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耳寄りな心臓の話

耳寄りな心臓の話(第32話)『心臓病のジェネリック薬』

『心臓病のジェネリック薬 

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川田志明(慶應義塾大学名誉教授、山中湖クリニック理事長)

 

 ブランド・ブームを逆手にとった無印良品、ノーブランド品が注目を集めています。名の通った銘柄品にたいして、シンプルなデザインで生産の手間を省き、低コストを第一にした品々のことです。薬の世界でも先発薬品の特許期間の切れた後に出る後発薬品いわゆるジェネリック医薬品が出回って医療費の削減にも一役買っています。強心剤なども例外ではなく、次々と開発される心臓病薬にもジェネリックと呼ばれる種々の後発薬品が出ているのです。


 ノーブランド・無印良品32回図1.jpg


 ブランド名の入った大きな袋を誇らしげに抱えて闊歩する若者が増えた一方で、このブランド・ブームを逆手にとって華美な装飾を省き、包装も簡単にする、無印いわゆるノーブランド商品を販売する店が出現しています。商品自体のデザインもシンプルにして生産工程の手間を省き、糸や布地を晒すことなく生成り(きなり)のままで裁断した衣料品などを主体にした、低価格の商品を幅広く扱うというものです。
 店を覗いてみますと、染色しないで素材感を活かした商品や、透明な袋にシールを貼っただけの包装など、どこまでも徹底した簡素化に驚かされます。毎週一度は通っている六本木の東京ミッドタウンのビル内にも無印良品のお店がオープンしましたが、海外にも英国や香港辺りで<MUJI>(無地)というブランド名で大型店が開店し、なかなか人気を博しているようです(図1)。
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 ジェネリック・後発医薬品


 医薬品にも無印というかノーブランドの薬品が登場しています。大枚の研究費を投入して種々の新薬が開発される一方で、20年間という特許期間が切れてしまいますと他社が製造する同一成分のジェネリック医薬品が出回るのです。効能、用法、などは同じはずですが、開発費がかからない分だけ価格が安くなります。
 先行する先発薬品に対しては後発薬品、あるいは何社からもゾロゾロと発売されることからゾロ品とも呼ばれることのあるジェネリック(一般名収載)医薬品が注目されています。先発のspecific(特定のブランド)に対して、generic(一般の、普通の、ノーブランドの)という形容で区別されたもので、街の調剤薬局にも「ジェネリック医薬品を希望する方はご相談を」とお願いカードが貼られ、TVでも有名な俳優さんにジェネリック医薬品の存在を宣伝させるなど普及強化を図っています(図2)。
 32回図3.png価格(2014年収載)についてですが、例えば心室性期外収縮や心房細動などの不整脈治療薬として長い間用いられてきた先発のリスモダン(サノフィ)100mg 1カプセルの薬価は51.8円ですが、後発薬のノルペース(ファイザー)は23.0円、さらにチョパンなど最低で8.3円とかなり低価格に設定された薬剤もあるのです。
 このように先発薬に比べて価格は安く効能は同じといわれても、舶来品やブランドものが好きな国民性もあり、一概にすぐに後発のジェネリック医薬品に手を出すとは限らないという問題があります。例えばアスピリンは開発されて115年経ちますが、今でも世界で最も服用されている大衆薬で、特許期間も遥か前に切れていて今ではバイアスピリン錠(100mg)(バイエル)もアスピリン錠(100mg)( マイラン製薬)、アスピリン腸溶錠(100mg)(東和製薬)なども先発・後発薬の区別なく薬価が1錠5.6円と同一に設定されています。しかし、開発当初からドイツ・バイエル社のアスピリンは他社に比べて値段も高かったのに結晶が純粋でよく効くと評判がよく、価格が同じになっても各国で「バイエルアスピリン」として人気が続いているのですから、伝統というか老舗には不思議な力があるようです(図3)。
 アスピリンには成分量の少ない製剤(低用量アスピリン)があり、狭心症や心筋梗塞、脳梗塞などの再発を予防するために使われています。
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オーファンドラッグ・希用薬


 オーファン orphan には孤児の意味もありますが、薬では希少医薬品を指します。患者数が極めて少ない特殊な疾患の治療に用いられる薬剤のことで、市場が限られているために孤立した薬ということで、オーファンドラッグ・希少疾病用医薬品あるいは単に希用薬(きようやく)と呼ばれています。需要が少ないために利益が見込めず、製薬会社としては積極的には開発したがらないのも道理ですが、その疾患の特効薬として、いざと言う時のために最低限の在庫が必要で、国としては助成金の交付や審査期間の短縮など特別な優遇策をとって確保に努めています(図4)。
 オーファン医薬品の例としては、リルゾール(筋萎縮性側索硬化症)、タクロリムス(ベーチェット病)、インドメタシン注射薬(未熟児の動脈管開存症)、メカセルミン(成長ホルモン)などがあげられます。また特別なものとしては、クロロマイセチンなどはかつては抗生物質の代名詞のように呼ばれて大量に用いられましたが、骨髄機能抑制など重大な副作用のために影をひそめてしましました。しかし、まれに発生することのある腸チフス、サルモネラ腸炎、つつが虫病などには特別な効果を発揮するものとして最低限の在庫が必要な薬剤なのです。


 OTC薬・大衆薬
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 早くから医薬分業が確立していたアメリカではほとんどの薬は医師からの処方箋を提出して薬局(Pharmacy) で購入するしかなく、いわゆるドラッグストア(Drugstore)に飛び込んでもアスピリンぐらいしか置いてありません。したがって、ドラッグストアといっても薬局ではなく、健康と美容に関する医薬品や日用品を短時間で買えるようにした小売業態なのです。
 日本では古くから処方箋なしでも買える一般大衆薬が多くあります。処方箋なしに店頭でカウンタ越しに購入できるという意味でオー・ティー・シー薬(OTC=overthe-counter、オーバー・ザ・カウンター)と呼ばれています。さらに最近の改正薬事法によって登録販売者制度が創設され、この試験に合格した登録販売者でも医薬品販売業の許可がとれるようになり、薬剤師がいなくとも一部の医薬品を除いた医薬品(第2類、第3類)をOTC薬として店頭で販売できるようになりました。一般用医薬品の第2類にはカゼ薬や胃腸薬、頭痛薬、便秘薬などがあげられ、第3類には消化薬や整腸薬、目薬やトローチが含まれ、栄養ドリンク剤やビタミン剤の一部は指定医薬部外品としてこれらの制約を受けていません(図5)。
 「薬九層倍」と暴利をむさぼる代名詞のように用いられた時代も去って、医薬分業も整備されてきました。しかし、処方箋薬のほかにコンビニでも登録販売者がいれば、医薬品販売業の許可がとれるようになり、カウンター越しに自由に入手できる薬剤も増え、サプリメントの活用法とともに各自で品質と値段を見極めることが必要な時代になったと言えます。
  ブランド・ブームを逆手にとった無印良品、ノーブランド品が注目を集めています。名の通った銘柄品にたいして、シンプルなデザインで生産の手間を省き、低コストを第一にした品々のことです。薬の世界でも先発薬品の特許期間の切れた後に出る後発薬品いわゆるジェネリック医薬品が出回って医療費の削減にも一役買っています。強心剤なども例外ではなく、次々と開発される心臓病薬にもジェネリックと呼ばれる種々の後発薬品が出ているのです。
  

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