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僧帽弁形成術後の逆流と再手術の危険性

50歳 女性
2007年5月 1日

2ヵ月前に、僧帽弁閉鎖不全症の弁形成手術を受けましたが、術後1カ月頃から息苦しさと血尿の症状があり、担当医の診断では、血液の逆流があり溶血状態であること、そして貧血を起こしているとのことでした。
その結果、血液の逆流を弱める薬と鉄分の薬を服用して様子をみて、改善されなければ再手術を行うとのことでした。手術は再度、弁形成手術を考えているそうです。

そこで、質問ですが、
1)なぜ逆流したのか原因がわからない限り、再手術では解決できないのではないでしょうか。再々手術になるのではと不安です。
2)医師は、弁形成術を考えているそうですが、弁置換(人工弁)も含め、開いた状態でベストの選択をするとのことでした。再手術の危険性はどのくらいでしょうか。
3)人工弁は死亡率3%で、弁形成はその数倍とQ&Aにありましたが、弁形成は危険でしょうか。私としては、人工弁置換は一生薬を飲み続ける必要があるため、弁形成を選んだのですが。人工弁はそんなに心配する必要はないでしょうか。
4)もし、再手術ということになれば、他の心臓専門の病院で見てもらい、場合によってはそこで手術することは可能でしょうか。

回答

1)逆流した原因は確かに心臓の中を見なければ確実なことは言えませんが、最近では検査技術が進んでいますのである程度のことは、医師は把握していると思います。ただ、最終的には左心房を開けてみなければ解らないと思います。しかし、溶血で貧血が起こっていることが再手術の主な原因であるならば、これはジェット様の逆流が植えた弁形成リングに当たることによって発生する場合が多いので、比較的原因は追究しやすいと思います。ただ、再度弁形成でそれを止めることができるかどうかは、なかなか確実には言えないところで、その意味からはやはり弁置換にせざるを得ない可能性も否定できないと思います。

2)再手術の危険性については、少し古いデータになりますが、2004年に日本全国で行なわれた心臓手術の成績の集計がでていますので、それから申しますと、僧帽弁の再手術の危険は、手術に関係した病院死亡は7.6%です。したがって、初回お受けになった僧帽弁の単独の修復手術の全国平均のそれが1.4%であるのと比べると、かなり高いと言わざるを得ません。

3)同じ年のデータで言いますと、弁形成術の病院死亡率は1.4%、弁置換のそれは4.7%です。ただ、再手術の場合の弁置換と弁形成の違いについては、そこまでの分けたデータは出ておりませんので、お答え致しかねます。
僧帽弁を人工弁で置換した場合は、やはり薬を一生飲み続ける必要があると思います。あなたがもう20年ほど高齢であれば生体弁による移植を考えるところですが、生体弁は若い方に植えるほどその損傷が早く起こり、確実に機能を維持できるのは20年くらいと考えたほうが良いと思いますので、貴女の場合には機械弁(人工弁)を植えることになると思います。そうなるとやはり一生薬を飲み続ける必要があります。なお、一生薬を飲み続ける必要があるかどうかは、弁の種類の他に心臓の不整脈の程度にもよりますので、主治医にご相談ください。

4)他の心臓専門の病院に診てもらわれるということももちろん結構ですし、現在ではセカンドオピニオンを求めたいからといって資料をお借りすることも昔のように困難ではありません。遠慮なくその旨を主治医にお話になって、他の病院で診てもらわれるのも良いと思います。

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