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疾患別解説

弁膜症と冠動脈狭窄を合併した高齢者の治療選択

日本心臓財団に寄せられたご相談

num.11436

88歳、 男性: 大動脈弁狭窄症、冠動脈狭窄

88歳の父が、全身が浮腫み、5分位歩くと息切れがするような状態で、大動脈弁狭窄症と診断されました。
当初、主治医からは、高齢のため、外科手術はお勧めしませんと言われました。
その後、胸痛があり、心臓カテーテル検査の結果、冠動脈の狭窄も見つかりました。
すると、開胸手術で弁置換とバイパス手術を行うと言われました。
しかし、胸痛は現在おさまっており、また年齢的なものもあり、開胸手術は希望していません。
 
インターネットで調べたところ、TAVIという治療法を見つけました。
TAVIは開胸手術と比べ同程度のリスクがあるものでしょうか。
主治医の説明では、TAVIの最中に開胸しなければならない場合もあるとのことでした。
また、冠動脈の狭窄も、バルーンかステントによるカテーテル治療ができればよいと考えています。
TAVIと冠動脈カテーテル治療は、同時に行うものなのでしょうか。
また、大動脈弁の治療をせず冠動脈の狭窄のみを治療するという選択肢はありますか。
もし、薬のみでのコントロールを選択した場合、日常生活において、苦痛を伴わずに済むのでしょうか。
日本心臓財団からの回答
高齢者では、お父様のように複数の心疾患を抱えていることも稀ではありません。
TAVI(タビ)治療は症状のある高度大動脈弁狭窄で、高齢で体力が低下し、開胸術に耐えられない方が最も良い適応になります。TAVIは、従来の開胸術と異なり胸の正面・中心にある胸骨を切開する必要がありません。そのため患者さんへの侵襲度が低く、術後入院期間の短縮ができ、早期リハビリで体力低下を最低限にすることが可能です。実際、このような方に対するTAVI治療は、開胸術に匹敵する成果を挙げています。
一方、TAVIにいくつかのリスクが指摘されています。いずれも胸骨切開なしに、自己弁を残したまま人工の弁を挿入することで生じた新たなリスクと言えます。まず、TAVI弁の周囲に逆流が残る可能性があります。これは自己弁と人工弁の隙間から大動脈に出た血液が逆流することですが、TAVI弁の改良で現在は減少しつつあります。その他、脈が遅くなってペースメーカ挿入が必要になるリスクなどがあります。
主治医の説明にあった開胸術に切り替わるリスクは、大動脈弁を含む組織の破裂などが原因になります。しかし、この合併症はハートチームのスキルアップや適切な症例選択の結果、今では減少傾向にあることが報告されています。
 
一方、開胸術は術後弁周囲逆流などのリスクは低いのですが、開胸術そのものが侵襲的で、必ずしもTAVIより予後が優れているとはいえません。重要なことは、それぞれの症例で開胸術のリスクを評価し、TAVIに見合った弁かどうかをハートチームで慎重に検討することです。
 
合併している冠動脈疾患の治療は、TAVIの前後に行われることも、TAVIと合わせて行われることも、どちらの場合もあります。いずれの治療をどのタイミングで実施すべきか、これもハートチームでの十分な検討が求められます。
大動脈弁狭窄に対する治療はTAVIと、従来の弁置換術の二種類で冠動脈の二つの治療には、すべての組み合わせが考えられます。つまり、バイパスとTAVIの組み合わせもあれば、ステント治療と開胸術の組み合わせもあります。
 
さらに高齢者の外科的治療では、治療の侵襲性だけでなく、お父様の体力や積極性、ご家族のサポートも大切です。それらを踏まえた上で、TAVIや外科的弁置換術、ステント治療やバイパス手術のすべてが可能な施設でセカンドオピニオンを求めることを提案します。
高齢者は脆弱ですが、疾患と体力には多様性があります。是非優れたハートチームのセカンドオピニオンを求め、具体的な検査結果を踏まえて最適な治療を選択してください。

2017年8月16日

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