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今月のトピックス

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注意したいお薬の飲み合わせ

注意したいお薬の飲み合わせ
東京医科大学病院 医薬情報室 伊賀 千夏
薬剤部長 明石 貴雄
東京医科大学病院 循環器内科 主任教授 山科  章
 
薬と飲み物や食べ物、薬と薬との組み合わせによっては、お薬による良くない影響が出ることがあります。今回は、循環器の疾患(心臓・血管病)に関係のある飲み合わせを紹介します。
 
薬と食品の相互作用①~カルシウム拮抗薬とグレープフルーツグレープフルーツ.jpg
 血圧を下げるお薬のうち、末梢の血管を拡げて血圧を低下させるカルシウム拮抗薬とグレープフルーツを併用することで、血圧が下がりすぎてしまうことがあります。これは、グレープフルーツに含まれるフラノクマリン類という物質が、小腸上皮細胞にあるCYP3A4という代謝酵素を阻害することで、カルシウム拮抗薬の代謝が妨げられ、体内でのお薬の濃度が上がり、お薬の効果が強くなってしまうことが原因です。主な症状としては、ふらふらしたり、胸がドキドキする、頭が痛くなるなどがあります。
 相互作用の原因となるフラノクマリン類は、グレープフルーツの外側の皮と果肉の間の白い部分(アルベト)や果肉の部分にも含まれていると言われています。また、グレープフルーツだけではなく、スイーティー、ざぼん(ぶんたん、ばんぺいゆ など)、だいだいなどにもフラノクマリン類が含まれており、グレープフルーツと同様の相互作用が起こる可能性があります。この相互作用は数日間持続し、体内でのお薬の濃度が上がる状態が3~4日持続することが知られています。このため、カルシウム拮抗薬を服用している間は、上記の柑橘類の飲食は控えるようにしましょう。
 一方、バレンシアオレンジ、レモン、かぼす、温州みかん、スイートオレンジジュースはフラノクマリン類をほとんど含まないため、相互作用の可能性は低いとされています。
 但し、カルシウム拮抗薬の中でも、アムロジピンベシル酸塩やジルチアゼム塩酸塩はグレープフルーツとの相互作用はないとされています。
 
薬と食品の相互作用②~ワルファリンとビタミンKを多く含む食品(納豆など)納豆.jpg
 ワルファリンは血液が固まるために必要な凝固因子を肝臓で作るときに必要なビタミンKの働きを妨げることにより、からだの中で血液を固まりにくくするお薬です。ワルファリンをのんでいる人が納豆を食べると、ワルファリンの作用が弱まってしまいます。これは納豆には、ビタミンKが含まれていることと、納豆にたくさん含まれている納豆菌が大腸でビタミンKを産生するためです。クロレラ、青汁なども納豆と同様にビタミンKを多く含むため、ワルファリンを服用している場合、摂取を控える必要があります。ホウレンソウ.pngのサムネイル画像
 この他にもほうれん草などの緑黄色野菜にもビタミンKが含まれていますが、納豆、クロレラ、青汁以外については1日の摂取量が過量にならない範囲(小鉢程度)なら影響はわずかですので、一時的な大量摂取(暴飲暴食)は避けましょう。
 
 
薬と食品の相互作用③~新しい抗凝固薬とセント・ジョーンズ・ワートを含む食品
 セント・ジョーンズ・ワート(学名:Hypericum perforatum,和名:セイヨウオトギリソウ)は、主にヨーロッパから中央アジアにかけて分布している多年生植物で、古くからうつ病などの民間療法として使用されてきました。最近では、軽症から中等症のうつ病や、更年期障害、自律神経失調症、ストレスの緩和、ダイエット時のイライラ感などに効果があるサプリメントとして、アメリカを中心に人気があり、日本でも人気が出てきています。錠剤.jpg
 しかし、セント・ジョーンズ・ワートは肝臓での薬を代謝する酵素を誘導することから、免疫抑制薬シクロスポリン、強心薬ジゴキシン、抗HIV薬(インジナビル)、テオファリン、ワルファリン、エチニルエストラジオール、シンバスタチンなどを併用すると、これらの薬剤の血中濃度を下げて効果を弱くしてしまうことが報告されています。他にも、新しい抗凝固薬であるプラザキサ、イグザレルト、エリキュースはセント・ジョーンズ・ワートとの併用で、血液を固まりにくくする作用を抑えてしまう可能性があることがあります。日常的にサプリメント等の使用しているときには事前に主治医へ相談するようにしましょう。
 
 
薬と薬の相互作用血圧降下薬の配合剤
 最近では、血圧を下げるお薬を1錠で2種類配合した配合剤が多く登場しています。異なる作用機序の血圧を下げるお薬を組み合わせることで、より効果的に血圧を下げることが期待されています。のむ薬の錠数を少なくすることができるので、最近、好んで処方されるようになってきました。しかし、併用となる分だけ、薬による副作用の症状には十分気を付ける必要があります。
くすり.jpgのサムネイル画像ARB:アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬というお薬で、血管を収縮する作用のあるアンジオテンシンⅡと呼ばれる物質の働きを抑えることで血圧を下げます。
利尿薬:腎臓に働いて血液中のナトリウムを尿中に排泄することで血圧を下げます。
  

<配合剤>(2014年9月現在)
分類 成分名 商品名 主な副作用
ARB・利尿薬 ロサルタン・ヒドロクロロチアジド プレミネント めまい、頻尿、頭痛、尿酸値増加など
バルサルタン・ヒドロクロロチアジド コディオ
カンデサルタン・ヒドロクロロチアジド エカード
テルミサルタン・ヒドロクロロチアジド ミコンビ
イルベサルタン・トリクロルメチアジド イルトラ
ARB・カルシウム拮抗薬 バルサルタン・アムロジピン エックスフォージ めまい、脂質異常症、高尿酸血症、発疹、γGTP上昇など
オルメサルタン・アゼルニジピン レザルタス
カンデサルタン・アムロジピン ユニシア
テルミサルタン・アムロジピン ミカムロ
イルベサルタン・アムロジピン アイミクス
バルサルタン・シルニジピン アテディオ
  
2014.10.15掲載
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