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不整脈 Question 15

不整脈治療でよく聞くCAST試験とはどういう試験ですか

□心筋梗塞後に心室期外収縮(PVC)や非持続性心室頻拍(nsVT)が多いと予後が悪いことが分かっています。抗不整脈薬でこれらの不整脈を減らせる症例がいるという観察に基づいて、CAST study(Echt?DS et al., N Engl J Med, 1991)では「陳旧性心筋梗塞のPVCやnsVTを薬物治療で減らすと予後が良くなるか」どうかを確かめました。

□エンドポイントは心臓死あるいは心停止からの蘇生。平均年齢61歳の1498例 。encainide, flecainideのいずれかによってPVCが80%以上,nsVTが90%以上減少した症例のみをエントリーしています。つまり、不整脈そのものを減少させられそうな患者さんだけを選んで試験が行われました。

□結果として、不整脈死は実薬群で43例,プラセボ群16例(p=0.0004)でした。急性心筋梗塞やうっ血性心不全など不整脈以外の心臓死は実薬群17例,プラセボ群5例(p=0.01)。つまり、実薬のほうで予後は悪く、試験は中止されています。

□どうしてこんな不都合な事態になったのでしょう。さまざまな視点から論じられています。

□Q 波梗塞では実薬群の死亡率はプラセボ群のわずか 1.7 倍であったのに対し,非 Q 波梗塞では 8.7 倍でした(図:Akiyama T et al. Am J Cardiol 1991; 68: 1551)。非 Q 波梗塞のほうに残存心筋が豊富で急性虚血を生じる可能性が高いとすれば,「フレカイニドやエンカイニドと急性虚血との"相互作用"でイベントが増えたのかもしれない」と推測されました。


□興味深いことに「致死的でない心筋梗塞の再発と突然死を合計した頻度が実薬群とプラセボ群でほぼ同じ」でした。さらに,「突然死が生じた時間帯が虚血イベント発生の分布に似ていた」ことも,実薬群でのイベントが急性虚血とかかわり合いがあるという考え方を支持しています。

□Ic群薬で QT延長は起きにくいです。また、投薬後早い時期に死亡が増えたわけではないことも,通常の催不整脈作用、つまりCAST の結果は torsades de pointes を主とする催不整脈作用によっては説明できません。

□ほかの臨床試験の結果を参考にすると、器質的背景があるとき、I群薬は概してメリットは乏しいことが明らかになりました。心筋梗塞後とIc群薬という狭い関係だけでとらえるのではなく、CASTは「器質的背景があるとI群薬は使いにくい」という考え方を確立する過程の重要なひとつの研究でした。


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Only One Message

CAST試験は「心筋のダメージがあるときI群薬はむやみと使えない」ことを教えている。

回答:村川 裕二

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