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第8回日本心臓財団メディアワークショップ「動脈硬化を診る」

脚の血管の動脈硬化を診る
――医師による閉塞性動脈硬化症(ASO)のスクリーニングが重要

会場 脚の血管の動脈硬化を診る、ということについて日本や海外の現状を教えてください。


山科 アメリカにおいても、キャンペーンを行うなど熱心に取り組んでいる先生はいますが、日本と同様に注目度は低いとのことです。しかし、閉塞性動脈硬化症(ASO)の潜在患者数は予想以上に多いと想定されますので、やはり決して軽視できません。足関節/上腕血圧比(ABI)が0.9 以下であればASOが疑われますが、日本における通院中の糖尿病患者1,000万人のうち8~10%が0.9以下であるという報告があります。また、間歇性跛行もASOスクリーニングのきっかけとなりますが、「歩くと足が痛くなるのは年のせい」と考えている患者さんが多く、自分から訴えることは少ないので、医師が注意して尋ねるようにしなければなりません。


杉本 私自身の経験では、間歇性跛行患者はASOよりも脊柱管狭窄症が多いように感じます。


山科 残念ながら正確な統計データを持っていないため、実際にどちらが多いかは分かりません。杉本先生のおっしゃるように脊柱管狭窄症のほうが多いかもしれません。ただ、現在は間歇性跛行そのものが見逃されていることが問題です。日本の間歇性跛行の潜在患者数は推計400 万人と言われていますが、実際に治療を受けているのは10万人程度ですので、やはり調べてみる必要はあると思います。


スタチン、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬による動脈硬化抑制効果の検討

杉本 スタチンは高脂血症治療薬ですが、動脈硬化抑制効果はあるのでしょうか。


代田 スタチンについては、軽度~中等度の高脂血症患者を対象としたMEGA Studyという日本の大規模臨床試験において、LDLコレステロール値の低下率が18%と低いにも関わらず、冠動脈疾患発症率を33%と著明に抑制することが示されました。これまでにも指摘されていましたが、この結果からも、スタチンにはコレステロール低下作用のほかに、抗炎症作用や抗酸化作用(内皮機能改善)などといった動脈硬化抑制につながる作用があることが示唆されます。


杉本 凝血系の働きをもつアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬に関して、動脈硬化抑制効果は検討されているのでしょうか。


代田 検討されています。動物実験では、現在のACE阻害薬やアンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)は、動脈硬化の進展を抑制することがはっきり示されています。また、大規模臨床試験においても心筋梗塞の発症抑制効果が報告されていますが、一方で、必ずしもそうではないという報告があることも事実です。ただ、動脈硬化の進展プロセスにおいて、レニン・アンジオテンシン系が非常に大きな役割を果たしていることは多くの研究者によって明らかにされているため、欧米ではアスピリンとACE阻害薬、およびスタチン、これがいわば3種の神器ととらえられています。


薬剤溶出ステント(DES)の有用性と課題

会場 薬剤溶出ステント(DES)の薬効持続期間や、その後の再狭窄への処置について教えてください。


代田 現在、日本で用いられているDESから放出される薬剤は、約3カ月後にはほぼ消失すると言われています。また、DES施行例を3年間追跡した結果、再狭窄率は非常に低かったという報告もありました。つまり、再狭窄の要因となる治療直後の炎症や細胞の増殖能を早期に抑制することができれば、その後の再狭窄も抑制できると考えられています。

DES施行後の再狭窄に対する治療法に関しては、まだ議論されているところですが、現在はこれまでと同様に冠動脈インターベンション(PCI)を行っています。


小川(座長) ご来場いただいた山口徹先生、ステントの専門家としてご意見を伺わせてください。


山口 DESは再狭窄率を顕著に抑制する一方で、薬の細胞増殖抑制作用が効き過ぎて、内膜が形成されずステントが長期間むき出しのままとなっている人も多いことが分かってきました。このため、たとえば施行後1年経って、服用していた抗血小板薬を検診など何らかの理由で一時休薬した1週間後に突然血栓が生じる、という遅発性血栓症が指摘されています。このような血栓の発生頻度は、1万人に1~2人と低いものの、大きな問題となっています。

現在は、再狭窄率を抑制しつつ、より早く内膜が形成されるようなDESの登場が望まれています。


検査対象を絞り込むためのガイドラインが必要

――スクリーニングはより負担(侵襲)のない方法で

会場 不安定プラークを検出するための血管内超音波(IVUS)によって、不安定プラークが破綻してしまうリスクはどれくらいありますか。


代田 それは以前IVUSが開発された時に懸念されていた点です。まとまったでは報告では大きな合併症は0.5%未満とされていますが、カテーテルが極めて細くなったこともあり実際に問題となる合併症はほとんどありません。もちろんIVUSは負担(侵襲)がある検査ですので、本来は出切る限り侵襲なく不安定プラークを検出することが大事です。


山科 検査による侵襲という問題は、私も大変重要なことだと思います。本日は画像検査の有用性についてお話をしましたが、一方で、放射線被曝や、造影剤による腎臓への影響、あるいは、アナフィラキシー・ショックといった問題もあるためです。

話は変わりますが、たとえば、東京女子医大には1万人の糖尿病患者さんがいるとのことですが、1万人の人に毎年1回CT検査を行うことは、時間やスタッフ数の点からも実質不可能です。しかし、脈波伝播速度(PWV)やABIは5分で測定できますし、身体への負担もありません。限られた資源の中で、上手に検査を行っていくことが大事ですので、検査とその対象に関するしっかりとしたガイドラインを作成する必要があると考えます。


小川 最近は総合検診で、陽電子という放射性物質を用いたPET検査を行ったところ心筋虚血がみつかった、あるいは、CT検査によって不安定プラークが確認された、として病院に紹介されてくる患者さんがたくさんいます。もちろん無症状で、なかなか異常が確認されない。そういう人へ本当に冠動脈造影を適用すべきかでしょうか。


山科 われわれの施設では、まず運動負荷心電図検査などを行い、心臓に負荷がかかったときに狭窄に伴う虚血が起こるかどうかを確認します。何も異常が確認されなかった場合は、数年の間に心筋梗塞などが生じる可能性は低いので、心臓カテーテル検査は行いません。代わりに、禁煙や運動などの生活指導をして経過観察となります。やはり、患者への負担はできる限り抑えたいと思います。


代田 山科先生のおっしゃる通りだと思います。予防医学的な見地から申しますと、診断の対象が発病前の多数の人たちであることを考慮し、スクリーニングや初期の診断においては侵襲のない検査がよいでしょう。


【目次】
開会挨拶・座長挨拶
「検査からみる動脈硬化──画像検査と血圧脈波検査」
「冠動脈疾患の治療──最新の冠動脈インターベンション(PCI)と動脈硬化の抑制を中心に」
討議・質疑応答
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