日本心臓財団
2009年1月5日更新

2008年「世界ハートの日」イベント報告

ハート・ノルディックウォーキング レポート

昨年9月28日、「世界ハートの日」のイベントとして長野県・南長野運動公園で開催された「ハート・ノルディックウォーキング」。長野市民を中心に、138名の参加者がありました。
このノルディックウォーキング体験講習会では、ノルディックウォーキング経験者を中心とした1グループで、心拍計(ハートレイトモニター)を装着していただき、通常のウォーキングと心拍数や運動強度を比較することで、心血管病の予防としての運動効果について調査しました。
以下は、当日インストラクターをしていただいた冨岡 徹氏(名城大学教授、医学博士)によるレポートです。

<ハートレイトモニター装着によるノルディックウォーキングの運動効果の検証>

名城大学教授 冨岡 徹
(INWA公認マスターインストラクター)

冨岡徹氏今回の体験講習会のねらいは、ノルディックウォーキングは通常のウォーキングに比べ主観的に楽に歩ける一方、同じ速度であれば心拍数が高めになることを体感してもらうことでした。すなわち、ポジティブに考えれば、同一時間同一速度で歩いたならば、運動効果の向上を期待できるということですが、ネガティブに考えれば、日頃のウォーキングをもとにして感覚的に運動強度を設定すると、つい心臓など生体への負担度が高まってしまうという特徴があるということです。

参加者は4kmをウォーキングすることを前提に参加申し込みされたノルディックウォーキングの経験のある方40名(平均年齢55.4±11.3歳)で、うち男性が17名(平均年齢55.6±11.1歳)、女性が23名(平均年齢55.3±11.9歳)でした。当日の天候は曇り、気温は12〜13℃程度で風速1メートル以下の肌寒いながらも過ごしやすい日でした。参加者にはハートレイトモニター(polar社製:図1)を装着していただき、通常のウォーキングとノルディ図1ックウォーキングの双方で心拍数や運動強度などについて比較いたしました。その結果について、ご紹介します。

講習会では、まず、心拍数を基にした運動強度の設定の仕方についてレクチャーし、ハートレイトモニターを参加者に装着していただきました。そして、通常のウォーキングとノルディックウォーキングでは運動中の心拍数がどのように異なるかを体感し、最終的には心拍数をもとにした日頃の運動強度の設定方法について学んでいただきました。ハートレイトモニターを初めて装着された方も多いようで、皆さん熱心に取り組んでおられたように思います。

ウォーキングのプログラムは次の通りです。1周1kmの舗装路において、通常のウォーキングとノルディックウォーキングについて、それぞれ「楽に気持ちよく歩く」、「少し頑張って歩く」という二種類のスピードで、各一周(計4周)歩いてもらいました。なお、以下に示す各グラフでは、ウォーキングを「W」、ノルディックウォーキングを「NW」と表現し、それぞれに「‐」をつけて「楽に気持ちよく歩く」を「遅」、「少し頑張って歩く」を「速」と表現しました。各試行間は、3分程度の休息をおきました。得られた結果は以下の通りです。

(1)所要時間(図2)
  1km歩くのに要した平均の所要時間は、通常のウォーキングでは、遅いスピードで平均11分22秒、速いスピードで10分5秒であったのに対し、ノルディックウォーキングでは、それぞれ10分51秒と9分46秒でした。
これは、各人が自覚的な運動強度が同じだと設定しても、ノルディックウォーキングでは通常のウォーキングに比べ、およそ3〜5%程度速く歩いてしまうことを示す結果でした。

(2)心拍数(図3)
  各ウォーキング終了時の心拍数は図3の通りでした。通常のウォーキングでは、遅いスピードで平均103.5±15.6拍、速いスピードで平均120.1±18.4拍であったのに対し、ノルディックウォーキングでは、それぞれ116.5±18.9拍と131.4±18.6拍でありました。
  全般的にみると心拍数は、歩行速度と逆の傾向となっていることが分かります。要するに、運動実施者がたとえ主観的に運動強度を同様であると規定しても、ノルディックウォーキングのほうが歩行速度は速くなり、同様に心拍数が早くなる傾向にあることを示しています。すなわち、ノルディックウォーキングではついつい運動強度が高くなってしまうということです。
  一方で、遅い速度でのノルディックウォーキングについて、通常のウォーキングに比べ1割程度遅く歩いていたにもかかわらず、運動直後の心拍数では平均3,4拍程度の差しか見られなかったことは注目に値します。
これは、心血管病の予防・リハビリテーションのための運動として有用であることを示唆しています。すなわち、少し早目に歩くウォーキングでは精神的(主観的)につらいけれども、ノルディックウォーキングでは楽に歩いても「頑張って歩くウォーキング」に近い効果が期待できるということです。

(3)運動強度(図4)
  それでは、実際に参加された方々はどの程度の客観的な運動強度でウォーキングされていたのでしょうか。運動中の心拍数から客観的な運動強度を示す指標として最大心拍数に対する方法(%HRmax)と予備心拍能による方法(%HRreserve:カルボーネン法)が知られています。今回は、参加者各人の持久力と関係深い安静時心拍数にも配慮したカルボーネン法によって検討しました。すなわち、

運動強度 =(運動時心拍数−安静時心拍数)÷(最大心拍数−安静時心拍数)×100 

で、その人が運動によって許容できる心拍数の増減範囲の中で、どの程度であったかを表したものです。なお、最大心拍数は本邦で一般的な「220−年齢」として計算しました。

 通常のウォーキングでは、遅いスピードで平均37.0±14.6%、速いスピードで平均55.0±17.7%であったのに対し、ノルディックウォーキングでは、それぞれ50.6±17.5%と67.2±16.5%でありました。遅い速度でのウォーキングでは平均およそ37%HRreserveと持久性トレーニングとしては強度的に低いものであったものが、ストック(ポール)を用いたノルディックウォーキングでは平均およそ50%HRreserve程度となり、同じような主観的運動強度であっても、持久性トレーニングとしての有用性が高まることが推察されました。

写真 以上のように主観的な運動強度を同一に設定しても、ノルディックウォーキングでは客観的な運動強度が高まりました。ストック(ポール)という器具を使用することによって歩行運動に上肢が動員されるのですが、これによって精神的な負担度を増すことなく生体負担度を高めることができます。ここに道具を用いることで生まれる「楽しさ」・「おもしろさ」の要素が加わることで、このようにより効率よく、楽しく持久性トレーニングが行える可能性を示しているものと思われます。

 現在のところ、わが国ではノルディックウォーキングの認知度はあまり高いものとはいえませんが、特にヨーロッパにおいては非常に盛んに行われています。これは、今回の結果のように、「それほど苦しくはならないけど運動効果が高い」ことに起因すると思われます。実際に、ノルディックウォーキングの運動効果の高さは多くの研究で実証されています。今後は、わが国においても、医療現場における運動療法の一つとして期待できるのではないかと思われます。ただし、効果的な運動のためには正しいノルディックウォーキングの知識と技術の習得が不可欠です。機会があれば、今回のような専門の講習会に参加されることをお勧めします。私も、ノルディックウォーキングが運動療法としても、広く普及していくことを願っています。

(2009年1月5日)

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参考:日本ノルディック フィットネス協会HP

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