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心筋炎・心筋症 Question 4

どんな患者さんで感染性心内膜炎を考慮すべきですか

感染性心内膜炎は多彩な臨床像を呈するため、今も昔も診断の難しい疾患です。さらに、その院内死亡率は15~22%と高いため、早期診断・早期治療が大変重要といえます。診断には血液培養での起因菌の証明と心エコーなどでの疣腫や膿瘍の証明が基本となりますが、そもそもこの疾患が念頭になければこれらの検査をするに至らないでしょう。感染性心内膜炎の診断では、とにかくその可能性を疑うことが重要です。

では、どのような症例で感染性心内膜炎発症のリスクが高いのでしょうか?
一般的に正常な弁の内膜には細菌が定着することはできず、感染性心内膜炎では何らかの傷害を受けた内膜に細菌がコロニー形成をすると言われています。

弁膜症や先天性心疾患患者はその最たるもので、逆流ジェットやシャント血流により内膜の傷害を引き起こすため、感染性心内膜炎のリスクが高くなります。実際に感染性心内膜炎症例の50~75%で弁膜症を有していると報告されており、弁膜症の有無は重要な情報です。

また既に弁膜症に対して手術治療を行われた症例も高リスクとなります。人工弁は感染性心内膜炎を発症しやすいだけでなく、発症した場合の予後は不良であるため特に注意が必要です。

慢性リウマチ性心疾患、弁の加齢性変化、糖尿病、後天性免疫不全症候群を有する症例や、人工透析患者、薬物常用者なども感染性心内膜炎発症リスクが高いことが知られています。その他、敗血症・菌血症はもちろん、抜歯治療など一過性の菌血症を生じる医療行為も感染性心内膜炎の発症リスクです。

ただし、上記に挙げたような危険因子が明らかでない症例であっても、感染性心内膜炎を発症する可能性はあります。全ての患者で一度は感染性心内膜炎を疑って、症状や身体所見を確認したいものです。

実際に感染性心内膜炎の患者では、どのような症状や身体所見が見られるのでしょうか。最も多い症状は発熱で、全体の80%程度に認めます。Duke診断基準においても、小基準に38.0℃以上の発熱が挙げられていますが、高齢者や亜急性心内膜炎症例では微熱であったり、全く発熱を認めない場合もあり注意が必要です。

発熱の他、心雑音も80~85%と多くの症例で認める非常に重要な所見です。新規に出現した心雑音(48%)もしくは既知の心雑音の増悪(20%)は感染性心内膜炎を疑う重要な所見ですので、身体診察で聴診を欠かさないようにしたいものです。

感染性心内膜炎で比較的特徴的な身体所見としては、爪下線状出血(8%)、Janeway発疹(5%)、Roth斑(5%)、眼球結膜出血(5%)が挙げられます。いずれも出現頻度は高くありませんが、出現した際には感染性心内膜炎を強く疑うものです。その他、血尿(25%)、脾腫(11%)などの非特異的な所見も見られることがあります。

全身における種々の塞栓症を見た時も、塞栓源として一度は感染性心内膜炎を疑ってください。感染性心内膜炎の30-40%では脳神経系の合併症(脳塞栓、感染性脳動脈瘤や動脈炎による脳出血など)を呈し、頭部MRIでは無症候性脳塞栓も含めると80%近くの症例で何らかの異常を認めると報告されています。

これらの患者背景および症状・身体所見などから感染性心内膜炎を疑った場合は、血液培養による細菌検査および心エコーによる画像的評価が必要です。日本循環器学会のガイドラインでは、抗菌薬を48時間以上中止した状態で1回2セット、8時間毎に計3回の血液培養を行うこととされています。心エコーはまず経胸壁心エコーを施行し、観察が不十分であったり、診断確定もしくは診断除外に至らなかったりした場合は、経食道心エコーも検討します。

前述した頻回の血液培養や心エコー検査は、全ての発熱患者でルーチンに行われるわけではありません。したがって、感染性心内膜炎の見逃しを減らし、また早期に診断するためには、患者背景・症状・身体所見などから感染性心内膜炎の可能性がある症例をピックアップし損ねないことが大切です。

参考文献
・N Engl J Med 2013;368:1425-33
・Lancet 2012;379:965–75
・Am Fam Physician 2012;85(10):981-86
・日本循環器学会 感染性心内膜炎の予防と治療に関するガイドライン(2008年改訂版)

 

(2014年10月公開)

Only One Message

感染性心内膜炎の診断は、まずその可能性を疑うことから始まる。

回答:加藤 武史

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