起こった場合は、いわゆる前兆となるのだろうか。高山氏は、自身が事務局を勤める東京都CCU(心疾患集中治療室)ネットワーク(東京都CCU連絡協議会)の調査結果(表)を示しながら、「前駆症状は多くみられるが、胸に関する症状が現れない場合もあり、前兆は必ずしも特定できない」とし、予測の難しさを指摘した。調査では、心筋梗塞の起こる3日前からの症状を調べており、胸が締め付けられる、苦しいなどの「狭心痛」のみの割合は37%、呼吸困難・息切れ、冷や汗、吐き気・嘔吐などのそれ以外の症状も併発していた割合は51%であった。つまり、全体の約半数は何らかの前兆があったことになるが、その他の症状のみで胸痛がないケースも11%となっていた。
高山氏は「予測は難しいが、危険と判断できる人はいる」とし、心筋梗塞の成因について概説した。心筋梗塞の原因は冠動脈の閉塞であるが、閉塞は段階的に進行していく。まず、冠動脈内に変性したLDLコレステロール(いわゆる悪玉コレステロール)が溜まり、粥腫(プラーク)と呼ばれる固まりをつくる。それが何らかの原因で破れ、プラークを覆うように血栓が集まってより大きな固まりとなり、完全に閉塞した場合は心筋梗塞となる。
一方、血管が完全に閉塞していない場合は不安定狭心症となる。狭心症の主な症状は心筋梗塞と同様であるが、症状は軽い。血管は完全には詰まっていないが、血流が乏しいため、運動で酸素需要が増えても、血液の供給が増えるわけではないので、一過性の胸痛や不快感があらわれる。胸痛の回数が増えたり、ちょっとした動きや軽い運動で新たに現れたりした場合や、ニトログリセリンが効かなくなったという場合は不安定化したと考えられ、心筋梗塞に進行する可能性が高い。高山氏は「こうした症状が出たら、すぐに医療機関を受診し、心電図を取って欲しい」と述べ、早期受診を訴えた。特に20分以上続く胸痛は危険信号であり、早急に救急車を呼ぶ必要があるという。
また、近年、内科の専門医であれば、心電図だけでなく血液検査で心筋のマーカーを調べることにより、心筋の障害の程度を判断することができるようになった。胸痛発症後に採取した血中のトロポニンTが、3時間後に陽性であった場合、陰性であった場合に比べて約2.4倍死亡率が高くなるという。

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近所の目を気にせずに救急車を

また、高山氏は、急性心筋梗塞治療の最重要点として(1)可及的早期に救急隊搬送を依頼、(2)CCUへの早期入院、(3)閉塞冠動脈の再開通(発症後6時間以内、できれば4時間以内)、(4)合併症の防止・早期リハビリ、(5)冠危険因子の特定と是正の5点を挙げた。特に(1)については、つい、近所の目を気にして救急車を呼ぶことをためらい、自分の車あるいはタクシーでと考えがちだが、高山氏は「自家用車やタクシーでは、途中、心室細動(心臓マヒ)が起こった時に対処ができない。救急車の要請は突然死の防止である」と述べた。
高山氏が事務局として活動している、東京都CCUネットワークは、昨年7月より組織再編成を行い、現在都内54の施設(334床)が参加、東京消防庁、東京都医師会、東京都健康局が協力している。発症してすぐ専門病院に入れるかどうかが重要であり、患者をできるだけ早く収容できるシステム、常時各病院の空きベッド状況の把握など組織間の連携を行っている。

病院搬送前に3分の1が死亡

2_2_zu2.jpg急性心筋梗塞による死亡率の推移を東京CCUネットワークでの統計でみると、1982年の調査開始時には約20%であったが、80年代の中ごろから新たな治療法-血栓溶解薬、PTCA冠動脈形成術、バルーンやステントによる治療法-が導入されたことにより、約10%まで減少した。しかし、90年代に入ってから現在までは横ばいとなっている。
一方、東京CCUネットワークで取り扱った患者のうち、病院到着後の治療により生存した割合は全体の92%、死亡に至った割合は8%である。過去の報告を元に推計患者数を加えると、急性心筋梗塞の患者のうち、3分の1が病院到着前に死亡していると考えられている(図1)。また、病院外での死亡の内訳をみると、1位が睡眠中、2位が食事中、3位は安静中となっている。こうした病院到着前の患者に対する対応は、日本ではまだ十分に行われていないのが実情であり、今後はいかに防ぐかが重要となる。

2_2_zu3.jpg心臓は血流が20分停止すると心筋が壊死を起しはじめる。壊死は3~4時間以内に血流を復活させればある程度止められるが、6時間を超えると元には戻らなくなり、伸縮できない繊維の固まりとなる。また、心室細動が起きた場合、心肺蘇生を1分ではじめ、除細動を5分後に行った場合には35%が生存するが、除細動開始が10分後に遅れると生存率は25%となる。高山氏は「心筋梗塞発症直後にまず必要なのは、119番。次いで、迅速な心肺蘇生と除細動(図2)」とし、発症直後の早期対応の必要性を訴えた。
講演の最後に高山氏は「社会は市民のCCU」と述べ、市民全体が意識を高めることが急性心筋梗塞から市民を守る道に繋がる点を強調した。

 

【目次】

開会挨拶
「臨床症状からみる急性心筋梗塞の予知/不安定狭心症からの対策」高山 守正 氏
「hs-CRPなどの炎症マーカーを利用した心筋梗塞の予知」川名 正敏 氏
「心筋梗塞は予知できるか?マルチスライスCTによる検討?」佐藤 裕一 氏
質疑応答
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