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僧帽弁膜症の手術リスクと置換弁の選択

55歳 女性
2005年10月 1日

55歳の母についての相談です。今から25年前に、弁膜症と診断されてから、バルーンや薬の服用などで現在もなんとか無理をしない程度の日常生活はすごせていますが、ちょっとした運動(草むしりなど)をしただけで1日や2日倒れこんでしまいます。
担当医からは、程度としては中程度で、日常生活に支障をきたすようであれば、手術を勧めるとのことでした。
このように徐々に体力も衰えてくる中で手術をするか否か、するなら生体弁か機械弁かで迷っています。

まず、教えていただきたいのは手術のリスクです。
初回の手術の場合、現在ではリスクも比較的小さいと聞いていますが、どれくらいのリスクがあるのでしょうか。
また、母の場合、今手術をしたとすると、10?15年後の65歳?70歳で再手術を行う可能性があります。その場合のリスクはいかほどになるのでしょうか?
今本人は2回目のリスクを恐れて、ぎりぎりまで自前の弁でがんばろうとしています。

そして、術後のことですが仮に機械弁にしたとして、ワーファリン等で血栓をコントロールすると思いますが、たとえば、1日2日飲み忘れただけでも詰まったりするものなのでしょうか。月に1回程度検査し、毎日服用していれば血栓は完全に抑えられるものなのですか。

回答

20年前から僧帽弁弁膜症と診断されておられるとのことですので、恐らくはリウマチ性の僧帽弁弁膜症であろうと思います。お尋ねの件、手術のリスクは初回の僧帽弁置換手術の場合、病院を退院されるまでに亡くなられる手術死亡率は2004年の全国集計では4.6%です。ただそのうちの再手術だけを取り上げますと、死亡率は7.4%になります。

術後機械弁にした場合は、ご指摘のとおりワーファリン等を服用しなければなりませんが、ワーファリンという薬はかなり持続性がありますので、一日、二日飲み忘れたとしても血栓ができる可能性は比較的少ないと思います。ただ、それをもとの適当なレベルにするためにはやはり病院へ行って検査して頂くなどの必要が生じるため、薬の飲み忘れがないように十分な注意をされる必要があります。ワーファリンのコントロールの仕方がよければよいほど、血栓ができる可能性は少ないのですが、それでも完全に血栓ができるのを抑えることはできません。

それと、お母様が心房細動という脈が不整になる病気を合併しておられるかどうかによっても異なります。心房細動になっておられれば、やはり血栓ができる確率は高いと思っていただかなければなりません。

お話のように軽度なお仕事だけで何日も寝込むようなことであれば、これから先の人生を過ごされるのにもったいないように思います。申し上げたような手術の危険率ではありますが、手術をお受けになるのが良いのではないでしょうか。

ただ、55歳という若さですので機械弁の使用を薦められておられると思いますが、55歳になりますと生体弁を使ってもそれほど早期にその破損が進行するわけではありませんし、最近生体弁の遠隔成績も向上していますので、将来のワーファリン等の飲み忘れが心配であれば、生体弁を使われることを考えても良いと思います。あくまでもこれはこの先どのような生活をされるかによりますので、担当医とよく相談されたうえで患者さん御自身お決めになることが必要であると思います。

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