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疾患別解説

右冠動脈左室瘻の手術選択

日本心臓財団に寄せられたご相談

num.7982

1歳、 女性: 右冠動脈左室瘻

生後まもなく右冠動脈左室瘻と診断されました。現在ワーファリンを服用しています。
現在の主治医より、「心臓が大きくなっていることや心臓に負荷をかけると不整脈が出ることから、早急に治療をした方がよい。手術となると心臓をとめなければならないので負担の少ないカテーテルの治療を7月にする。リスクとしてはコイルが外れたときに左室の方に飛んでしまうと全身に回ってしまい、脳でとまると脳梗塞ということになる。また、コイルをすり抜けるときに血の成分が破壊されるので血尿がでることもあるがすぐにおさまる」との説明を受けました。
以前、通院していた病院では、「ほとんどの場合、余分な血管は発達しないので大きくなるにつれて心臓の負担は小さくなる」と言われていましたが、その可能性はないのでしょうか。
カテーテルか開胸手術かしか選択肢はないのでしょうか。手術だと心臓を止めなければならないので体の負担が大きいと聞きましたが、それは手術時に負担が大きいということなのか、長期的な目でみても負担となってしまうのかわかりません。カテーテルもコイルが外れてしまうことがあると聞いて恐怖心が強くあります。また、子どもの心臓にコイルという人工物を入れることで何か起きないでしょうか。将来、出産に影響はありますでしょうか。
日本心臓財団からの回答
基本的にこの病気の問題になる点(合併症)は、
1,心臓に負担がかかって心不全を起こすことがある(不整脈を伴うばあいもあります)、
2,拡張した冠動脈に血液の塊(血栓)が出来ることがある、
3,冠動脈は、心臓の筋肉に血液、酸素を供給していますが、バイパス路が出来ているので、これに支障があって心臓の筋肉に十分な血液を供給できなくなっていることがある。という3つの点です。
冠動脈瘻には、いろいろなタイプ、形、などがあります。しかし、上の3つの合併症のどれかがある場合、あるいは、将来、合併症を起こしてくる可能性が高い場合に、カテーテルないし手術治療を必要とします。
しかし、多くの場合は、治療を必要としません、あるいは成長するまでみていることが可能です。
 
さて、ご相談のお子さんは、
2に関しては、ワーファリンという薬で、血栓ができないようにしています。
3に関しては、シンチグラムで異常が無いので、現在は、否定できます。
 
<今治療するべきかどうか>に関してですが、
 1の心不全があるかどうか、という点がポイントです。心臓が大きい、不整脈が出るなどは、それを疑わせますが、体重増加の程度、ミルクののみ方、汗をかきやすいかなどの心不全の症状はありますか?
こういったことがあれば、心不全と考えます。また、エコー検査などでの、左心室の大きさなども参考になります。心不全の薬物治療はしていないので、症状がなく、左心室も余り大きくないならば、今すぐに手術(カテーテル)が必要でないことが多いです。また、自然に冠動脈が、小さくなる可能性は低いと思われますが、徐々に心不全が軽快する可能性はあると思います。
 
 <治療法の選択>ですが、なおす必要がある場合は、根本的には、カテーテルか手術かしか選択肢はないのが現状です。
この病気のカテーテル治療は最近になって行われ始めています。したがって、治療の例はまだ多くはなく、治療後長期の経過は明らかではありません。しかし、カテーテルで瘻孔をうまくふさげた患者さんの多くでは、術後の短期的な経過は良いようです。術後、冠動脈拡張も徐々に小さくなってきますが、当分のあいだ、ワーファリンかアスピリンなどの服用は続きます。
右冠動脈左室瘻に関しては、現在までにカテーテルで治療した患者さんはあまりありません。いままで、医師の側でも経験が少ないことと左心室にコイルが落ちてしまった場合のことを考えて躊躇すること、さらに、外科手術的に直すことが確立しているためだと思います。ただ、冠動脈に狭い部分があって、そこにコイルをおくことができる場合は、左心室に落ちる可能性は非常に低いと考えられます。いままで、左心室以外の部分に瘻孔があいている場合も、そのように狭い部分がある患者さんにはこれを行ってきて、良い成績を上げています。
ですので、カテーテルでの合併症が起きる確率は、狭い部分の程度によると思います。
カテーテル治療の場合は、どうしても異物を残すことになりますが、少したつと異物の表面は自分の組織で覆われますので、入れた後の人工材料に関しては余り心配がないと考えられます。
術後は、冠動脈拡張が持続すること以外には、大きな合併症はないと思います。
長い時間がたってから、コイルが落ちてしまうことはありません。心不全が軽くなりますので、不整脈は出なくなると考えられます。
 
一方、手術はどうかというと、長い間に確立した方法ですので、確実ですし、今は、新生児期の心臓手術も多く行いますので、1歳であれば大きな心配はいりません。合併症も少ないと考えられます。
長期的には問題ありませんが、小さな手術の傷は残ります。また、術直後はつらいですが、小さい子どもは余り負担なく耐えることができます。また、確実に治る実績があります。
手術の際は、心臓を止めますが、手術を受けた殆どの子どもたちは、手術後、その影響をのこしていません。術後は、カテーテル治療と同様で、ワーファリンを続けることも少なくありません。
 
どちらの治療法でも、治療後は、妊娠出産は十分に可能です。
ただ、ワーファリンを飲んでいる場合は、薬剤の中止が必要ですが、太かった冠動脈は術後の経過とともに徐々に細くなり、血液の流れも良くなりますので、妊娠するような年代まで、ワーファリンを飲み続ける可能性は非常に低いと思います。
いずれにせよ、運動は普通の子どもと同等にできますし、術後の生命予後は、一般と大きな違いはありません。

2013年6月 7日

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