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メディアワークショップ

第15回「眠りとは?睡眠と循環器疾患」〜こわいのは睡眠時無呼吸だけではない〜

 

CBTIが保険適応となるには、認知度の向上が不可欠


山口 講演をお聞きして、不眠症に対して認知行動療法(CBTI)が重要であることがよくわかりましたが、わが国ではCBTIがまだ保険適応とされていません。これは、なぜなのでしょうか。
井上 睡眠医学において、この10年の研究で得られたもっとも大きな成果は認知行動療法の有用性だと思います。うつ病では認知行動療法が保険適応となったのが2010年で、これが承認されるまでにもかなり時間がかかりました。不眠症に対しては、われわれがCBTIを始めたのが2006年頃で、わが国での認知度も高まりつつありますが、まだ歴史が浅く、十分認知されていません。このことが、まだ適応を得ていないもっとも大きな原因であると思います。じつはわが国は睡眠薬大国で、WHOから睡眠薬の過剰使用、多剤併用についての問題点を指摘されています。このような状況からも、CBTIが非常に重要な治療法であることは疑いのないことであり、保険適応がなされるようCBTIの認知度を高めていかなくてはならないと考えています。

不眠症の患者が昼寝をするとしたら午後3時までの20~30分間に


会場 私は、「昼寝をすれば、夜に眠れなくても睡眠時間が確保される」と考え、睡眠不足の患者さんに昼寝を推奨しているのですが、これはどうなのでしょうか。
井上 不眠症の患者さんでは、夜間睡眠の質が悪いので、それを補うために昼寝をするという習慣になってしまいがちです。昼寝をするとしたら、一般的には午後3時までに20~30分間がよいとされています。この程度であれば夜間の睡眠に悪影響を及ぼさず、身体的な疲労もとれます。これ以上昼寝を長くしたり、不規則に昼寝をしたりすると、夜間睡眠に悪影響を及ぼすので、昼寝はこれ以上すべきではないということが定説になっています。
会場 20~30分間の昼寝をすることで、リフレッシュして仕事などに取り組めることもある、ということですね。
井上 はい。例えばこういう研究があります。昼寝を計画的に30分間だけしてもらい、さらにその前にコーヒーを少し飲んでもらう。そうすると、昼寝から目覚めたあたりで、昼寝による疲労回復とカフェインによる覚醒作用が相乗効果となって、活動ができるという研究です。いずれにせよ、昼寝をとるなら、この程度にとどめるのがよいことを強調したいと思います。

やせ型の睡眠時無呼吸症候群は頭蓋顔面形態に原因


山口 わが国では、やせ型の人にも睡眠時無呼吸症候群(SAS)が多いと聞いています。肥満の人にSASがあり、これが原因となり高脂血症や高血圧につながるのは理解できますが、やせ型の人にもSASが多いということは、やはりこういった疾患を発症することが多いのでしょうか。
塩見 詳細なデータはありませんが、やせ型のSASは、やせていることが原因ではなくて、頭蓋顔面形態、とくに上顎と下顎が小さいことが原因となっていると思われます。このことは他の疾患、例えばやせ型での糖尿病にも関連していると考えられており、やせ型の糖尿病患者を調べてみると、SASを合併している患者が数多くいることがわかってきました。したがって、SASなどの睡眠障害(睡眠不足を含む)は糖尿病の重要な背景因子の1つであることが、最近は認識されつつあります。
山口 先生方のお話を聞いて、睡眠不足が病的な状態を引き起こし、それによりさらに睡眠不足を悪化させるという悪循環につながることから、睡眠を正常化することが重要であるとわかりました。本日は睡眠と循環器疾患の関連という、なかなか聞く機会のないテーマについて認識を深めることができ、有意義な議論ができたと思います。ありがとうございました。


【目次】

開会挨拶
「睡眠のメカニズムと病態」井上 雄一 氏
「眠りと循環器疾患」塩見 利明 氏
質疑応答
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