日本心臓財団HOME > メディアワークショップ > 第10回日本心臓財団メディアワークショップ「特定健診・特定保健指導と循環器疾患」 > 発言「賛成の立場から」 岡山 明 氏

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第10回日本心臓財団メディアワークショップ「特定健診・特定保健指導と循環器疾患」

特定健診・特定保健指導が抱える問題点の一つに、個別相談や集団健康教室などの指導がもたらす効果が不明瞭であることが挙げられる。岡山氏は、厚生労働省が行った「国保ヘルスアップ事業」の成功例を取り上げ、重点的な保健指導が血圧をはじめとした各種臨床指標の改善と医療費の抑制をもたらすことを示し、特定健診と特定保健指導の成功に期待を寄せた。
 

健診一辺倒からの脱却

特定健診・特定保健指導を総論的に俯瞰すると、健診一辺倒の制度から脱却し、保健指導の重要性が強調されたことが目新しい。また、保険者へ情報を集中させることで、保険者が被保険者に対して健康づくりを促すための工夫が可能になることも評価に値する。
 実施の成果によって保険者に対する後期高齢者医療制度への支援金を変動させるという仕組みは、先にも指摘があったように賛否が分かれる点である。しかし、経済原理に基づいたインセンティブが与えられていることで、先駆的な保険者の取り組みが他の保険者にも波及しやすくなり、好影響をもたらすようになると考える。

ただし各論的に見れば、血清クレアチニン測定が健診の項目から除外されたことは残念である。また、腹囲径が基準値に達しない場合には、糖代謝異常、脂質代謝異常、血圧異常を呈していても保健指導の「積極的支援」の対象に該当しないなど、スクリーニング基準に問題は残る。今後、柔軟性を持った制度に進化させるためにもさらなる検討が必要であろう。
 

重点的な支援で血圧等を有意に改善できる

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先ほど「保健指導による介入を行う意義は乏しい」との意見があったので、反論したい。

岩手県矢巾町で2002~2004年に行われた「国保ヘルスアップ事業 個別健康支援プログラム」の実施結果では、参加者を重点支援群と通常支援群の2群に分けて個別相談、集団健康教室、通信健康支援を6カ月間行った。その結果、通常支援群では有意な改善は見られなかったが、重点支援群で収縮期血圧(図1)、総コレステロール(図1)、BMIが実施前と比較して実施後に有意に低下した。重点支援群で見られた改善効果は24カ月後も維持され、同プログラムで実施された重点支援の有効性が示された。

ただし、同プログラムの健康支援では一定の期間ごとにフォローアップを行っており、これは特定保健指導では実施されない。定期的なフォローアップがなければ改善効果を長期に維持することは難しく、特定保健指導では指導頻度が不十分かもしれないという懸念は残る。
 

保険者独自の事業展開が医療費抑制につながる

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矢巾町の個別健康支援プログラムではさらに医療費分析を行い、指導前と指導後の年間外来総医療費の変化量を重点支援群と通常支援群で比較した。その結果、63歳未満のサブグループでは、重点支援群で1,765点の減少、通常支援群で4,279点の増加を認め、有意な差には至らなかったものの、重点支援群と通常支援群では6,045点の開きがあった(図2)。重点支援群で純減していることは注目に値する。一方、63歳以上のサブグループでは重点支援群で3,497点の増加、通常支援群で7,899点の増加と、こちらも有意な差には至らなかったものの、外来総医療費4,402点の抑制に成功している(図2)。ただし、個別健康支援プログラムの参加者には、高血圧の治療を受けている患者も含まれていることを断っておきたい。

特定健診・特定保健指導では、疾患の治療中の患者は保健指導の対象とならないため、矢巾町の個別健康支援プログラムの結果をそのまま当てはめることはできない。しかし同プログラムでは各種検査値も改善され、医療費も減少したことから、特定健診・特定保健指導でも同様の成果を期待したい。


【目次】
開会挨拶・座長挨拶
総論「特定健診・特定保健指導――新制度の概要」
講演「特定健診・特定保健指導と循環器疾患:賛成の立場に立って」
講演「特定健診・特定保健指導と循環器疾患:反対の立場に立って」
発言「反対の立場から」
発言「賛成の立場から」
総合討論
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