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疾患別解説

拡張型心筋症による心不全で数百メートルしか歩けない

日本心臓財団に寄せられたご相談

num.3321S

62歳、 男性: 拡張型心筋症

20年近く心臓疾患を患っており、10年ほど前にうっ血性拡張型心筋症を診断されましたが状態もさほど悪くなく、たいした症状もなかったので、投薬を受け、激しい運動を避けて生活をしてきました。
2年前の夏に急に肺に水が溜まり、利尿剤で治療しました。その後は大きな動きはなかったので、また投薬での治療を続けてきましたが、数ヶ月前、急に息切れがひどく、数百メートルも歩けなくなり病院に行きますと、再度肺に水が溜まっていると診断され、点滴治療(利尿剤)を受けました。肺の水はなくなったようですが、その後、肺に水が溜まりやすく心臓の動きも悪く(心不全を起こしている)、ポンプの動きに左右でズレが生じておりポンプ動作のタイミングがずれているらしく、通常でも人の半分ほどの動きであったのがなお効率が悪くなり、息苦しくてまた数百メートルしか歩けない、気分の悪い毎日を過ごしております。
治療の手立てもなく、現在も投薬のみを続けておりますが、何か良い治療方法などがありましたら教えてください。

日本心臓財団からの回答

拡張型心筋症は、普通は治療の手段がないために、難儀しておられることと思います。ただ、最近では、慎重な管理のおかげで、長く健康的な生活を楽しむことができる方も多くなりました。治療法は日進月歩です。あきらめないで、がんばってください。治療薬には利尿薬だけが書かれていますが、利尿薬しか使っていないのでしょうか。他に、アンジオテンシン阻害薬やベータ遮断薬といった薬もあります。ただし、これらは血圧を下げるので、使いにくい場合があります。利尿薬にもいろいろ種類があります。
さらにまた、ポンプの動きに左右でズレがあるということですが、こうしたケースではペースメーカを入れて、左右の心室を同時にペーシングして、ズレをなくすという治療も行われる場合があります。しかし、この治療はどこの病院でも行っているのではないので、担当医にこのメールをみせて、ご相談になってください。

回答2

拡張型心筋症(うっ血性心筋症ともいう)は原因不明の心筋疾患で、左室あるいは右室内腔の拡張、心室筋の収縮障害、心臓のポンプ機能低下、やがては心不全症状を起こし、さらに心不全治療抵抗性となり、強心薬利尿薬なども効かなくなり、最終的には死に至る重い病気です。
この病気は通常、徐々に進行し、心臓機能の低下とともに全身倦怠感、疲労、運動能力の低下、胸痛、呼吸困難、動悸、息切れ、ときには各種の不整脈、ついには突然死をもたらす重い病気です。
この病気の進み具合はわが国の厚生労働省研究班の調査によると、5年生存率54%、10年生存率36%と言われております。
したがって、生命維持のためには脳死心臓移植しかなく、欧米諸外国ではそれによって生命維持をはからざるを得ない状況になっております。しかし、わが国の特殊事情では脳死ドナーが得難く、今日までの成功例はわずか30数例にしか過ぎません。そこで、それでも移植を希望する場合には海外の医療施設に頼らざるを得ない状況です。
しかし、最近の2、3の新しい方法が開発されてきました。
その1つは交感神経ベータ遮断薬の投与です。この薬は高血圧や不整脈の治療によく使いますが、最近、スウェーデンの医師が、それまで心筋の収縮力を弱め、心不全を増悪させるので危険視され、注意して使わなければならないと信じられていた交感神経ベータ遮断薬をこともあろうに心筋症で慢性心筋不全の症状に使ってみたら心不全を増悪することなく、反って心不全の改善のみならず延命効果が得られたと報告され、皆びっくりしました。一部の医師たちによって半信半疑追試され、やはり同じように良好な結果のあることが確信され、少量から慎重に増量し数ヶ月かかって増量され、所定の投与量におさめていって、延命効果や症状改善の効果が認められ、以後次第に臨床治験が広められ、今日では拡張型心筋症の治療に必要な薬として広く使われるようになりました。
これは大規模臨床試験として認められ、今日では一部健康保険でも使えるようになっております。なぜ本剤が拡張型心筋症に有効なのか、いろいろな説がありますが、未だ不明なことがたくさんあります。
一方、アンジオテンシン阻害薬(ACE阻害薬)も心筋症の難治性心不全に使われるようになってきました。腎から放出されるレニンという物質は肝でアンジオテンシンノーゲンとなり、これが流血中のアンジオテンシン変換酵素(ACE)によってアンジオテンシンとなり、強力な血管収縮作用をもち、血圧を上げ、血管抵抗を高め血圧を上昇せしめます。ACE阻害薬はこの血管収縮作用を緩め、血管を広げ、血管抵抗を下げ、血圧を下げる作用があります。つまり、ACE阻害薬は降圧薬として役に立つ薬ですが、これが降圧薬としてのみならず、心筋症の重症心不全にも使えることが最近になってわかってきました。
ベータ遮断薬やACE阻害薬がなぜ有効なのかまだよくわかっておりませんが、1つの説としてこれらの薬の効果は心臓の収縮力を弱め血管を拡張するので、今までは弱っている心臓のエネルギー消費を減じ心臓に強力な刺激を与えて、収縮を強めることが重要と考えていたのに、これらの薬の場合はむしろ心臓のエネルギー消費を減らし、心臓を休めて収縮力を回復させる、このことにより余力を高める、今までの薬とは発想を異にする機序に回復力を高めることに治療の意義があるという考えです。
これからもいろいろな新しい治療法が開発されてくると思います。どうか気長にがんばってください。
なお、これら心筋症の新しい治療法については専門的知識が必要なのでどうぞ心臓専門医によくご相談ください。

2005年6月 3日

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