公益財団法人 日本心臓財団

今月のトピックス

悪玉ナトリウムと善玉カリウム

悪玉ナトリウムと善玉カリウム
 
 奥田奈賀子(人間総合科学大学 人間科学部 健康栄養学科教授)
 
 2016年6月18日に、埼玉県さいたま市で第52回日本循環器病予防学会学術集会市民公開講座「食事で脳卒中・心臓病を撃退!」~ニッポンデータ全国2万人調査で分かった最新情報~が行われました。今回はそこからのレポート第2弾「悪玉ナトリウムと善玉カリウム」を紹介します。

もっと減らそうナトリウム、もっと食べようカリウム
 ナトリウムは血漿(血液から赤血球・白血球・血小板を除いた液体成分、血液の約半分を占める)の主なミネラルであり、カリウムは細胞内の主なミネラルです。どちらも身体を構成する重要なミネラルです。
 しかしナトリウムとカリウムでは、身体の健康に対する影響が違うのです。
 ナトリウム(塩、食塩=塩化ナトリウム)を食べすぎると血圧が上がります。このため減塩が強調されてきました。
 一方、カリウムをたくさん食べると逆に血圧は下がります。これはかなり前から知られていたことですが、カリウムに対する啓発はナトリウムよりも後回しになってきたのが実情です。
 
 食塩の過剰摂取は、脳卒中・心臓病・腎臓病・胃がん、骨粗鬆症などを増加させます。食欲を増すという理由で肥満とも関連すると考えられています。
 わが国の長期追跡調査であるニッポンデータ研究では、食塩を多く食べるほど血圧が高くなるとの結果が得られました。これは男性で顕著でした。
  日本人の食塩の1日平均摂取量は10gですが、減塩目標は1日平均6g未満です。
  世界保健機関(WHO)は、カリウムの1日摂取目標を3,500mgとしています。
 
 カリウムは野菜や果物に多く含まれています。ほうれん草やこまつな(一束200gで1,000mg)、芋類(中1個100gで450mg)、ニラ(一束100gで510mg)、バナナ(1本100gで360mg)、トマト(1個150gで315mg)、りんご(1個300mgで360mg)、サラダ菜(1袋80gで300mg)、いちご(半パック150gで300mg)などです。牛乳(200mlで300mg)にも多く含まれています。
 
 ニッポンデータ80(1980年の調査対象者の長期追跡調査)から、野菜・果物の平均合計摂取量が多いほど循環器疾患(脳卒中・心臓病)による死亡リスクが低くなることがわかりました。
 野菜・果物の1日摂取量275gの人に比べ、1日摂取量486gの人で28%、652gの人で26%、脳卒中・心臓病による死亡リスクが低くなっていたのです。これは統計学上、明らかな意味がある、と判定できる差でした。
 野菜・果物をたっぷり食べる人では、脳卒中・心臓病による死亡リスクが約4分の1以上低くなったことになります。
 厚生労働省は、野菜は1日350g以上、果物は1日1回以上食べることが望ましいとしていますが、ニッポンデータ80はこれを裏付けるものと言えるでしょう。(図1図1野菜摂取量.jpg
 ナトリウムとカリウムの比率は小さいほど良い(ニッポンデータ80)
 ニッポンデータ80から、ナトリウム摂取とカリウム摂取の比が重要であることもわかりました。
 ナトリウム摂取とカリウム摂取の比が大きくなるほど(ナトリウムをたくさん食べるが、その割にはカリウムをあまり食べないほど)脳卒中死亡のリスクが高まっていました。循環器疾患(脳卒中と心臓病)による死亡、総死亡(何らかの病気による死亡)のリスクもやはり高まっていました。
 逆に考えると、ナトリウム摂取とカリウム摂取の比率は小さいほど良い。つまり、カリウムをたくさん食べるが、その割にはナトリウムをあまり食べない。野菜・果物をたくさん食べて、塩辛いものをあまり食べない。こうした食事が健康に良いということです。
 ナトリウム、カリウムは自然の食材や加工食品の中に含まれています。
 自然の食材においてナトリウムは肉や魚に0.1~0.2%含まれています。通常、味はありません。
 カリウムはさきほどご紹介したような野菜、果物と同様、肉、魚などにも0.3~0.5%含まれています。やはり味はありません。
 加工食品においては、昔から高ナトリウム(高塩分)の調味料が利用されていますので、注意が必要です。
 カリウムは、一部の減塩調味料に利用されています。むくみを改善するサプリメントにも含まれています。カリウムが高濃度になると塩味(苦みを伴う)を呈します。
 
あっさりした肉や魚にはカリウムが多い
 カリウムを多く含む食品は、野菜や果物、牛乳だけではありません。豆腐、納豆などの大豆製品、枝豆、そして肉や魚などにも多く含まれています。
 体に良いカリウムをとるためには、どういった肉や魚を選ぶべきでしょうか。
 実は、カリウムは筋肉細胞に多く含まれるため、あっさりした肉や魚にはカリウムが多いのです。
  「牛サーロイン脂身付き」よりも「牛ヒレ肉赤み」(100g中のカリウムは各々180mg、340mg)、「鶏もも肉皮つき」よりも「鶏ささみ」(100g中のカリウムは各々270mg、420mg)、「まぐろ脂身(トロ)」よりも「まぐろ赤身」(50g中のカリウムは各々115mg、190mg)。
 こってり系より、あっさり系の肉や魚はカリウムが多い一方、脂肪分が少ないのでメタボの予防・改善にも通じます。
 
 古代食では、穀類は未精製で、畜肉・魚介・木の実・果物どれもが野生種だったのでカリウムが豊富でした。しかし、文明化・美食化とともに穀類は精製され、畜肉・魚介は脂肪分が高くなり、果物も高糖度になりカリウムを食べなくなってきました。(図2図2カリウム.jpg

 国民健康・栄養調査によれば、現代日本人のカリウム摂取量は、男2,000mg、女1,800mgとなっています。
 食事摂取基準2015における目標量は男3,000mg、女2,600mgです。
 男女とも現状よりも1,000mgほど、カリウムを多く食べることが望ましいわけです。
 悪玉ナトリウムを減らし、善玉カリウムを多く食べて、脳卒中・高血圧・心臓病予防に役立つ食事をしていただけたらと思います。
 
参考:血管健康くらぶ「コラム」 
2016.8.15掲載
 
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