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診療のヒント100 メッセージはひとつだけ

心不全 Question 19

高齢の方が息切れ、倦怠感、身体活動の低下を訴えるとき注意すべきことはなんですか

高齢の方の上記症状の見落としをしないためのKeyは、認知の問題ではないでしょうか。

息切れ、倦怠感、身体活動の低下の症状の鑑別診断は、電解質異常、甲状腺、脱水、心不全、肺気腫、糖尿病など多岐にわたります。診断に至るまで、患者本人からの訴えや、症状身体所見からのサインを取りこぼさないようにしてようやくたどり着くのが通常です。

しかし高齢で、認知の問題があると、現在の状態が以前と比べてどうなのか基準や判断が難しく、自覚症状の聴取も困難となります。重要な情報がかけている中での鑑別診断はとても難しく、見落としも多いと思われます。

これらを見落とさない方法、ピットフォールに陥らない完全な方法はあるのでしょうか。

いろいろな症候学の教科書や本をならべてみても、私の調べてみる限り答えは書いてありませんでした。どうして書いてないのか?やはり正解がいくつもあり、たくさんの方法をためしてようやくたどり着くものであるからかも知れません。

高齢の方の症状に対し、鑑別や見落としをしないようにするために、肺疾患、心疾患、内分泌疾患、膠原病、血液疾患、癌由来の悪液質、などほぼすべての内科学の知識が鑑別に必要になります。実臨床に目を向けると、鑑別するツールの存在(MRI、CT、血液検査、超音波検査、各課専門医の在中)、診療時間(夜間救急など)でも診断精度とマネージメントは大きくかわると思われます。また、内科学ではなく、鬱病などの心身の問題が原因であった可能性も考えられます。これらの鑑別診断の症候学を記載するだけでも膨大なページになると思います。

すべての疾患の見落としをしない方法は、見落とさないよう努力をしていくこと以外ないのではと思われます。これだと、まったく答えになっていないため、これらの症例に対して鑑別において注意してほしいことが一つあります。

症状から予想される疾患の中で、生命予後にかかわる疾患から鑑別に入り除外していくとトラブルとなる確率が低くなるのではないでしょうか。

あと、心不全は生命予後に関わる疾患の一つとしてあげられますが、高齢の方の注意点として左心機能がよい方でも心不全を起こすことを忘れないでください。高齢の方だと左室機能が良好でも拡張障害によるHeart failure preserved LVEFを起こすことがあります。

Only One Message

高齢の方の鑑別は多岐に渡り、困難を極めることが多くなります。鑑別診断を行うに際して生命予後にかかわるものから順におこなえばトラブルが少なくなるかもしれません。

回答:中村 健太郎

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