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第13回日本心臓財団メディアワークショップ「心房細動治療はこう変わる!」

心房細動の治療は薬物療法が基本とされているが、十分な効果が得られない場合には、カテーテルアブレーションなどの非薬物療法を考慮する必要がある。本講演で山根氏は、近年目覚ましい発展を遂げているカテーテルアブレーションの位置づけについて概説した。
 

安全性に優れた洞調律維持療法が望まれる

表1 生存と関連する因子(AFFIRM試験)
13-2-2.gif心房細動の治療は、洞調律の維持を目的としたリズムコントロールと、心房細動をそのままにして心拍数の調節を目的としたレートコントロールに大別される。海外の複数の臨床試験から、心房細動の薬物治療においてリズムコントロールとレートコントロールのどちらを行っても患者の生命予後に有意な差はないと報告されており、治療にあたっては患者の状態を総合的に判断し、いずれかを選択する。

 一方、AFFIRM試験のサブ解析などからは、洞調律の維持が生命予後の改善に寄与すること、抗不整脈薬を用いたリズムコントロールにより死亡率が上昇することが報告されており(表1)、「確実な洞調律の維持が可能で、かつ安全性に優れた治療」が望まれている。
 

肺静脈隔離術をベースに発展しているカテーテルアブレーション

図1 肺静脈内心房筋の存在様式
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図2 肺静脈隔離術(模式図)
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カテーテルアブレーションは、洞調律を維持する根治療法であり、体内に挿入したカテーテルの先端から高周波電流を流し、心筋を焼灼することで不整脈の発生源を遮断する。
 カテーテルアブレーションの発展の契機となったのが、1998年のHaïssaguerre氏らの報告である(Haïssaguerre M, et al. N Engl J Med 1998; 339: 659-666)。同氏らは、肺静脈と左心房との境界部分に存在する静脈内心筋(図1)から発生する異常興奮が心房細動の引き金になることを発見し、肺静脈を標的としたカテーテルアブレーションを行い良好な治療成績を得た。
 以降、肺静脈内に発生する異常興奮の発現部をピンポイントで焼灼する肺静脈内巣状アブレーションが試みられた。しかし、本治療法では再発が多かったことから、肺静脈の入口部の焼灼により肺静脈内心筋と左房心筋を電気的に隔離する肺静脈隔離術(図2)へと手技が改良された。さらに、肺静脈と周囲の肺静脈前庭部に及ぶ広範囲の焼灼が可能な拡大肺静脈隔離術も行われるようになり、治療成績および安全性の向上が図られている。
 

発作性心房細動を中心にカテーテルアブレーションの適応を考慮

図3 発作性心房細動に対するカテーテルアブレーションの治療成績
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東京慈恵会医科大学での治療成績を見ると、発作性心房細動に対して、平均1.3回のカテーテルアブレーションで心房細動の消失率は約9割となっている(図3)。「不整脈の非薬物治療ガイドライン(2006年改訂版)」でも、クラスIIa(有益であるという意見が多いもの)に「症状またはQOLの低下を伴う薬物治療(抗不整脈薬による治療)抵抗性または副作用のため薬物が使用不能な発作性心房細動」が適応として記載されている。
 一方、肺静脈隔離術による慢性心房細動の消失率は6割程度にとどまる。これは、慢性心房細動では心房の拡大や変形に伴って病変部が心房全体に及ぶためである。しかし、心房内の異常電位部を探索して焼灼する連続性分裂心房電位(CFAE)アブレーションを併用することで治療成績の向上が認められている。
 実際の臨床では、年齢、症状の強さ、心房細動のタイプ(発作性か慢性か)などを複合的に判断してカテーテルアブレーションの適応を決定する必要がある。山根氏は、「発作性に対する治療のスタートは薬物療法が基本となるが、効果が不十分な場合や、患者が治療薬の継続服用を望まない場合はカテーテルアブレーションを考慮する。慢性に対しては、慢性化して間もない場合や若年の患者では考慮するが、慢性化が長期(4年以上)に及ぶ場合や高齢者は適応とならないことが多い」との考えを示している。

最後に山根氏は、「心房細動には、発作性から始まり、再発を繰り返して持続性、慢性へと進行していく。そのため、治療にあたっては慢性への移行を防ぐことが重要であり、薬物療法とカテーテルアブレーションを適正に使い分けることが必要」と述べ、講演を締めくくった。


【目次】
開会挨拶・座長挨拶
「心房細動の薬物治療」
「カテーテルアブレーションの役割と現状」
質疑応答
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