日本心臓財団HOME > メディアワークショップ > 第11回日本心臓財団メディアワークショップ「CKDと循環器疾患」 > 「心血管リスクと今後のCKD対策」―循環器内科の立場から 筒井 裕之 氏

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第11回日本心臓財団メディアワークショップ「CKDと循環器疾患」

最近のさまざまな研究結果から、心筋梗塞などの心血管病の発症を防ぐには、慢性腎臓病(CKD)対策が大きな鍵を握っていることがわかってきた。筒井氏は、心血管リスクとしてのCKDの重要性を訴え、具体的なCKD予防策、治療法について解説した。
 

血管障害を引き起こす危険因子

「人は血管とともに老いる」といわれるとおり、血管障害はさまざまな臓器―特に脳・心・腎―に悪影響を及ぼすことが知られている。血管の障害から動脈硬化が進展して心血管病を発症し、最終的には死につながる危険性がある。血管障害を引き起こす危険因子には、高血圧、糖尿病、脂質異常症、喫煙、肥満などがあり、危険因子が重積すると心血管リスクがさらに高まる。最近、この危険因子の中に新たにCKDが加わった。
 

心血管リスクとしてのCKD

図1.CKDの捉え方の変遷
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図2.心血管病および腎臓病による死亡リスクの比較:米国一般住民
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図3.心血管リスクとしてのCKD:心血管病既往の有無別比較
11-2-4.gifCKDと心血管病との関係についての考え方は、従来と現在では大きく異なる。図1に示すとおり、従来はCKDが進行して末期腎不全になると、合併症として心血管病が発症すると考えられていた。しかし現在は、高血圧や糖尿病、メタボリックシンドロームなどの心血管リスクがあるとCKDが高率に認められることがわかっており、CKDの存在で心血管リスクはさらに高まり、心血管病や末期腎不全につながっていくという考え方に変わっている。

また、一般住民を対象にした研究から、CKD〔糸球体濾過量(GFR)60mL/min/1.73m2未満、あるいは蛋白尿陽性〕が認められると死亡リスクは数倍に上昇し、死因としては腎臓病よりも心血管病の方がはるかに多いことが示されている(図2)。同時に、CKDは心血管病既往患者の予後を増悪させるリスクでもあることが知られている(図3)。このように、循環器内科の診療でもCKDは無視できない重要な疾患だが、医療現場のCKDに対する意識は、まだ高くないというのが現状である。
 

CKD対策

図4.ステージ別CKD治療戦略
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CKDは、高血圧、糖尿病、肥満、メタボリックシンドロームなどの「生活習慣病」と密接に関係している。いわば、独立したリスクというよりは、これら生活習慣病と相まって悪循環を起こし、その結果、心血管病の発症リスクを増大させる。

昨年出版された「CKD診療ガイド」では、病期(ステージ)ごとのCKDの治療法が示されており(図4)、ステージ1、2の軽症の段階では、かかりつけ医の診療が望ましいとしている。CKDは確かに腎機能の異常ではあるが、その上流には高血圧などの生活習慣病が存在することから、生活習慣の改善は治療の重要な柱となる。広い意味でCKDも生活習慣病のひとつと捉えることができ、その予防および治療法としては、禁煙、肥満の改善、食事療法、適度な運動などがあげられる。同時に、血圧、血糖値、LDLコレステロールなどの数値が異常な場合は、それらの適切な管理が必要である。

なかでも、高血圧がある場合は、特に厳格な降圧が求められる。日本高血圧学会の「高血圧治療ガイドライン2004」では、収縮期血圧140mmHg、拡張期血圧90mmHg未満を降圧の目標値としているが、CKD合併高血圧患者の場合は心血管リスクがより高まるため、130/80mmHg未満を降圧目標値としている。蛋白尿1g/日以上の場合はさらに高リスクになるため、125/75mmHg未満と、より低い目標値が推奨されている。降圧薬は腎保護および心血管保護作用を有するレニン・アンジオテンシン系抑制薬(ACE阻害薬、ARB)が用いられる。ただし、これらの薬剤は一時的にGFR低下やクレアチニン値上昇を引き起こすことがあるため、医師による定期的な観察が必要になる。

いずれにしても、腎臓の病気だから腎臓専門医に任せておけばいい、という時代ではなくなった。今後のCKD予防・治療に対するアプローチのひとつとして、循環器疾患からCKDをみることは重要である。


【目次】
開会挨拶・座長挨拶
「CKDとは?その定義とわが国のCKD対策」?腎臓内科の立場から
「心血管リスクと今後のCKD対策」―循環器内科の立場から
質疑応答
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