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疾患別解説

人工血管の感染リスクと弁置換手術

日本心臓財団に寄せられたご相談

num.7584

40歳、 男性: 二尖弁、上行大動脈拡大、大動脈弁閉鎖不全症


先天性の二尖弁による大動脈基部を含む上行大動脈の拡大、大動脈弁閉鎖不全症であり、近く人工血管+人工弁置換(または弁形成)手術を受ける予定です。
人工血管について調べていたところ、人工血管の感染症について不安になりまして、お聞きしたく思います。
1)人工血管が入っている以上、常に感染のリスクはあるのでしょうか。それとも置換手術後の一定期間だけ感染のリスクがあるのでしょうか。手術後一定期間を過ぎると、感染のリスクは下がるのでしょうか。
2)感染の原因は何でしょうか。風邪でも感染することはあるのでしょうか。
3)人工血管感染を起こす確率はどのくらいでしょうか。
4)抗生剤で治癒しない場合は、人工血管を取り除き、新たに入れる場合の手術リスクはどの程度でしょうか。
5)術後、考えられる再手術として、人工弁の置換、人工血管に問題が出た場合の手術等、複数回ある可能性があります。何度も開胸できるものなのでしょうか。安全に行えるのでしょうか。
日本心臓財団からの回答
大動脈二尖弁と大動脈基部拡大に対しては、人工血管付き人工弁で置換するいわゆるベントール手術と、閉鎖不全はあるが弁の性状が良好であれば人工血管内に弁を温存して行う、いわゆる再移植法(リインプランテーション法、デービッド手術)が標準的手術として行われています。いずれの場合も人工血管(大動脈の拡張してないところか弁の付着部の太さによって人工血管の太さを選択します)を用いますが、二尖弁の形成の場合は難度が高くなり、貴方の場合には人工弁を用いたベントール手術の可能性が高いと思われますが、形成がうまく行えれば、ベストです。しかし、再度弁閉鎖不全が生じることもあります。
以下、質問の回答です。
 
1)感染リスクはあります。手術中の菌の感染などで早期に発生するもの、術後1年以上経てから発生するものなどありますが、いずれも頻度は高くありません。大動脈弁の人工弁置換手術単独と大差ありませんが、一旦発生すると恐ろしい病気です。人工物が体内にある限り、いつでも生じるであろうと云わざるを得ませんが、一定期間を過ぎるとリスクは低下します。
 
2)感染の原因は、手術早期ならば手術中や直後の細菌の感染ですが、起こりやすくする因子にはMRSA保菌者、手術時間が長すぎることや、輸血の量が多くなること、糖尿病を有していることなどがあります。術後時間が経てからの場合には、糖尿病のコントロールが悪いことの他、大切なのは虫歯、蓄膿症の予防と早めの治療です。菌が血の中を通って、人工物に付着して生じます。単なる風邪からの感染は少ないですが、風邪の原因には色々あり、細菌性の場合は早期の治療をしてください。
 
3)人工血管感染を起こす確率は少ないです(数%以下)ですが、上記注意や合併症がなければ、今から心配する必要はありません。
 
4)感染を生じた場合のベントールの再手術では危険は20~30%に及びます。
 
5)手術を3~4度受けられた不運な方もおられます。リスクは毎回高くなりますが、再手術は命にかかわる状態で初めて行いますので、リスクは増加しても行わざるを得ないという状況です。再(再)手術の理由によって異なりますが、3度以上の手術でも7割以上の人は大丈夫です。あまり重症にならぬ前に手術をすることがよい結果を生みます。

2012年6月 4日

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